2013 中医学会 特別講演  肝木の人間観−2

肝木の人間観

『東洋医学で人を診る』ときに、大きなイメージとなる生命観を掴むことが大切です。その前提となる東洋医学的生命観は、脾胃を中心とする生命観であったり、
天地人三才による生命観であったり、いろいろな生命観がありますね。古来より、
人間をよく診ようとした人たちはいろいろな生命観を使って診ようとしてきました。

 

私はこの肝木の生命観を前提とし、目の前の患者さんを拝見していくことが多いです。
とくに、ストレスや、その方の土台となる生命力が問題となりやすい不妊治療では、
とても使い勝手の良い生命観です。

 

肝心脾肺腎この五臓、五臓各々があって一本の木になっているのではなく、
一本の木をしっかりとよく診ようとしたときに五臓という概念を使っているのだという前提に
立つことが大切です。

脾土 豊かな大地
腎水 こんこんとわく泉
肺  そよぐ風
心  あふれる光り

 

そして、豊穣の土壌に渾渾と湧く泉、脾腎の大地にしっかりと根(肝陰)を張り、風がそよぎあふれる光りが降り注ぐ天空にむかって枝葉(肝陽)を広げる、そんな一本の木のありようを人間としてみていきます。

 

弁証論治は細かく見ることによって、パーツがバラバラに存在しているように思え、論理の追求に走りがちですが、人間がひとくくりの存在であることをしっかりと意識し、目の前の患者さんの理解にすすんでいきたいものです。

 

妊活の選択肢:不妊カウンセリングから

妊活の選択肢

 

ときどき、不妊治療について迷っている、という相談を受けることがあります。

私が大切だと思うのは、その方ごとの不妊治療の「難易度」です。
そして、その難易度に見合った「挑戦の質と量」を、きちんと選べているかどうか。

この2つは、妊活を続けていくうえで、とても大切なポイントだと感じています。

事実を目の前に、しっかりと状況を見極める

「妊娠できていない」という事実を目の前にすると、
「この不妊治療は無駄だったのではないか」
「私には妊娠できないのではないか」
そんなふうに、強い絶望感を抱いてしまう方が少なくありません。

その結果、「妊活をやめる」という選択を、思ったよりも早い段階でしてしまう方もいらっしゃいます。

とくに多いのが、
「ここまでやってダメだったら怖いから、これ以上はやらない」
という考え方です。

私から見ると、これは少し立ち止まって考えてほしい思考パターンだな、と感じます。
前向きな選択ができないまま、妊活を中途半端なところで終わらせてしまったり、
本当は一番大事な「時間」を、知らず知らずのうちに浪費してしまっている方が、案外多いのです。

私は、声を大にして言いたい。
「もったいない!!」

前に進みましょう。
大きな扉が開く準備は、もうあなたを待っています。

30代前半の決断

特に30代前半の、「まだもう少し頑張ればやれるかも」と感じている年代の方は、
ギブアップが早い傾向にあると感じています。

これは、「まだ大丈夫」という安心感が、
「もう治療はやめる」という選択を、軽くしてしまっているのかもしれません。

この年代の方に、私がよくお伝えする言葉があります。

「ちょっと待って。
再開するとき、同じところからスタートできるとは限らないよ。」

採卵はできた。移植もできた。
でも、妊娠が成立しなかった。

こうした経験をすると、
「採卵や移植までは、当たり前にスムーズに進むもの」
と思ってしまう方も多いのですが、実はそうとは限りません。

5年後、30代後半になると、
そもそも採卵ができない。
1個、2個しか卵が取れない。
受精しない。
移植までたどり着かない。

これまでスムーズにできていたところまでの道のりが、
一気に長くなってしまうこともあるのです。

だからこそ、「今」を大切に、進んでほしいと思います。

30代後半から40代の決断

この年代になると、「保険適応」との兼ね合いが、とても大きなテーマになります。

私は、
30代は移植6回、
40代は移植3回、
という現在の保険適応の考え方は、本末転倒だと感じています。

とはいえ、現実は厳しいものがあります。

そのため私は、場合によっては自費での採卵を組み合わせることを、お勧めすることもあります。

年齢を重ねると、卵巣の状態はアップダウンが大きくなります。

もし40代で、
もしその妊活が一人目の妊活であるならば、

「凍結は、時間を買うもの」

そう考えて、自費の採卵を組み合わせるという選択も、十分アリだと思います。

私は、「凍結とは時間を買う技術」だと考えています。
現在の保険適応の治療には、この発想があまりないように感じます。

もし卵巣機能が厳しくなってきたと感じたら、
ぜひこの考え方を、選択肢のひとつとして取り入れてみてください。

40代半ばの妊活について

40代半ばの方の妊活で大切なのは、
「今の状況を正しく把握すること」と、
「時間を大事にすること」。

私は、体外受精は時間を買う、ほぼ唯一の選択肢だと思っています。

もし、これまで一度も妊娠した経験がないのであれば、
ここは迷わず、採卵を行い、凍結胚を作ることをお勧めします。

保険適応で「6回まで移植できる」というのは、
裏を返せば、30代であっても
それくらい移植を重ねなければ、
妊娠・出産にたどり着かないケースが多い、ということでもあります。

だからこそ、
複数回の移植分を先に採卵・凍結しておくことが、何より大切。

そのうえで、移植に向けて必要なことを考えていく。
この順番が、とても重要だと思います。

40代半ば、自然妊娠への挑戦

あると思います。
40代半ばでの自然妊娠・出産。

これまでの経験から見ても、
「珍しいこと」ではなく、「確かにあること」だと感じています。

ただし、やはり条件はあります。

・男性側の状態に問題がないこと
・定期的な排卵があること
・子宮や卵巣を中心に、気血の巡りがよいこと

40代でも、妊娠はします。
ただし、その妊娠が出産までたどり着く確率は、
10代・20代とは違うということ。

そこには、やはり覚悟が必要です。

「惜しい」と感じることが多い、不妊カウンセリング

不妊カウンセリングをしていて、
「惜しいな」と感じるのは、
ネガティブな情報にフォーカスしすぎて、
前向きな選択ができなくなってしまっている方がいらっしゃることです。

また、情報を調べすぎるあまり、
ご自身の状況を踏まえた選択ができていないのでは、
と感じることもあります。

妊活は、ほんの少しのボタンの掛け違いで、
前に進まなくなることが多いものです。

もし、自分ひとりでは整理できないと感じたら、
生殖医療の「治療そのもの」から少し距離を置いた場所で、
視野を広げて相談してみることをお勧めします。

ただし、生殖医療を完全に否定するタイプの意見をもらってしまうと、
かえって混乱してしまうこともあるので、注意が必要です。

ご自身にとって、最善の道を選ぶことができますように。
そして、ほんの少しでも「子どもが欲しい」と思った方に、
良いご縁がありますように。

胚移植後の生活「いつもと同じ」でいいのかな?

胚移植後の生活は「いつもと同じ」でいいの?
――コロナのステイホームが教えてくれたこと

2020年、突然のコロナ禍とステイホーム。振り返れば本当に大変な時期でした。私の治療院でも対応に追われましたが、換気環境がよかったこと、そして「妊活を止めたくない」という強い思いを持つ方が多く、キャンセルもありながら通院を続ける患者さんも案外多くいました。

この“社会全体が急に止まった”状況は、これまでとは全く違う世界を見せてくれたように思います。そして、不妊治療と長年向き合ってきた私にとって、大きな示唆を与えてくれた出来事でもありました。

■ “普段通りでいい”の限界

近年の病院では、妊娠初期の生活指導は「普段と同じで良い」が主流です。もちろんそれで良いケースも多いのですが、体表観察やこれまでの経験から、「がっつり安静」が功を奏すタイプの方が確実に存在するというのが私の実感です。

しかし、患者さんの仕事や家庭環境を考えると、妊娠初期にしっかり安静をとるのは現実的に難しいのが常でした。ところがコロナの緊急事態宣言で、社会全体が半ば強制的に“安静”状態になりました。

■ 難治症例2件と、偶然訪れた「安静チャンス」

その2020年4月、「この方は本来なら妊娠初期の徹底した安静が必要だろうな……」と感じていた症例が2件重なりました。

社会が止まり、本人たちも落ち着かない中で、私はあえてこう伝えました。

「この状況を試せるのは今だけですよ。やってみませんか?」

そして、鍼灸治療に加えてセルフ灸もしっかり行い、

  • 午前中に家事をまとめて済ませる
  • 午後は昼寝・漫画・アマプラ
  • 夜はできるだけ早く寝る
  • “頭を使いすぎない・考えすぎない”

という徹底した安静生活を送っていただきました。

結果として、長い間うまくいかなかったお二人が、今回は無事に妊娠初期を乗り越え、出産に至ったのです。

■ コロナがくれた「安静の実証データ」

私は思いました。

「やっぱりな。」

これまで臨床の肌感覚でしか言えなかった“妊娠初期の安静が効くタイプ”の存在。その仮説を裏付けるような結果を、コロナが示してくれました。

もちろん、人によって

  • がっつり安静が合う人
  • 普段通りで大丈夫な人

これはまったく違います。

そして安静は人によってはストレス源にもなります。“自分の意思で休む”という構造は、かえって肝鬱を強めることも多いのです。

今回は「社会がロックダウンだから仕方ない」という外的要因が、むしろ気持ちを軽くし、良い条件となりました。

■ “扉が開かない時”の選択肢としての安静

コロナが教えてくれたのは、

「安静には、状況や性格に合うときにだけ開く扉がある」

ということ。

妊娠初期の生活は一律に「普段通りでOK」と片付けられません。一般論で進めないケースも確かにあります。

どうしても前に進めないとき、がっつり安静という選択肢は、時に大きな意味を持ちます。そんな臨床の学びを、コロナは私に残してくれました。

怖いって何だろう?

怖いってなんだろう??

長らく、CBTにかかわり、思考の面白さに取り憑かれています(^^)
さて、私はピヨピヨ軍団と共に生活していますが、面白いですねえピヨピヨ。
人間ってこうやって、社会的人間になっていくのねえと眺めています。

その中で、「怖い」って何だろうと考えています。
昨日も、ケーズデンキにいくと、真っ先に「ルンバが見たい」と走り出す3歳児。

ピヨピヨ軍団は、5才ヘンテコ男児、3才ガッツある男児、1才食欲モリモリ女児の三人組です。
割りと社会性があり、ガッツがあり、コミ力があるので周りからもかわいがられる3才男児。
これが「ルンバが怖い」んです。

私の家と娘の家は20歩歩くとつく距離で、
毎日午後から、私は襲撃され、夕飯を食べ、お風呂に入って髪を乾かすところまで一緒です。

その中で、うちのリビングに来る度に3才男児は、まずルンバチェック、そして「ルンバ押し入れに仕舞って」と真顔でリクエストします。すごく怖そうにしているので、すぐに対応。先日、「なんでルンバをしまうの?」と聞くと、初めて明瞭に「ルンバが怖いから」と言語化してくれました。

まあ、彼の行動をみていると、明らかにルンバが怖いのはわかります。とにかく恐怖に駆られた態度です。

でも、お風呂上がりのYouTubeタイムに彼は「ルンバの見せて」とルンバ動画をリクエストしてずっとみているのです。

なんで?なんで?なんで???。
まあそもそも、世の中にルンバがずらっと並んであれこれ出てくる動画が存在するなんてのも不思議ですが。

近所のケーズデンキに行ってもルンバコーナーでルンバをみるみるみる。
昨日もやはりルンバにとりつく3歳児。

ルンバが怖いというのに、動画はみるし、興味をすごくもっている。
でも、ルンバは怖くてしまってほしい。

ううーーーーん、この矛盾が理解出来ない。
怖いのならば、わざわざお店に行ってみなくても良いじゃない??、
動画を見なくても良いじゃないと婆ちゃんは思うわけです。

ちなみに、他の二人はルンバにまったく恐怖は感じていないようで、興味もないようです。
人間の興味、感情。
面白いですねえ。

で、怖い、しまえといいながら、わざわざみる。
なんじゃこれ???って婆さんは思うのでした。
人の心って、不思議ねえ。

ギックリ腰の治療について:最近多い“急な腰の痛み”に思うこと

ギックリ腰の治療について:最近多い“急な腰の痛み”に思うこと

最近、ギックリ腰や急な不調で来院される方が増えているように感じます。
季節の変わり目だからなのか、気温差なのか…理由はさまざまですが、今回はそんなギックリ腰のお話です。

■ 私がギックリ腰の治療で大切にしている考え方

ギックリ腰は、急な「弱り」を体が守ろうとして、気血がグッと集まることで痛みが出ている状態だと考えています。
そのため、痛みだけを無理に取ってしまうと、守っている力が外れて弱りが前面に出てしまうこともあります。

ですので私は、
「痛みをとにかくゼロにする」ことを目的にはしない
という方針で治療を行っています。

この考えは、免許取り立ての頃に先生から
「ギックリ腰は、やりすぎると歩けなくなることがある。とにかく無事に帰ってもらうことが大事」
と言われたことが深く残っているからかもしれません。治療院に救急車…は避けたいですからね。

■ まずは病院での対応を

動けないほどの強い痛みの場合は、まず整形外科などの医療機関で診てもらいましょう。
また、動ける場合でも、急性期は安静+湿布が基本だと思っています。

その上で、
「ちょっと受けてみようかな」
くらいの気持ちで鍼灸を取り入れていただくのが良いのでは、と考えています。

■ 来院された方のケースから

定期的に通ってくださっている方から、
「ギックリ腰がつらくて…」
とご連絡があり、予約を早めて来院されました。

私のギックリ腰への基本方針は先ほど書いた通りですので、特別なことはしません。
いつも通り、その方の生命力を整えることを中心とした治療です。

今回少し違ったのは、お腹を拝見した際に
「おへそ周りが舟形に抜けているな」
と感じた点で、そこに対して箱灸をプラスしたくらいです。

■ 治療後のユニークな変化

治療後、その方から
「今まで受けたギックリ腰の治療で、こんなに効いたのは初めて!」
という嬉しい感想をいただきました。

…とはいえ私は
「たまたまじゃない?」
「気をつかって言ってくれてる?」
と疑い深く思いつつも(笑)、ありがたく受け取りました。

その後、便通が良くなり体が軽くなるにつれて、腰の痛みも自然と和らいだとのこと。
下焦(からだの下部)の気の滞りが流れたことで、便通も整い、痛みも軽減したのかもしれません。

■ ギックリ腰は“焦らず・無理せず”

ギックリ腰の治療は、時に「よく効いた」という結果が出ることもあります。が、
正直なところ、治療効果が“バクチ”に感じられる側面もあります。

いろいろな先生方が「ギックリ腰が即座に改善した」という情報を発信されていますが、
一方で改善しなかったケースも多く存在するのが実際のところではないでしょうか。

そのため私はやっぱり、
「まずは安静が一番」
「急性期に無理して来院しなくてもよいのでは?」
と基本的には考えています。

無理のない範囲で、回復のお手伝いができたら嬉しいです。
ご自身のお身体を大切にメンテして、日々を気持ちよく生きていけるといいですね。