脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。
食事でこんなに変わる、脳の発達や病気 / 京都女子大学 辻 雅弘先生
YouTubeは京都女子大学 食事でこんなに変わる、脳の発達や病気
ブログでは、①、②、③、④、⑤ととりあげています。
その①https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4655
その②https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4661&preview=true
その③https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4672&preview=true
その④https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4689&preview=true
その⑤https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4692
脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。
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食事でこんなに変わる、脳の発達や病気 / 京都女子大学 辻 雅弘先生
脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。
YouTubeの18.33から最後のまとめとなっています。学生さん向けのセミナーなので、栄養学の発展について、また面白さについて述べられています。私もこの臨床研究と基礎研究の違いは面白かったです。どうしても、基礎研究の部分や介入試験などは臨床では出来ない部分。学術研究を期待します。
☆過去は変えられない、お母さんを責めないで
低体重で生まれると、iqが低く、多動などの問題をもつかの黄精が高い
妊娠中に魚を沢山食べたり、母乳育児だと子供のIQが高くなる
→でも、母乳中のどの成分がよいかは不明
基礎研究(辻先生の研究室)
低出生体重自と同じ症状のモデルラットを開発した
辻先生は、ここで、いままで人工乳やお母さんが魚を食べないという状態の方々へのフォローを話しています。
栄養学は進歩している、こういったデーターはいままでなかった。かえって昔は魚が水銀を含んでいて危険だと言われ妊婦は食べないようにという警告もあった。だから皆さんのお母さんのせいではないんですよ。
では、基礎研究の話しをしますね。と、お話をつづけられています。
☆脳の興奮性を増すグルタミン酸、抑制する増すGABAが
スライド33(20.01)では、大脳皮質感覚野の脳地図を出しています。
ラットの足。この図は人間の図もよくみかけますね。
親指を刺激すると、脳のある部分が電気的に活性化する。
人差し指を刺激すると隣が反応する。
低出生時で生まれると、感覚野がいびつになり、小さくなる。
これはフランスのジャッコラビコックの研究です。
☆神経伝達物質、グルタミン酸とGABA
そして、スライドの34(21.07)からは、具体的な栄養素でお話が続きます。
細胞と細胞の間はやりとりしている。そのやりとりに神経伝達物質がかかわる。
神経伝達物質としての、グルタミン酸とGABA
低出生体重だと興奮性を増すグルタミン酸が↑、抑制するGABAが↓
低出生体重だと神経細胞の興奮性が増して、抑制性が減るということです。
また、スライド35(21.58)では、脳内物質の分布を可視化し、抑制性神経伝達物質であるGABAは視床下部に集まり、低出生体重で多動のラットでは、GABAの集積がみられないんです、つまりあまり分布がみられないということがわかって何匹もやってみたんですというお話がされています。(再現性が大事なので)
スライド37だと、正常体重で生まれたラットの視床下部にはGABAが視床下部にあるが、低出生体重のラットではほとんどわからないと。
☆低出生体重が多動などの障害をおこす機序(22.44)
スライド38では、低出生体重が多動などの障害をおこす機序を図で説明しています。つまり
低出生体重
まず感覚が変わる→大脳感覚野での配置が変化する
次に→神経細胞の興奮性が増して、抑制性が減る
特に→GABA(抑制性神経伝達物質)が視床下部で減る
このような機序で多動がおこると考えられています。
(他の研究室では他の機序も説明しているのでこれはひとつです。)
では、最後に治療の話しをします。
☆治療は母乳、ラクトフェリン
治療には母乳がよいとお話しされ、ラクトフェリンという成分が非常に大きな役割を果たしているとされています。
·母乳と人工乳の違い
人工乳と母乳の違いを比べ、牛乳で少なく母乳で多いものをさがされています。
また、新生児を対象とする実験は非常に難しい。人の臨床試験の難しさは格別。そして母乳だと非常に研究がしやすいという利点はあるとのこと。だから母乳がよいという実験はしやすいんですねえ。このあたり、他の物をよいものとし難い点もみえてきますね。
つまり、母乳以上によいものがあったとしても、その実験は難しいわけです、倫理的に。
母乳の成分:ラクトフェリンについて
1)牛乳には少ない。母乳に多い。
2) →血管endothelial cell内皮細胞のトランスサイトーシスによって、blood-brain barrierを容易に通過
脳の中にはなかなか成分は行ききにくいですね、blood-brain barrier(血液脳関門)があります。
そのなかで、ラクトフェリンは届きやすいという点が、GABAとの違いとなってきます。
そして、ラクトフェリンは内臓脂肪を減らしやすいと言うことでいまはサプリまででているので手軽にとることができる。
ここで先生は、ラクトフェリンについて、赤ちゃんの脳障害、行動障害によいということがわかれば、すぐに人に応用出来るという可能性を秘めているとされています。ラクトフェリンの摂取を現段階で赤ちゃんの脳障害、行動障害の治療に結びつけられてはいないということなのでしょう。
☆まとめ 妊娠中や赤ちゃんの栄養はとても大切
臨床研究では、妊娠中や赤ちゃん時代の栄養は脳の健やかな発達にとって重要である。
基礎研究では、低出生体重児が多動となるのは脳内の抑制性神経伝達物質の減少がひとつの原因です。(26:27)
母乳の有効性は明確なので、母乳の成分を用いた治療法開発をおこなっている。
最後のスライド(26:40)栄養学の発展には、臨床研究と基礎研究の両方が必要である。
臨床研究では、観察研究と、介入研究との違いを考慮して結果を解釈することが重要である。以上です、これで栄養学に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
☆98才の隣のおじいちゃんは毎日タバコを吸っている、
だからタバコが健康によい???
ここまでの、辻先生のお話を聞いていると、この話しがおかしいのがわかります。
つまり、臨床としてみれば、
・98才で元気に生きている長寿のおじいちゃんがいる。
↓
・毎日ぷかぷかタバコを吸っている
↓
・だから、タバコを吸うと98才まで生きられる!
ってな論理は大間違いなわけです。
・98才で元気に生きている長寿のおじいちゃんがいる。
この事実に基づき、もっと大規模なデーターをあつめ、同じく長寿グループでのタバコを吸っている率を見るべきでしょうし、同じ対照群でタバコを吸っているグループと吸わないグループのデータ。そして介入実験までするということが求められるといういお話をされているわけです。
世の中には、このような話しは山ほどあります。
私自身も、自分自身の体験から、自分によい、患者さんによいといったことを
お話ししています。それはかなり用心深くしなければならないという戒めだと感じます。
栄養や健康に関する介入は、非常に難しい側面があります。
用心深くしながらも、
私達の生活を前向きに押し進めてくれる可能性のあることを
体験をもとにしながら知り、前に進めていきたいと思います。
ありがとうございました。
それにしても、栄養学の実験、論理って面白いですねえ。
栄養という成分分析しやすいものでも
こんなに研究、観察を積み上げていくことが必要なんですね。
庭の金柑、だんだん色付いてきました。どんな栄養が喉にいいのかな(*^_^*)
akiko yoneyama