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中医学会 特別講演 その1

『東洋医学で人を診る』弁証論治で読み解く、女性の人生物語-1

2013年 日本中医学会特別講演にて

『東洋医学で人を診る』弁証論治で読み解く、女性の人生物語。
~~妊娠を望む治療から、安産を願う妊娠中の治療、
そして産後のフォローまで~~

 

いまから4年前、鍼灸不妊治療の臨床を通じて、「不妊!大作戦」を出版いたしました。
たった4年ですが社会は大きく変化し、最近では『卵子老化』ということがテレビなどで取り上げられ
大きく報道され始めました。以前は、年齢要因のことを社会的に発言することすら難しい雰囲気がありましたので、
たった4年ですが隔世の感があります。それだけ、いまの『不妊治療』について社会全体で前向きに
考え始めた結果だと思います。

 

当院では、2012年X月一ヶ月間に12症例の高度生殖医療における胚移植の周期に鍼灸治療をおこないました。
この一ヶ月間に胚移植と鍼灸治療を併行しておこなった12症例の方々の背景をみていきます。
年齢は35歳から43歳までで平均39.0歳。
移植回数は1回から10回以上と平均4.75回です。
このように、年齢が高く不妊治療歴が長く何度も、高度生殖医療をおこない胚移植をなさっている方々に対し、
西洋医学的な不妊治療と並行して鍼灸治療を行いました。その結果、この12例のうち、着床は8例(66%)です。1回目心拍確認は5例、最終的に4例が二回目の心拍確認にいたり、無事にご出産なさいました。この4例の平均年齢は39歳、平均移植回数は6.5回です。
卵子老化が35歳から、体外受精での成績が大きく落ち込むと言われる37歳をも越す年齢でのご出産です。

 

東洋医学の門をたたくのは、この12例のように何度も高度生殖医療を行っていたり、高齢、長い不妊治療歴、婦人科疾患を併せ持つケースや、不育症など難治性不妊といってよいのではないかと思われる方々です。

 

この難治性不妊の方々が、無事妊娠し、出産なさるためには、東洋医学の生命観を前提とした弁証論治を通じて、
その患者さんの物語を知ることがとても大切です。物語を読み込むことから、その人の過去~現在を知り、未来に向かって
何が必要かと言うことが明確になってきます。難治性不妊の場合、『不妊』ということだけを取り出して考えるだけでは
突破口が見えないケースが多いと思います。しっかりと正面から取り組む、そのために東洋医学が必要なのです。

 

弁証論治は『東洋医学で人を診る』便利ツールです。四診という、東洋医学で人を診る
ための技術やノウハウを使い、データーをあつめ、時系列にそって東洋医学の生命観にそって過去~いま、未来を読み込んでいくことで、人生の物語を提示し、弁証論治とし身体作りにいかしています。当院でのこの取り組みについて、高度生殖医療を行いながらの不妊治療にいかに貢献できるのか、具体的な位置から検討していきたいと思います。