流産は、本当に辛いですね。
妊娠したのかなと思い、喜んだのはつかのま、出血が始まりそのままということもありますし、
病院でしっかりと胎嚢が確認できたのに、続く検診では残念ながら心拍が見えずということもあります。
妊娠の初期は、”自然の淘汰”の時期であるのは事実です。
そういった卵ちゃん側の理由で、残念ながらということがあるのもいたしかたないところです。
そして、病院でどうして流産になったのでしょうか?という質問をすると、
だいたいこのような『卵のせいでしょう、自然な淘汰ですよ。仕方がないですね』というお返事になることが多いと思います。
これは納得の出来る説明ではあると思います。
あたりまえの自然な淘汰は、生殖においては必ずあります。
私は沢山の妊娠に付き添わせていただいて、この『あたりまえの自然な淘汰』の課題もふまえながら、”もしかしてこの方は少し流産しやすいタイプではないだろうか”ということが、わかるようになってきました。そしてこのポイントは、年齢要因が高い方の場合は非常に大きな課題となります。
なぜならば、妊娠そのものが成立しにくい状況で、高度生殖医療などをおこない、やっと成立した妊娠が、卵の課題はなくとも、なかなか継続出来ないとなると、妊娠そのものの難しさに、継続の難しさも加わり、妊娠の継続がむずかしくなってしまうからです。
そして、この課題は血流と、子宮(女子胞)の不安定さです。
☆東洋医学的な発想の子宮(女子胞)
子宮(女子胞)というのは、赤ちゃんを養い育てる孵卵器です。
その孵卵器の性能がちょっとだけパワー不足であったり、不安定な方がいらっしゃります。
そして、パワー不足であっても、不安定であっても、ある一定の時期(着床から妊娠12週まで)を
乗り切ることが出来れば、問題なく経過できます。
妊娠初期が不安定といわれる理由は、確かに胎児側の理由で淘汰があるからですね。
そしてもう一つは、孵卵器である子宮側が血流が悪かったり、筋腫や内膜の状態などで不安定だったりしてしまうのかと思います。
妊娠初期にこのちょっと不安定な孵卵器を安定させ、しっかりと大きな胎盤を作ることができれば、この妊娠初期を切り抜けられます。
そしてこの孵卵器である子宮(女子胞)は、身体の余力が養っています。
女性は妊娠していても、していなくても健康に過ごすことができます。そして妊娠していれば全身の生命力の余力をもって子宮(女子胞)をやしなうことになるのです。
全身状態が、余力のない気虚気味(パワー不足)であれば、孵卵器である子宮(女子胞)を充分に養うことができず、どうしても不安定な子宮(女子胞)となるわけです。
身体全体に余裕をもち、子宮(女子胞)の生命力が安定するようにしていくことが大切なのです。
また強いストレスも子宮(女子胞)に負担となります。ストレスも鍼灸やメンタルケアでの調整が効果的です。
詳しくは12)東洋医学の体力貯金を参照のこと
☆☆いまどきの病院指導
長らく不妊治療にお付き合いしていると、産婦人科事情も変化しているなと思って眺めています。
それは多分、しっかりしたデータや根拠に基づいて、変化しているのかなと思います。
これはあたりまえのことなんだなとは、理解します。でも、統計上の話しや大多数の話しであり、個別具体的なケースになれば違うことも多いのではないのかなと疑問もわきます。
今は病院で妊娠したら、『普通にしていていいですよ』と言われることが鉄板だと思います。
たぶん、普通でいいんだと思います。
そして私は疑問があります。
普通ってどういう状態?と。
☆☆『普通にしていていいですよ』という妊娠の初期
普通というのは、その人の普通。
毎日忙しく立ち回り、忙しく動いている人にとってはそれが普通
毎日、睡眠不足で、ほとんど立ちっぱなしの人にとってはそれが普通
毎日、朝の9時から座り仕事が続き、夜の8時過ぎまで残業する。それが普通の人。
”特別なことをしなくていいんですよ” というのが、この『普通にしていていいですよ』という
言葉の裏返しだと思います。
しかしながら、人によって普通が違う。
妊娠初期の望ましき普通がわからないですよね。
☆☆出歩かない、『Stay home』の緊急事態宣言が教えてくれた『普通の効用』
2020年の4月は緊急事態宣言でしたね。
出歩かない、人と接触しない、引きこもる
多くの人が急にそんな生活を強いられました。
その中にちょうど妊娠の初期を迎えられた方がおふたりいらっしゃりました。
お二人とも、何度も初期流産を経験している方でした。
お仕事がハードで、妊娠、出産をご希望なさるものの、妊娠の初期の段階の安静が
どうしても取れない方でした。
病院からも『普通にしていていい』という指導がなされ、
ご自身の日常である普通にすごす妊娠初期で流産をしてしまい、
『お母さんのせいではないですよ、自然な淘汰でしょう』という説明がくり返されていました。
その中の緊急事態宣言。
このときの『普通の生活』は、電車に乗って通勤しない、会議がない、仕事で出歩くことがない、
『Stay home』家にとどまる普通の生活でした。
ハードなお仕事が『普通』だったお二人は、お二人にとっていままでないような『普通』で『Stay home』をすごされました。
そして、この『Stay home』の普通が、いままでの安静にはできないご自身の『普通』を過ごしていたお二人に妊娠の継続をもたらし、無事に妊娠初期を切り抜け、ご出産にいたりました。
☆☆ときどき垣間見ていた、ドクターの安静指示 『Stay home』診断書、心拍確認まで入院
緊急事態宣言での『普通』が流産を繰り返す方の妊娠を継続させ出産へ導きました。
実は私は過去に、ドクターが同じ事をなさっているのをかいまみてきました。
いまでは、そんな指導もみません。ただ、あの時期、過去にその指導をみていて、
『あーこういう指示をなさるのか』と興味深く拝見していました。
つまり、ドクター側でも、『普通』が『普通』ではなく、ぐっと安静生活の『普通』が
妊娠の継続に役立つことがあるのをご存じだったのかと思います。
☆☆診断書による安静
お一人のドクターは『診断書』でStay homeを指示していました。
私の複数の患者さんが、今まで行っていたクリニックではなかった指示として
妊娠が成立したら、『診断書』をいただき、会社に提出し、無事に妊娠初期を切り抜けるという状況が作られていました。
この状況は私が患者さんを通じて知っている範囲では1年ぐらい続いていたように思います。
私の勝手な想像ですが、やはり『普通』が『普通』ではなく、この指示が効果的な人が一定数いたのかと思います。だから出していた診断書なのでしょう。
☆☆ 『厳格な安静指示と入院』による安静
患者さんから、こんな風に指導されましたと言われて見せていただいた安静指示リスト。細かくどういう風に安静にするのかが具体的に羅列されていました。
コピーを取っておけばよかった(^_^;)。走るな、自転車に乗るな、重いものを持つな、車で遠出するななどなどがあったと思います。そして高度生殖医療が介入した妊娠の人には、妊娠判定が陽性がでてから、心拍が確認できるまで入院指示となっていました。
体外受精が広まってきた初期の頃の話しで、症例数も少なかったから出来たことなのかとも思いますが、入院という安静が効いた方も多かったのかなと思います。女性の場合、自宅だと安静がなかなか難しいですからね。
☆☆ご相談:心拍確認が出来ない流産を2回もしています。
話しがだいぶ長くなってしまいました。ここからはページを変えてお話ししていきますね。