☆私の受けたい治療⑱ 妊活実践編
いままで、私の受けたい治療ということで、色々な視点で書いてきました。
そして、当院での大きなテーマ、妊活においても、ぜひ皆さんにお伝えしたいという思いから、⑰では、もし、私が妊活をする当事者であれば、何を考えるべきか、何をしたらいいのか、どんな治療を選択すべきなのか、不要なのか、『利益相反のない不妊カウンセリング』が必須であると言うことをお話ししました。
この⑱では妊活を考えるポイントを具体的にお話ししていきます。
☆妊活の道は、十人十色。
妊活では、各々の状況、事情が違います。
ネットでの正解が、自分の正解とは限らない。
ある病院での一番良い方法が、自分たちにとって一番良い方法とも限らない。
ここが本当に妊活の道を選ぶときに難しいポイントです。
- ・まっすぐに、西洋医学に舵を切るべき方
- ・東洋医学や、漢方、鍼灸などの手入れが必要な方
- ・食事の改善、生活改善が必要な方
- ・女性だけでなく、男性側の体調管理が必要な方
- ・時間とタイミングが必要な方
いろいろな要素が、現在の『不妊』につながっています。
そして自分の一番大事な時間を有効に使ってください、本当にここ、大事です。
また、妊活には正直な感想として運であったり、偶発的な状況が絡むことも多いと私は思います。淘汰という言葉がよく使われ、納得できるような出来ないようなお気持ちになっている方も多いかと思います。でも、やっぱりそれが現実の妊活です。
努力することだけが結果につながるとはいえない、でもやっぱりするべき努力が必要な事があるということです。
実践編で大事なことは
- ①状況を把握する
- ②課題を整理する
- ③時間を踏まえた妊活計画をたてる
ということです
それでは、具体的にお話ししますね。
☆☆31歳女性 3年妊活していますが、妊娠しません。
①状況を把握する:31歳女性
- ・28歳で結婚、そのときから妊娠を意識してタイミングをとっている
- ・自分は病院にいき、何も問題はないと言われている
- ・夫は病院にいかないという。
- ・夫家族から子どもはまだかと大きな期待が寄せられプレッシャー
②課題を整理する
年齢的には自然妊娠が期待できる
女性側の大きな問題がない、男性側不明
ストレスがきつい(夫の非協力態度、夫家族の過大な期待)
妊活計画
・現時点で女性側に西洋医学的な大きな問題はない
・セックスは成立している
・大きなプレッシャーで気の滞りがきつい
→家族の問題を整理する
→夫の協力をとりつけ、一人だけで抱えない。
→鍼灸で対応できる
・基礎体温表をつけ、タイミングをしっかりとみる。
・鍼灸はストレスによる躓きに効果的
→病院的な要素がなければ、タイミングが大事。検査薬と体温表で通院不要かも
③時間を踏まえた妊活計画
- ・3ヶ月、針灸併用の自然妊娠を挑戦してダメだったら、男性側の検査必須(人工授精にして精液検査をかねるというのもありかも)
- ・6ヶ月、針灸併用の自然妊娠を挑戦ダメだったら、高度生殖医療にも舵を切る
- 若い年齢ではありますが、妊娠を希望してすでに3年がたっていますので、病院受診、生殖医療も視野にいれるべきです。32歳までには開始しましょう。
現在、あまりにもストレスがきつく、そのための体重減少もあり、ストレスによる影響も強く考えられます。よって、逃げてばかりの夫に対して、ちょっとした工夫で前に向かせるようにもっていき、半年以内に、男女ともの基本的な検査を終わらせることは必須にしたいと思います。その後、女性が32歳を超えないを条件に、高度生殖医療も挑戦するという時間計画を提案しました。
この時間を踏まえた計画は、女性のストレス軽減をかなりはかれます。
余計なことを心配せず、いまやることを全力でやる!です。
また、ストレスが剛いタイプであるので、鍼灸治療もお勧めし、養生の提案もいたしました。全体的な大きな流れを掴む安心感、夫婦で協力する安心感が必要です。
治療経過
- 3ヶ月後、自然妊娠成立。無事に出産。
- 2年後、すんなりと第二子も妊娠、出産。
この方にとって、結局はストレス解消が必要だったということです。
何が必要かを明示し、計画性をもつことがストレス軽減になりましたし、
鍼灸やカウンセリング、セルフケアもこの方に役立ちました。
また、私からの言葉として、ご主人にきつめコメントを送ったのもよかったかなと思います。
☆☆42歳女性 ふたりめ不妊
①状況を把握する:
42歳 女性
ひとりめは妊活後3ヶ月で自然妊娠、39歳出産。
1年後、40歳から妊活、1年間自然にまかせたが妊娠せず。
1年間、不妊
41歳から体外受精をはじめ、3回の採卵、5回の移植。
いずれも良好胚を移植、着床するも妊娠せず。
まだ、凍結胚があるが、移植しても妊娠出来る気がしないということで中断
②課題を整理する
- ・病院で年齢要因から体外を提案
- ・39歳の方でありながら、3ヶ月で自然妊娠、出産しているので、基本的に妊娠しやすいカップルではある。
- ・1年間の不妊があれば、41歳という年齢を考えれば体外にジャンプupの選択はOK
- ・妊娠しない理由を、受精卵の課題にしてPGTもOKかも。
- ・妊娠しない理由を受精卵の理由にせず、ご自身の受け止める力の課題とするのもOKかも。
- ・年齢的に、採卵はいそいでおく。場合によっては貯卵もOK
☆☆妊娠を身体の観点から考える
- ・39歳での高齢出産、育児は身体への負担、素体への負担が案外多かったのではないか。
- ・1年間の不妊の理由が、年齢要因だけとは限らない
- ・年齢要因も非常に大切、西洋医学的な治療をするなら早く。
- ・ふたりめ不妊、卵を受け止める力の問題かも。
- ・凍結胚をつくっとき、時間稼ぎをする
- ・一人目を自然妊娠しているという実績があるということを踏まえて、医療介入の解決してくれる課題、解決してくれない課題を分けて考える。
☆☆凍結胚は待ってくれるという観点から
現時点で、凍結胚が出来ているということは、「時間」という一番大事な要素を待ってもらえる状態にしてあるということです。
ご自身で自覚があるように、いま、同じ状態で胚移植しても結果が同じになるということは考えられます。
最低3ヶ月、場合によっては半年。腹を括ってご自身の身体の状態を、
第一子が妊娠したときをイメージでとりくみましょう。そのうえで、移植に臨んでください。きっと違う結果が出るのではないかと思われます。
③時間を踏まえた妊活計画
- ・ふたりめ不妊であり、自然妊娠の経験もあるのに、着床が妊娠に継続しないという点を考慮し、3ヶ月ほど、病院通いを一切やめて、鍼灸、生活改善、食事改善をする。
- ・3ヶ月たったところで、西洋医学の胚移植を始める
- ・PGTはしない
- ・ひとりめを妊娠した時の身体のイメージをもち生活する
治療結果:
3ヶ月の病院通いを休んで
→自分自身で、身体がかわってきたということが自覚でき、もう少し自然妊娠を意識してみるという計画変更
→6ヶ月経過。自然妊娠ー無事の出産
結果的に、高度生殖医療の介入無しの、自然妊娠出産となりました。
結局、ご本人にとって問題であったのは、
ただ『41歳の不妊』という視点だけではなく、「39歳で妊娠出産し育児中の41歳の不妊」という視点であったと思います。
結果的に、受精卵の問題が大きかったのではなく、妊娠を受け止める力の観点だったのではないかなということです。
年齢要因も大切です。しかしながら、それと同じぐらいに、妊娠には体力の余裕資金が必須です。
とくに、ふたりめ不妊の方の場合は、この余裕資金の不足が不妊に陥っているケースが多いです。そして、ふたりめ不妊は結果的にひとりめと同じ方法で妊娠する方がとっても多いです。
☆メタ認知を踏まえた、妊活計画
不妊が、単に卵管の通りが緊張して閉塞していることだけならば、緊張を解くだけで不妊は解決したり、体外受精で受精卵をつくり胚盤胞の移植ということで解決するはずです。
しかしながら、色々な要因が相互にからみ、問題が不明瞭になっている場合は、
さまざまな方法を1つ1つ足し算しているだけでは、かえって迷路におちいってしまい、
何をしたらいいのかわからなくなってしまいます。
このときに、一歩引き、何が中心の課題なのかを考え、方針をたてる。
このメタ認知的な治療方針の必要をいつも強く感じます。
そして妊娠の妊娠そのものの課題と、妊娠を支える余力の課題。この二つを一緒に考えていく。
これが、基本だと思います。
私が、妊活を得意としていたのも、この2つのフェーズを使い分けるコツを
多くの臨床経験から知ったということが大きな要因となっていたと思います。
- 『鍼灸とか、漢方とか、言っている場合じゃないよ、とにかく体外を挑戦してみて』
- 『うーん、いまのままの挑戦だと、無駄になる可能性が高い。半年とにかく腹を括って子宮の力を底上げしてから、医療介入をしよう』
- 『食事の改善必須ですね。まず生活の改善点を洗い出そう』
- 『いまの病院での治療方針と、貴方に必要なことがあっていないように私には思えるよ。セカンドオピニオンをとりにいこう』
などなど、多くのアドバイスをさせていただき、多くの方が一歩前への扉を開くことができました。
妊活はこれをすれば絶対にOKなどということはありません。存在しません。
でも、やるべきこと、するべきこと、した方がいいことは明確に存在します。
赤ちゃんが欲しいと願う方の思いがかないますように。
ヨネ婆ちゃんは切に願うのです、祈るのです。