私の受けたい治療⑥ 大学病院での3年間にわたる鍼灸治療
私は、大学病院で、鍼灸をやっているということそのものを知りませんでした。
鍼灸っていうのは保険診療外ですから、一般の病院ではなかなか取り入れられません。
それだけに、大学病院の東洋医学科は非常に新鮮でした。
東洋医学科はドクターが漢方を処方し、鍼灸師が鍼灸をおこなうということになっていました。
病院でやっている鍼灸。治療院とは違う世界があるのかなとワクワクしていました。
また漢方の処方も多く学ぶことも多いだろうなとも思いました。
沢山の事を学べそうな気がしてワクワクしていました。
☆指導医S先生 『免許持っているんだから自由にしなさい、責任は自分がとる』
研修生は指導医ごとに2つの斑にわかれました。
私の指導医はS先生。
S先生が教えてくださるんだなーと思っていると
『あなたはすでに免許を持っているんだから、自由にやりなさい。何か起こったときの責任は自分がとるから』と仰って下さいました。
え?教えてくれるんじゃないんですね、とビックリしたものの、
自由に好きなように鍼灸をしていいということは私にとって大きな出来事でした。
☆患者さんを実際に受け持つ
私がついたS先生は放任主義というか、まかせてくださる先生であったこと。
これはもし、免許取り立てで実際の臨床を見たことがない人だったら
大きな戸惑いだったと思います。
幸いにして私は、卒業してからの1年、多くの患者さんを治療なさっている
先生方のアシスタントをしていました。
ですので、ポンッと任されても、それなりに一人の患者さんを診て
治療をする見聞はありました。あとは実践のみ、経験を積んでみよう
という段階でした。
☆大学病院東洋医学科での、鍼灸治療を希望する患者層
いままでの一般の鍼灸院では、看板やチラシをみて来たという方や
紹介で来たという方が多かったです。
体調管理というメンテナンスだったり、整形外科的な痛みなどの方が多かった感じでした。
大学病院東洋医学科での患者さんは、
1)東洋医学科をめざしてくる方
2)入院中で他科からの紹介の方
3)他科へ通院中で紹介の方
こんな感じだったと思います。
入院中の場合は、脳梗塞などの後遺症で片麻痺がある方が
おおくいらっしゃりました。
これは醒脳開竅法という鍼灸メソッドがあり、
かなり取り入れている状況だったからだと感じました。
漢方の投薬を受けにいらっしゃる方も多く、
また当時海洋深層水の研究もなさっていたような記憶があります。
でも、ひよっこは日々目まぐるしくついていくだけだったような
感じでした。
また、なぜか私の患者さんは、精神科との並用の方も多かったです。
私のイメージに、精神的な課題と鍼灸というのはつながらなかったのですが、
多くの方々をみていくうちに、視点がかわっていきました。
☆数多くのカルテをみて学んだこと。
大学病院で大きな出来事は、カルテをみることができたことです。
自分が弟子入りしていた治療院の先輩方が担当していた患者さんも多く、どんな治療をこの場でしていたか手に取るようにわかりました。
カルテには、経穴だけが書いてありますが、それを実際にどのように使っているかということは、案外分からない盲点です。
しかしながら、私は弟子入り経験があり、このカルテをみれば、何をしていたのか
具体的にイメージができ、よく理解できました。結果も書いてありますので、非常によい資料でした。
その上で、自分が問診し、見立て、実際に臨床していくことは、面白かったです。
諸先輩方の治療を踏まえて自分の治療を組み立てる。
何が起こっても、責任はS先生が取ってくれるという信頼は
大胆な治療を私に許しました。
☆このお話は、25年以上前の大学病院での出来事です。現在、同病院には東洋医学科はなくなってしまっています。時代はかわりますねえ。