症例:何も問題がないと言われる状態での10回以上の採卵移植、44歳出産。0215

妊娠したいというご希望があり、色々取り組んでもなかなか答えにたどり着けないことがあります。

そこで、AMHや不妊治療における一般的な血液検査や、一歩踏み込んだ着床障害や、遺伝子検査、不育症などなどをおこなっても、『まあ確率の問題だね』などというコメントをいただくこともあります。

この不妊治療と確率の問題は、着床前診断(PGT)などを取り入れようというお考えも理解出来るところですが、これも道を切り開く答えにならない場合もありますね。

☆着床前診断の考え方

着床前診断については、このはらメディカルの考え方が非常に参考になると思います。

着床前診断 はらメディカル

https://www.haramedical.or.jp/content/implantation/pgt

そもそも、妊娠に挑戦しなければ前に進みません。高度生殖医療をおこなっていても移植をしなければ妊娠しない現実があります。PGTは、胚盤胞にならなければできませんが、胚盤胞にそもそもならない人のの場合はそこで泊まってしまいます。しかしながら、胚盤胞にならないという方が、その前の初期胚や三日目胚移植での妊娠出産事例を多く経験しています。
つまり、胚盤胞にならないからといって、すべてが妊娠出産出来ない卵ではなく、
初期胚で移植した方が育ちやすく、着床しやすいタイプの方がいるということかなと思います。
また、PGTは胚へのダメージと再凍結という負荷がありますから、このリスクも
PGTできる胚の数がすくなければ大きいと言うことかなと私は理解しています。

以下ははらメディカルの見解です。

着床前診断 PGTをしない方がいい人

  • 胚移植不成功回数は2回以上あるが、1回の採卵で得られる胚盤胞数が3個以下の場合は、胚盤胞が貴重な場合、PGTのメリット<デメリットと考えます。PGTをせずに、胚移植をして結果を得る方が、総合的な出産率は向上すると思われます。
  • 胚盤胞の外側の細胞(栄養外胚葉)のグレードが低い場合
  • 年齢が高い場合は、PGTをすることで、本来であれば妊娠・出産できる胚盤胞を排除してしまう可能性があることを慎重に検討してください。また、年齢的に生検のダメージもうけやすいです。妊娠・出産を目標にする時、PGTではなく、2個胚移植で、移植のペースを上げることで、次の採卵時期を早めることが、総合的な出産率の向上に繋がると考えます。

いろいろ考えちゃいますねえ。

さて、今回は、そんな、なかなか前に進まない道を、一歩、一歩淡々と継続され、無事に赤ちゃんと巡り会った症例をご紹介しながら考えていきたいと思います。

☆ご相談:何も問題がないといわれ繰り返す体外受精。どうしたらいいでしょうか?

体外受精を繰り返しています。

AMHも問題なく、夫婦共に大きな問題もないといわれています。

38歳から不妊治療に取り組み、人工授精を5回ほどし、体外受精にステップアップしました。

初めての体外受精では、2個取れ、拡張胚盤胞となり凍結でき、移植。
残念ながら妊娠出来ませんでした。

いま次の採卵周期にはいっていますが、あまり卵胞がでてきません。
何も問題がないといわれているので、体外受精を繰り返していますが、
今後、どうしていったらいいでしょうか?

☆ご相談にお答えして、お身体の状態を整え、淡々と進みましょう

なかなか妊娠が成立しないということですね。
一緒に考えていきましょう。

お身体の状態ですが、東洋医学的な観点からの問診と体表観察とをくみあわせて考えていきます。

1)身体への冷えの入り込み

 →全身の気血の巡りが悪くなる。全身への負担

2)冷えが入り込んでいるのに、身体の中に熱がある(内熱)

→口内炎、ストレス状態の継続

3)冷えの入り込みや、内熱を解消する土台の力となるべき胃腸の力(脾胃の力)が少し弱いために、身体の内側に湿気(内湿)がたまりやすく、これが気血の巡りの悪さに拍車をかける。

4)1,2,3の状態が、生殖の力と直結する土台の力(腎気)への負担となり不妊となる。

つまり、上記、1,2、3の状態によって少しずつ積み重なった負担が
身体を支える土台の力(腎気)への負担となり、腎気と直結している生殖の力が今一歩発揮しきれないと言うことになっているのかと思います。

数は少ないながらも採卵がスムーズに出来、胚盤胞まで到達し移植出来ているということは、生殖の力はそれなりにあると言うことだと思います。

明確に方針をもってお身体の手入れをすることで、あと一歩の不妊治療を前に進めましょう。

☆不妊治療に対する5つのアドバイス

1)すでに治療周期に入っていますので、しっかりと子宮、卵巣の血流をよくしていきましょう。セルフケアのお灸もおこなってくださいね。

2)採卵後はお仕事が忙しい時期であれば、自然妊娠を考えるタイミングにしてもよいかと思います。卵巣に針を刺したということでドリリング効果を狙うことも可能だとは思います。ただ、時間を無駄にしていると考えてしまわず、病院はいけなくても、身体作りに前向きに取り組むことで思わぬ結果を呼び込むことも多々あります。

3)年齢要因は確かに厳しいですので、しっかりとしていきましょう。

4)お身体の状態の割りに、卵巣の数値であるAMHやFSHはよい数字です。これはもともとは生殖の力はあるタイプだと言うことがわかります。焦らず、気負わず前に進んでいきましょう。

5)病院選びは、ご自身の状況にあっていると思います。迷わず頼りにしてよいかと思います。

☆治療経過〜

初診:
鍼、お灸:気海(CV6)、関元(CV4)、陰陵泉(SP9)、三陰交(SP6)、右公孫(SP4)右大都(SP2)。
パイオネックス;右の内関(PC6) 陰陵泉(SP9)
温灸:肺兪(BL13)、右心兪
鍼して温灸、お灸 左腎兪(BL23)、右三焦兪(BL22)、大腸兪(BL25)、次髎(BL32)

セルフケア 気海(CV6)、関元(CV4)、陰陵泉(SP9)、三陰交(SP6) 公孫(SP4)

→すでに採卵周期に入っているので、しっかりと子宮卵巣の血流をあげていく。

→採卵、7個取れる(前回よりも多い個数の卵胞が順調に育った)しかしながら空砲5個。1個胚盤胞凍結→移植→妊娠せず。

その後、仕事の都合などにあわせて採卵をし、凍結胚にして、二段階移植、胚盤胞移植、ホルモン補充周期などの移植などに挑戦するもまったく着床せず。

着床障害、不育症検査
→まったく問題はないと言われる。
『まあ移植回数を重ねればいつかは妊娠出来るよ』>ドクターコメント

42歳43歳、採卵、凍結胚盤砲にて仕事などの都合が良いときに移植と計画する。

43歳HR周期にて二段階移植→妊娠→44歳にて出産

☆無事のご出産おめでとうございます。

何か上手く行かない原因があるというわけでもない状態から、ご自身のお仕事を生活の中心とし、淡々と採卵を重ね、努力を重ねるお姿、頭が下がる思いでした。またご主人のお子さんが欲しいというお気持ちが伝わってくる数々のエピソード。きっとご主人の思いがあったから、ここまでお二人でがんばってっくることができたんですね。

産後2ヶ月からの職場復帰、がんばっていらっしゃりますね。
漢方薬や少しのお身体の手入れは、これからの人生を支えてくれると思います。

頑張りたいからこそ、少しお時間を取って頂いてケア出来ると、おこさんのため、そしてこれからも元気で働いていくご自身のために非常になると思います。

頑張ってくださいね。

妊娠18週、38週のアンケート 11−5

アンケートへのご記入ありがとうございました。

☆鍼灸治療を初めて見ようと思ったのは、なぜですか?という項目のご記入について

→確かに鍼灸というのは通って頂くことが必要ですので、先に漢方やサプリを試してみたというのはよくわかります。その上での鍼灸への挑戦が、お身体の調子を整え、妊娠につなげることができとてもよかったなあと思います。

☆鍼灸による体調の変化についてのご記入について

基礎体温が整ったと言うことは、お身体全体に余裕ができ、妊娠に向かう一歩前に進んだと言うことと思います。

☆当院でのアドバイスについて

不妊治療は、本当に人によって状況が違います。また選んでいる病院や治療法によっても、考え方が違うことがあります。よりベターな選択はどういったことであるのか、ドクターのコメントはどういった背景があるのかなど、一緒に考えることができたことが、前向きな選択、安心につながったのであれば幸いです。

 

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