鍼は効く、でもなんで??

鍼がなんで効くのかわからない

「パイオ(小さなシールに極細の鍼がついたもの)」を貼ると、すぐに痛みが楽になって驚かれることがあります。患者さんに喜ばれる瞬間は、私にとってもとても嬉しい時間です。
でも、「なんで効くの?」と考え始めると、これが実に深い…。

筋肉と関節の関係から考える

筋肉は腱になって関節をまたぎ、収縮・伸展することで動きを作ります。
ある動作が痛いときに、その筋肉や腱、関節に直接アプローチして効くのであれば、話はシンプルで説明もしやすいでしょう。

けれど、東洋医学の世界では、それだけでは説明しきれないことが多々あります。

ツボと東洋医学的な理屈

たとえば、昔から「痔には孔最(こうさい)」といわれます。孔最は前腕にあるツボで、本当に痔や「肛門がなんとなくイヤ」という不快感に効くことが多いんです。

東洋医学的な説明では「肺と大腸は表裏関係だから」という理屈がよく出てきます。けれど、「じゃあ肺経のツボならどれでも効くの?」と考えると、答えのない迷路に入り込んでしまいます。

肺経は手から頭・お腹へと広がり、膀胱経は足先から頭まで走ります。その中の「ある一点」と「ある一点」をつないで因果関係を説明するのは、言葉で割り切れない難しさがあるのです。

臨床での不思議な体験

最近では「口を開けると痛い、あくびや食事でつらい」という方に、首の横(側頚部)にパイオを貼ってみました。すると、驚くほど楽になったのです。

 

ただ、「どうして効いたのか?」と考えると、やっぱり不思議です。
口を開ける筋肉と首の横にある胸鎖乳突筋は、直接の関係はないはず。けれど、実際に大きく口を開けると、この筋肉も緊張する。そう考えると関与しているのかもしれません。でも、ここまで即効性があるとは…やはり驚きです。

未解決のままの「なんで効くの?」

私は学生時代から東洋医学的な理屈がスッと頭に入らず、「なんで効くの?」が未解決のまま残っていました。
何十年と臨床を重ねた今でも、はっきりとした答えは見つからず、いまだに「うーん」と唸ることもあります。

それでも、確かなのは「効く」という事実。
患者さんが痛みから解放されて笑顔になられるたびに、「やっぱり鍼ってすごいな」としみじみ思います。

これからも歩みを続けて

研究を重ね、研鑽を重ね、思考を重ね。
これからも患者さんと共に考えながら歩んでいきたいと思います。