0010:両卵管閉塞の診断からの自然妊娠②(西洋医学的、東洋医学的不妊治療解説)

両卵管閉塞の診断を受けていた方ですが、無事の自然妊娠に至った症例です。

詳しい症例はこちらです。

この中の、東洋医学的な分析について少しづつ解説していきたいと思います。
興味のある方はご覧下さいませ。

不妊治療解説0010

☆1

1)5年間妊娠していない現状の捉え方:

不妊治療の基本として、妊娠を希望してからの期間があります。

この方の場合は、26才で結婚を希望されてから5年間妊娠しないという十分な期間があります。

通常は、20代でしたら2年程度の期間で充分かとはおもいます。30代でしたら1年程度が

目安でしょう。逆に言えば、1年ぐらいは妊娠しなくても当たり前っていえば当たり前なのが

妊娠です。1,2度のタイミングで妊娠しないからと言って大騒ぎする必要もないわけです。

地元の婦人科で検査され卵管閉塞による不妊という診断。セカンドオピニオンでも同様の

結果ですので、両卵管閉塞による体外受精という診断は正しいと思われます。

2)なぜ両卵管閉塞、体外受精しかないという診断を乗り越えて自然妊娠をしたのか?

〜身体の緊張がもたらすこと

しかしながら、この方は結果的に自然妊娠をされています。

これは、卵管造影や検査によって緊張すると卵管が閉塞している状態になって

しまうケースがあるということではないかと私は経験から思っています。

実は、画像診断による卵管閉塞診断後の自然妊娠は長い不妊治療経験を踏まえると

案外あるといえます。つまり、緊張しやすい状況を持った人が、東洋医学的な

身体作りをし、不要な緊張感がなくなることで妊娠するということが

よくあるのです。

これは卵管閉塞という画像診断まで行かないケースでも多々あります。

3)東洋医学的解説

この身体の緊張が強く、卵管が閉塞しているように思える状態がこの方の弁証では、

弁証:気虚 腎虚肝鬱

論治:益気補腎 疏肝理気

腎気を補い全身の気虚を救う。肝気をめぐらせ鬱滞を張らす。

ということが現状をよく現れています。

全身の生命力が不足し(気虚)

その生命力不足が腎気が中心であったので、

気の昇降出入(全身の巡りをスムーズにさせる)の主導となる肝気が鬱滞し

伸びやかな身体でなくなっているということです。

このために、腎気という身体の底力、そして生殖の力を補い、疏肝理気というように、身体全体の気の巡りをよくしていく努力が必要となっていくわけです。

初診時に体表観察にしたがい、寒邪の入り込みを取り除く治療が入っています。風邪の内陥が生命に竿しているとまで考える弁証にはなっていませんが、もしかしたら、この寒邪の入り込みは、この方の腎気に負担をかけ肝鬱を強くしていた一因となっていた可能性も伺えます。

☆2

針灸治療解説

両卵管閉塞、体外受精しかないという状態からの自然妊娠。

弁証論治は

弁証:気虚 腎虚肝鬱

論治:益気補腎 疏肝理気

腎気を補い全身の気虚を救う。肝気をめぐらせ鬱滞を張らす。

ということです。

針灸治療について解説していきましょう。

..鍼灸治療

…初診

1)右合谷、右列缺(ミニ灸)右申脈(ミニ灸)、右陽陵泉、右臨泣(ミニ灸)、

左三陰交、大巨(10)

2)肝兪(ミニ灸)腎兪灸頭鍼、次髎ミニ灸、復溜(ミニ灸)

この方に第一に必要だったのが腎虚です。腎気が補われると、肝気がゆるみ緊張がほぐれることはよくあること。

1)で合谷、列厥、右の申脉とつかっていっています。これはこの方の緊張がもしかして冷えの入り込みとの関係もあるのではといったところも伺わせたことからの取穴です。ただし、右の陽陵泉、臨泣と詰まった感じがでていて、初診時は右半身での取穴になっています。取穴は基本的にざくっとした弁証論治が終わった後、改めて触って決めていきます(初診の切診をするだけでも身体がかわりますから、最終的になにを取穴するかは、いままさに取穴するときにきめます)

つまり、これはかなり気の偏在が強いということを感じさせます。

申脈(BL62):足の太陽膀胱経に所属する経穴。confluence points of eight vessels陽蹻脈の主穴でもあります。

合谷(LI4):手の陽明大腸経に属する経穴

Source pointでもあり、四総穴の一つでもあります。ここは反応の多いところですし、また全身を大きく理気するポイントともなります。今回は肺気を動かし風邪の可能性をとること、身体がリラックスし、気の昇降出入をもつことを狙っています。

2)背部兪穴は基本的にみたままの弱りをそのまま取穴していきます。結果的に腎兪(BL23)の冷えが大きかったので灸頭針をいれています。

自宅養生施灸

この方は、遠方であったこともあり、治療が2週に1度しかいれられませんでした。しかしながら、そのことを御自覚なさり、とても丁寧に自宅施灸を棒灸を中心にし、おこなっていらっしゃりました。

自宅施灸はミニ灸と棒灸でおこなっていただき、

棒灸では、大巨(ST27)、関元(CV4)、臍など、お腹を中心に。ミニ灸は列厥、復溜、三陰交、申脉、内関などなど、治療時につかった配穴をそのままご自宅での治療用にしていただきました。

妊娠してからも、妊娠10週まではホルモン値が悪く、いつ流産してもおかしくないという状況でしたが、鍼灸治療の頻度をあげ、ご本人も丁寧な棒灸をおこない、無事に初期を乗り切りました。途中もお腹の張りやすさなど問題が多くでがちでしたが、無事に正規産で3000㌘弱のお子さんを出産。身体の緊張を持ちやすい方は、もともと気が上向きのベクトルをとり安いタイプです。妊娠は胎をまもるために、上向きのベクトルを強くしますので体調不良(つわり、胃の不快感、つきあげ)が強くなりますが、上向きのベクトルを

その後、第二子も無事に自然妊娠し出産。

下焦を充実させることで、身体がリラックスし、気血がスムーズに運行できたことが、妊娠ー出産ー授乳ー次の妊娠にという連携をスムーズにさせてくれたと思います。

また、本症例では、ご本人の棒灸に対する丁寧な取り組みが、私自身に棒灸の力強さを教えてくれる結果となりました。妊娠初期にP(黄体ホルモン)などのホルモン値が悪く、流産の可能性が指摘されるケースでも、多くの症例で無事に妊娠初期を乗り切ることができています。

臍下丹田に気を集めることの重要性、そして気を集めることをしてく道具としての棒灸の力強さを感じます。