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初期流産と不妊・不育の課題。着床前診断の考え方(改定)

不妊治療のご相談をしていて、かなり多いのが
『少しだけ妊娠反応がでたのですが、継続しません』という状態です。

以前にファイルを作りましたが、妊娠という課題にはさまざまな要因があり、お伝えしにくさを感じています。淘汰ということが、あたりまえにおこり、ある程度の確率で起こる流産は自然な事です。とくに初期流産は注目しないようにということもやはり正解である場合が多い。でも、そんななかに、『出来る努力の余地がある』人も多いんです。もう少しファイルをわかりやすく書こうと再挑戦です。

初期流産を繰り返し、それは淘汰でありあたりまえと言われている中で、染色体の異常などの問題ではなく、ご自身の妊娠を継続し進めるパワー不足というケースが多々あります。症例0179ではこの課題が顕著で、『できる限りのことをしたい』というご本人との思いで取り組んだのがこの症例になります。このケースでは、まだ着床前診断が非常に厳しかったので検査はうけず、ご自身の体調アップで乗り切っています。
判定日hcg14 ガッツでフォロー!妊娠継続。38歳出産

妊娠初期の淘汰のプロセス

確かに、妊娠には”淘汰”ということが、とても大切なプロセスとして存在します。

初期の妊娠であれば

日本産科婦人科学会より

早期に起こった流産の原因で最も多いのが赤ちゃん自体の染色体等の異常です。つまり、受精の瞬間に「流産の運命」が決まることがほとんどです。この場合、お母さんの妊娠初期の仕事や運動などが原因で流産することは、ほとんどないと言って良いでしょう。

これは事実ですね。

しっかりと基礎体温などをつけていなければ、気がつかないほど早くリセットがおこなわれ、流産とは思えないような状態も多いかと思います。これは自然なことです。

妊娠初期の初期流産についての考え方、卵の問題or血流問題

ただし、不妊治療をしていて、この状態を繰り返す人がいます。もう少し週数が進んでの流産ならば、不育症などの懸念と言うことになりますが、初期の段階では余りそういった解釈よりも、上記の日本産科婦人科学会での発表道理の解釈がされ、ドクターからは『卵の問題』『あなたには問題がありません』とされるかと思います。

そういった状態の方のご相談を非常に多く受けます。
また、体外受精がからむと、費用的な点や、保険適応の回数制限などもあり悩みが深くなります。

初期流産はやはりあたりまえの”淘汰”のプロセスであることも多いのは事実です。

しかしながら、ではご自身の課題はないのかといえば、その方のお身体の状態によっては、卵を受け止める子宮の力をしっかりと底上げしてあげることは出来ると思います。

その手入れの上で、自然の淘汰であれば淘汰されるかと思いますし、この手入れは次の卵を十分に成長させ、次の受精卵のお迎え環境を作ります。
つまり女性自身の卵受け入れ環境を整えるということです。

身体の手入れをして妊娠、
あきらめて泣いたら妊娠、
冷え対策をしたら妊娠

このあたりも気血の巡りがよくなって、子宮血流があがっての妊娠と考えられると思います。

血流問題(血液凝固系の課題)など女性側の問題と、胎児側の染色体異常という2つの課題

不育症の概念の中に、血流問題など女性側の問題と、胎児側の染色体異常という2つの課題が混在しています。

この2つの課題、それぞれにレベルがあり、血流問題(血液凝固系の亢進など)も、ちょっと血流をよくすればいいレベル、第一子の年齢ならばなんとか出産にたどり着いたが第二子では年齢があがり出産にたどり着けないレベルや、もともと投薬の対応が必須のレベルもあります。

このあたりが、この課題を非常にわかりにくくしている要因かと思います。

また、第一子の出産になんらかのトラブルがあった方に私は不育症の検査(自費)をお勧めしていますが、ほとんどの方が引っかかり不育症の対応を取ることになります。
しかし出産時にこの検査をドクターから勧められることはありません。つまり絶対要因ではないからです。

たぶん、不妊治療が必要ない方であれば第二子はスムーズに出産なさり、そういった方が大半であるという事実もあるのかと思います。しかしながら、不育症要因があり、着床障害要因が強くなり不妊となっているという方もいるのかなと思います。

血液凝固系の課題(血流問題)冷え、手足末端のきつい冷え

不育症の問題を難しくするのは、この問題が絶対条件であるケースが少ないからだと思います。手足末端の冷えがきつく、しもやけができる、家族歴があるなどの血液凝固系の課題も、妊娠希望の方が20代であれば、この要因をお持ちでもすり抜けて出産と言うことが多いかと思いますが、40代になってくるとこの課題が大きくなり、また遺伝的な課題も大きくなっていき問題が複雑になりますね。

ただし、今回の症例でもわかるように、冷え血液凝固系の亢進の問題は解決の可能性を広げる手段があります。

着床前診断が意味のないケースと、おおきな意味をもつケース

30代前半で何度やっても着床を繰り返すのみの方が、複数このPGTをされているのを拝見していました。PGTに対して、おおきな意味を持つケースと意味がないケースが混在しているのだなと感じました。妊娠しないというときに、血流などの母体側の要因と染色体の問題の混在です。

5個の卵にたいしてすべてPGTを行った方、4つ程度は問題のない卵であり血流をあげるような鍼灸治療をして無事に出産にいたられました。それまでの胚移植で一度も妊娠したことがなかったということですが、染色体の問題ではなく、血流の問題だったのでしょう。

また、5つとれたうちの着床前診断を2つのみ受け、その2つが良好胚であったかたに、なんとなく他の卵も問題ないと思ったケースで『着床前診断をしていない卵を先に移植してみては?』と提案しました。結果として着床前診断をしていない卵で無事に妊娠出産。第二子へと診断を受け良好胚と確定した卵を残すことができました。つまり染色体の問題のリスクが低いケースであり、これも上記同様に血流をあげることで妊娠にいたったケースです。

また、逆に、10個以上の卵が胚盤胞になり着床前診断をしたところ1個だけが良好胚だったという方の場合は、やはり着床前診断が適応になるのかと思います。

診断を受ける胚が2,3この場合はどちらかのケースなのかが判然としなくなりますね。

染色体の要因はその確率の高低で決まると思います、まったくないということは淘汰というプロセスがあるということからありえず、低い高いの問題かと。

そして高い確率でおこるのならばやはり着床前をしたほうがよいかと思いますし、冷え血液凝固系の問題がからんでいると、染色体の要因の高低が判断つけにくくなるかなと感じます。

不妊治療、アドバイスの受け方の難しさ

また、不妊カウンセリングや相談を受けても、さまざまな立場から、『問題ない』と言われたり、『問題がある』といわれたり。全く観点の違う『小麦、米、砂糖をやめればよい』といったアドバイスになったり、『冷えを取れば万全』といったアドバイスもなされたりしている現状もあるかと思います。

相談にお答えする方の立場によって考える観点が違ってきますので、本当に相談を受ける方としては難しいと思いますし、誰に相談したら良いのか、何をしたら良いのか混乱すると思います。

冷え、初期流産を繰り返す、年齢要因、これが血液凝固系の亢進からの課題であれば、今回の症例のような方の努力や、投薬などが効果を奏すると私は考えていますし、染色体の要因があるかたでも、この努力を前提としなければ、せっかくの問題ない卵ちゃんでも初期流産になってしまう可能性があるということです。

とにかく、可能性のある要因を潰していく必要がありますし、出来る努力をしてみることで妊娠出産への可能性が大きく広がることもあると思います。そしてどういった西洋医学的な不妊治療を選択するか、どういった病院を選ぶかも大きな課題です。

☆保険適応の採卵と着床前診断

『前回の胚移植は妊娠反応は出たものの、胎嚢確認ができなかったので、次は着床前診断をした卵を移植したい』

こういったご相談、保険適応が始まる前は多く候いました。
現時点では、保険適応の採卵には着床前診断ができません。

つまり、着床前診断をするということは、採卵の時点から保険適応の高度生殖医療は選べず、採卵から自費になるということです。

もともと、着床前診断は、不育症の診断がつき、ある程度のプロセスを踏んでおこなうということになっていました。保険適応の課題とまだ調整がついていないという感じがしますねえ。

高度生殖医療と着床前診断が保険適応になれば、いっそのこと、全ての胚を着床前診断してから移植したいという考え方もあるのかなとも思います。しかしながら、着床前診断のリスクもあるのかなとも思いますので、極端な選択はいまのところできないといった現状なのかと思います。

せめて、以前の着床前診断の許可レベルの不育症診断がついている方には保険適応の体外受精や顕微授精などの高度生殖医療が認められるべきだと思いますし、認められて欲しいです。

着床前診断と不妊治療の選択

まあ、このあたりはかなり迷うところですね。
高齢だからこその着床前診断でもあるのかなとは思います。
ただ、”社会生活が営めるレベルのご夫婦であれば、染色体異常の問題は確率の問題”と
仰るドクターもいらして、ある程度の回数の中での確率の問題と考えるのかなとも思います。
いまの、保険適応の採卵では、着床前診断との並用ができません。

保険適応の費用の安さを考えると、顕らかな『不育症』の定義にあてはまっていない
ケースでは、『移植の回数を増やす』方法を血流をあげる手段をとりながらやっていくほうが現実的なのかなと私だったら選択します。

いままでの週数が経過した流産歴などがある程度の状態であるならば、着床前診断が最優先という選択も現実的だと思います。しかしながら採卵回数が少なければ保険適応の採卵をせずに、着床前診断を選び全額自費になるのは、結局ご自身のチャンスを減らしてしまうように思いますが、流産経験者の方にとっては辛い選択になってしまいますね。

『早期に起こった流産の原因で最も多いのが赤ちゃん自体の染色体等の異常です。つまり、受精の瞬間に「流産の運命」が決まることがほとんどです。この場合、お母さんの妊娠初期の仕事や運動などが原因で流産することは、ほとんどないと言って良いでしょう。』

これは事実だと私も認識しています。しっかりと基礎体温などをつけていなければ、気がつかないほど早くリセットがおこなわれ、流産とは思えないような状態も多いかと思います。これは自然なことです。

不妊治療、不育治療と年齢の偏り

不妊治療がいまほど高齢な年代に偏っていなかった頃には、自然な妊娠、そして自然な流産、淘汰というプロセスがおこなわれており、その中でとくに流産が多い人に対して『不育症』というカテゴリーができ、対応が始まっていったのかと思います。

不育症の中に、染色体異常のものと、血流によるものが含まれています。
この染色体異常のものでは、着床前診断は非常に有効だと思われます。
ただ、血流によるものは、
1)もともとの血流の悪さ、血液凝固系の亢進のかだいと、
2)年齢要因による血流の悪さ

この2点が含まれていると思います。
昨今問題となるのが、2)です。
そして2)の問題を孕む年代は、染色体異常の頻度も高くなるわけです。

☆不妊治療をしていてのドクターの説明は

不妊治療をしていて、初期の流産の場合は、不育症などの懸念と言うことよりも、になりますが、初期の段階では余りそういった解釈よりも、上記の日本産科婦人科学会での発表道理の解釈がされ、ドクターからは『卵の問題』『あなたには問題がありません』とされるかと思います。

そういった状態の方のご相談を非常に多く受けます。
この症例では、妊娠判定日は『先生、やっぱりいつものようにhcgが低くて14でした。ドクターからは、『妊娠が継続することはほとんどないと思いますよ。あなたのせいではなくて卵の問題でしょう』と言われました。いつもこんな感じです、なにか出来ることはないのでしょうか?』というご相談の電話がかかってきました。

私は、『次の再判定の日までとりあえず出来ることは全部しようよ!』と提案し、ここからは毎日、再判定日からは週に3回の頻度で鍼灸治療をいれ、無事に元気なお子さんをご出産されました。

こういったケース、基本的な概念としては日本産科婦人科学会の言うとおりだとは思います。でも、出来ること、やれる挑戦もあると感じています。

判定日hcg14 ガッツでフォロー!妊娠継続

不妊治療、迷うことばかりだと思います。

年齢、状態、費用、考え方、ご自身の体調、選んでいる治療。
もし、お一人で、カップルで考えるだけでは行き詰まってしまったら、ご相談ください。
一緒に考えていきましょう。

母乳がよい!GABAとラクトフェリンの違い:京都女子大学のセミナーから⑥

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。

 

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

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脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。

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食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

 

 

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。

YouTubeの18.33から最後のまとめとなっています。学生さん向けのセミナーなので、栄養学の発展について、また面白さについて述べられています。私もこの臨床研究と基礎研究の違いは面白かったです。どうしても、基礎研究の部分や介入試験などは臨床では出来ない部分。学術研究を期待します。

 

☆過去は変えられない、お母さんを責めないで

 低体重で生まれると、iqが低く、多動などの問題をもつかの黄精が高い

 妊娠中に魚を沢山食べたり、母乳育児だと子供のIQが高くなる

 →でも、母乳中のどの成分がよいかは不明

基礎研究(辻先生の研究室)

 低出生体重自と同じ症状のモデルラットを開発した

辻先生は、ここで、いままで人工乳やお母さんが魚を食べないという状態の方々へのフォローを話しています。

栄養学は進歩している、こういったデーターはいままでなかった。かえって昔は魚が水銀を含んでいて危険だと言われ妊婦は食べないようにという警告もあった。だから皆さんのお母さんのせいではないんですよ。

では、基礎研究の話しをしますね。と、お話をつづけられています。

 

☆脳の興奮性を増すグルタミン酸、抑制する増すGABA

スライド33(20.01)では、大脳皮質感覚野の脳地図を出しています。

 

ラットの足。この図は人間の図もよくみかけますね。

親指を刺激すると、脳のある部分が電気的に活性化する。

人差し指を刺激すると隣が反応する。

低出生時で生まれると、感覚野がいびつになり、小さくなる。

これはフランスのジャッコラビコックの研究です。

☆神経伝達物質、グルタミン酸とGABA

そして、スライドの34(21.07)からは、具体的な栄養素でお話が続きます。

細胞と細胞の間はやりとりしている。そのやりとりに神経伝達物質がかかわる。

神経伝達物質としての、グルタミン酸とGABA
低出生体重だと興奮性を増すグルタミン酸が↑、抑制するGABAが↓

低出生体重だと神経細胞の興奮性が増して、抑制性が減るということです。

また、スライド35(21.58)では、脳内物質の分布を可視化し、抑制性神経伝達物質であるGABAは視床下部に集まり、低出生体重で多動のラットでは、GABAの集積がみられないんです、つまりあまり分布がみられないということがわかって何匹もやってみたんですというお話がされています。(再現性が大事なので)

スライド37だと、正常体重で生まれたラットの視床下部にはGABAが視床下部にあるが、低出生体重のラットではほとんどわからないと。

☆低出生体重が多動などの障害をおこす機序(22.44

スライド38では、低出生体重が多動などの障害をおこす機序を図で説明しています。つまり

低出生体重

まず感覚が変わる→大脳感覚野での配置が変化する

次に→神経細胞の興奮性が増して、抑制性が減る

特に→GABA(抑制性神経伝達物質)が視床下部で減る

このような機序で多動がおこると考えられています。

(他の研究室では他の機序も説明しているのでこれはひとつです。)

では、最後に治療の話しをします。

 

☆治療は母乳、ラクトフェリン

治療には母乳がよいとお話しされ、ラクトフェリンという成分が非常に大きな役割を果たしているとされています。

·母乳と人工乳の違い

人工乳と母乳の違いを比べ、牛乳で少なく母乳で多いものをさがされています。
また、新生児を対象とする実験は非常に難しい。人の臨床試験の難しさは格別。そして母乳だと非常に研究がしやすいという利点はあるとのこと。だから母乳がよいという実験はしやすいんですねえ。このあたり、他の物をよいものとし難い点もみえてきますね。

つまり、母乳以上によいものがあったとしても、その実験は難しいわけです、倫理的に。

母乳の成分:ラクトフェリンについて

1)牛乳には少ない。母乳に多い。
2) →血管endothelial cell内皮細胞のトランスサイトーシスによって、blood-brain barrierを容易に通過

脳の中にはなかなか成分は行ききにくいですね、blood-brain barrier(血液脳関門)があります。

そのなかで、ラクトフェリンは届きやすいという点が、GABAとの違いとなってきます。
そして、ラクトフェリンは内臓脂肪を減らしやすいと言うことでいまはサプリまででているので手軽にとることができる。

ここで先生は、ラクトフェリンについて、赤ちゃんの脳障害、行動障害によいということがわかれば、すぐに人に応用出来るという可能性を秘めているとされています。ラクトフェリンの摂取を現段階で赤ちゃんの脳障害、行動障害の治療に結びつけられてはいないということなのでしょう。

 

☆まとめ 妊娠中や赤ちゃんの栄養はとても大切

臨床研究では、妊娠中や赤ちゃん時代の栄養は脳の健やかな発達にとって重要である。

基礎研究では、低出生体重児が多動となるのは脳内の抑制性神経伝達物質の減少がひとつの原因です。(2627

母乳の有効性は明確なので、母乳の成分を用いた治療法開発をおこなっている。

最後のスライド(26:40)栄養学の発展には、臨床研究と基礎研究の両方が必要である。

臨床研究では、観察研究と、介入研究との違いを考慮して結果を解釈することが重要である。以上です、これで栄養学に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。

 

☆98才の隣のおじいちゃんは毎日タバコを吸っている、
だからタバコが健康によい???

ここまでの、辻先生のお話を聞いていると、この話しがおかしいのがわかります。
つまり、臨床としてみれば、

・98才で元気に生きている長寿のおじいちゃんがいる。

・毎日ぷかぷかタバコを吸っている

・だから、タバコを吸うと98才まで生きられる!

ってな論理は大間違いなわけです。

・98才で元気に生きている長寿のおじいちゃんがいる。

この事実に基づき、もっと大規模なデーターをあつめ、同じく長寿グループでのタバコを吸っている率を見るべきでしょうし、同じ対照群でタバコを吸っているグループと吸わないグループのデータ。そして介入実験までするということが求められるといういお話をされているわけです。

世の中には、このような話しは山ほどあります。
私自身も、自分自身の体験から、自分によい、患者さんによいといったことを
お話ししています。それはかなり用心深くしなければならないという戒めだと感じます。

栄養や健康に関する介入は、非常に難しい側面があります。
用心深くしながらも、
私達の生活を前向きに押し進めてくれる可能性のあることを
体験をもとにしながら知り、前に進めていきたいと思います。

ありがとうございました。
それにしても、栄養学の実験、論理って面白いですねえ。
栄養という成分分析しやすいものでも
こんなに研究、観察を積み上げていくことが必要なんですね。

庭の金柑、だんだん色付いてきました。どんな栄養が喉にいいのかな(*^_^*)

akiko yoneyama

 

胎児と栄養、やはり魚:京都女子大学のセミナーから⑤

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑤です。

 

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

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脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑤です。

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多動の障害や低くなったIQをどうやったら治せるのか?

臨床の話しに戻ります。
どうやったら、低くなったIQや多動の障害を治せるのか?栄養が少し足りないからというお話が始まります。

そして栄養が足りないからIQが低くなったり、多動になるのであれば、治すのも栄養で治せないかと言うことが考えられますということで、論文のデーターをだしています。

そして人を対象とした論文でその答えが見つかっていますとされ、アメリカ食品医薬品局の報告書(8:41)2014をだしています。

 

魚なんですねと思いますが、一筋縄ではいかない論理展開です(^_^;)

魚を食べる人と食べない人の比較

19枚目のスライドでは、魚をほとんど食べない人から食べる人まで10項目で並べたんですと説明(左端の欄) 

 

魚を食べる上位5%は一週間に360グラム(12.7オンス)食べていた

その生まれた子供→ほとんど食べない人を0として、妊娠中にお母さんがたべればたべるほど、IQがあがる

データー的にいうと、3.9上がる。

そして20枚目のスライドでは、魚の摂取とIQというタイトルで、
妊婦が週に2回シーフード(230グラムから340グラム)を食べると、子供のIQ33上昇すると、お話しされています。

妊婦が週に2回シーフード(230グラムから340グラム)を食べると、子供のIQ33上昇する!ううむです。

辻先生の一人突っ込み

ちょっと待った!確かシーフードには水銀などもあり妊婦は控えた方がよかったんじゃなかったですか~という一人突っ込みに、先生は最近分かったことなんですよ、お母さんを恨まないでね(^_^;)と話していました。うううむ。ただし、マグロは、注意が今でも必要ですよね。(きはだまぐろ、びんなが、めじまぐろ、ツナ缶はOKです)

詳しくは厚生労働省のお魚について知って置いて欲しいことというりんくがありますので、参考になさってくださいね。

☆生まれたときに低出生体重児だったらどうすればいいのか。

ただし、これは生まれる前の話し。産まれたときに低体重だった場合はどうすればいいのかという話しが続きます(10/13)

イギリスの研究 早産児300人に7才時点でIQテスト

22枚目のスライドでは、母乳で育った子供は人工乳で育った子供よりもIQが83高かったとされています。偏差値で56の違いです。

じゃあ、みなさん、お母さんが母乳で育ててくれたらIQ83もたかったのかと考えちゃいますよね。でも、それだけでは論文データとしてはダメなんです。(10.13

 

☆観察研究だけではダメ、母乳で育てたら=OKとはいえない。

これは観察研究なので、母乳で育てたら83高いとはわからない。

そもそも、母乳と人工乳で育てようと思ったお母さんは違う。

母乳を選んだ人は、母乳だけの影響かどうかわからない。

最近ではこれだけのデーターだけでは信頼されない!

最近ではこんな論文では信頼されないんです、補正が必要です。

☆補正10項目を入れた母乳栄養と知能、30才の収入の相関関係をみる

家族の月収、両親の学歴、妊娠中の喫煙、母親の年齢、妊娠前のBMI、分娩様式、在胎週数、出生体重、一家の資産至数、祖先(ヨーロッパ系、アフリカ系、先住民系の割合)この10項目の補正をいれてデーターをみていきます。

結論として、(12.36

25枚目のスライドで、母乳栄養の期間

1ヶ月未満 基準
3ヶ月
6ヶ月
12ヶ月

の期間を区切り、母乳で育てた期間が長いほどIQが上がるとしています。
また、30才時点での月収もあがるとしています。でも、まだ観察研究

☆介入試験をせねば、信頼出来るデーターとはならない。

介入試験をせねば! 信頼出来るデータとはならないという説明です。さすが大学の先生、そんじょそこらの、『これをすればバッチリ!』系のお話とは違います。

コインをふって、表がでたら強制的に母乳で育ててくださいと振り分ける。
コインの表裏。

そういった強い介入する。

これで、母乳群と人工郡かがわかれる。

母乳栄養に関する大規模無作為割り付け試験のスライドで、ベラルーシの赤ちゃん17000人。6才児にIQテストをおこなったということを説明し、母乳で育った子供は、6才児にIQ59高かったとしています。

これで、母乳がよいということが結論づけらたとしています。

これはすごい研究だけど、倫理的にできるのか?と。お話ししながらこの実験の経緯を説明されています。そして、結論として、母乳をすごく推奨するとのこと。

また、スライド28(16.15)は、生後10ヶ月から4才までの健康な乳幼児133人において、大脳白質の体積をMRIで計測

母乳対人工乳大脳白質が増えるとの結論を述べています。

☆スライド29(16.53)では、母乳のどの成分がよいのか?

母乳にはいっぱいの栄養素が入っている
多価不飽和脂肪酸→子供の脳の発達によいのではないかというお話をされています。

また、そのなかで次のスライドでは、ω−3脂肪酸(魚などに多く含まれる)の話しをされ、ドコサヘキサエン酸(DHA) エイコサペンタエン酸(EOPA)、Ω−6脂肪酸などの話題を出され、さて、本当にこれはいいのか?ということでの検討がなされているとしています。

多価脂肪酸の説明です。このあたり、私の頭には難しい〜。

そして、スライドの31番目では、沢山の論文がある。すべてまとめて再解析しているということで、次のお話になります。

 

補充による有用性は認めない!

·早産児に対する長鎖多価不飽和脂肪酸の補充

·正期産児に対する長鎖多価不飽和脂肪酸の補充

補充による有用性は認めなかった

なんと!これら多価脂肪酸を補充してもダメなんですねえ。さすがデーターに裏付けられた論文の世界。厳しい現実をちゃんとつきつけていますねえ。

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーから④

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその④です。
③が少し長くなったので補足の④となります。

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

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☆脳の形態:低出生体重ラットの脳は小さく、大脳白質の体積は減る

 

 

15枚目のスライドです。ラットでの脳の大きさを比較しています。

脳の形態について、低出生体重の脳は小さく、大脳白質の体積は減ると語っています。これはなかなか唸ってしまいます。血流が悪く低栄養になり小さく産まれると言うことは脳の形態にも差を生じると言うことをお話ししています。

スライドの中では、

底出生体重ラットの脳は小さく、大脳白質の体積は減る

ということが示され、脳がほんの少し小さいということが、どういうことなのかということを、

大脳白質とは神経細胞と神経細胞をつなぐ、神経線維が通っている部位である。

上記のような説明をしています。

人のMRIでも、同じ。大脳白質が小さい。

脳が小さくなると言うことは、大脳白質が小さいと言うことを意味するというお話です。

大脳白質って何?大脳の白質と灰白質

→大脳の表面は神経細胞が集まっており灰白質と呼ばれます。その奥にある、神経細胞からの命令 を伝える神経線維が束となって走行している部分が大脳白質です。つまり神経線維の束がある場処が大 脳白質ということです。

整理すると、
:灰白質→脳の表面、神経細胞があるところ
:白質→灰白質の内側、神経細胞の連絡路(軸索)

☆子宮血流の低下がもたらす低出生体重モデル動物の特徴4

16枚目のスライドでは、子宮血流の低下がもたらす低出生体重モデル動物の特徴を4つあげています。

血液の流れを減らし=栄養を減らす:子宮血流の低下

この子宮血流の低下がもたらす4つの結果は、

1:低体重で生まれる

2:多動

3:社会性が低下

4:大脳白質の体積が減る

低出生体重児であることのリスクについて、脳が小さいと言うことからわかることをこのように分析し、京都女子大学の辻先生は語っているということです。

日本でいわれる、『小さく産んで大きく育てる』という言葉は、こういったリスクに踏み込んだ言葉ではなく、ただ、小さく産んでも大きく育てればいいんだよと言う言葉だと思います。
それは確かに、

 分娩は先ず第一に安全であること。(母子の生命がかかっていますからね!)

 その上で、母子共に健康であること。

その安全であることが、低体重児とされるほど小さくでもいいに直結しているのならば、ここは少し考えて、『小さく産んで大きく育てる』という言葉をもう一度考えてみるべきではないかと思います。

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーから③

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその③です。

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

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ADHDになりやすい!?低体重児のリスク

8枚目以降のスライドでは、低出生体重児のリスクとして、ADHDになりやすいというお話をなさっています。

8枚目のスライドでは、

注意欠陥多動性障害について簡単に説明されています。

多動、不注意、衝動性などをがあげられていらっしゃいます。

9枚目のスライドでは、

出生体重が軽いほどADHDになりやすいといことが、フィンランドのデーターで語られています。そしてなぜこんなことがおこるのか?、どうすればいいのか?という問題提起をされています。

10枚目のスライドでは、私が前回も指摘させていただいた、血流の話しです。

 

☆子宮血流が足りないとどうなるのか?

 

少し栄養が足りないラットを作る。

体内に同時に宿っている10匹のラット。その10匹のラットを、子宮動脈を調整して血流の状態をわけます。すなわち、半分のラットには通常の血流、残りの半分のラットには血流を悪くするわけです。

この実験で低出生体重児を作るために、栄養そのものを変えるのではなく、血流を変えています。

つまり、

血流が悪い=栄養が行かない=低栄養=低出生体重児

ということですね。この実験、同じラットですので、血液成分的には同じですが、血流という血液の量の多寡によって高栄養と低栄養になるということが示されていると私は思います。

これは私にとっては非常に大きなポイントだと思われました。すなわち、

血流をあげるということが、『小さい赤ちゃんを予防する』ことにつながるのだということは、鍼灸、お灸、セルフケアが非常に役立つということを示唆していると思われるからです。

これは、今まで私が、胎盤形成期の鍼灸アプローチをしっかりとしていた患者さんから、

『赤ちゃんが3000グラムを超えていました!』

『胎盤が大きいって助産師さんに言われました』

こんな報告を多く受けていました。
なぜ、妊娠初期の鍼灸治療でのフォローをしっかりとなさったかたから、今回の辻先生のYouTubeは、このようなお声を多く頂くのかという大きな手がかりとなりました。やはり、胎盤形成期の鍼灸アプローチは非常に有効なのです。しっかりと鍼灸治療でのケアと、ご自宅でのセルフケアを行っていただきたいと切に願っております。

 

☆正常体重児と低体重児のオープンフィールド実験

11枚目ではオープンフィールド実験がおこなわれています。

正常体重で生まれたラットと、低体重で出生したラットを比較しています。

小児期、思春期と行動の違いをみていっています。

14枚目のスライドでは、三部屋式社会性行動試験をおこなっています。

普通の体重で生まれたラットは新しい物に興味を示し、低体重のラットは示さない社会性がないという評価が示されるというお話です。

ちょっと長くなりすぎたので、ここでいったんお仕舞いにしますね。
④に続きます。