アドラー心理学5,6,7

5. 子育ての目標と勇気づけ

アドラー心理学の子育て法は「勇気づけ」という言葉にあらわされるのではないかと思います。

さて、その前に、その行動の目標、つまり子育ての目標を考えなければなりません。

アドラーでは子育ての心理的な目標を2つあげています。

子育ての目標
(1) 私は能力がある
(2) 人々は私の仲間だ

この2つの目標を達せられるように、子供に対して援助していくことが、勇気づけです。

昔、アドラーの子育て講座に通っていたときに、沢山の課題シートを書きました。振り返ると、「あーあ、ダメ母だったなあ」と思うことがたくさん。まあ、それでもあのときは精一杯だったのかな。

課題シートをみていると、お母さんである、私の方が感情むき出しで、怒ったり相手を操作しようとしています。そして子供の方が譲歩してくれたり。

たとえば、子育てにご褒美は禁物です。褒美を使う望ましくない効果である、「褒美をくれる人がいないと行動しない」なども出てきます。それが課題シートのなかで如実にあらわれているのです。書いてみるとわかりますねえ。

エピソード
長男が10才ぐらいの出来事です。子供は10時に寝るという約束がありましたが、なかなか守れません。そこで15日間連続で10時に寝ることが出来たら、ハムスターを飼うという約束をしました。褒美を用いて行動を操作したわけです。

この褒美は功を奏し、15日間連続で寝ることができ、ハムスターを飼いました。そしてそのあと結局、かれは10時に寝ることができません。つまり褒美がなくなったので動かなくなってしまったのです。

ありゃりゃですね。

課題シートをみると、もう一度、「夜10時に寝る」ということは誰の課題なのか考え、その合理的な理由を考えてみましょうという再スタートになっています。

子育ては再スタートの繰り返し。親子で育っていくのですねえ。

それにしても、私の課題シートに出てくる数々のエピソード。面白くって面白くって。子育ての思い出です。

娘もなかなか根性があって、いじらしいです。私もがんばっていたなあなんて思います。

6. 課題の分離

課題の分離ということも、アドラー心理学での特徴的な考え方だと思います。課題の分離というのは、そのエピソードが誰の課題であるかを理解することから始まります。

たとえば、学校の宿題をやらないA君。お母さんは悩みます。

ここで、学校の宿題は誰の課題か?
→A君の課題です。

A君の課題の学校の宿題をお母さんがやるわけにはいきません。

ステップとしてはまず、共通の課題にできるかということです。お母さんは共通の課題に出来なければ、A君の宿題に介入はできません。でも、宿題をやらなければAが困るじゃないですか! 将来が不安です! という声が聞こえてきそうですね。

その不安は誰の課題でしょうか? A君はお母さんの不安を解消するために宿題をするのでしょうか? お母さんの不安はお母さんの課題です。A君に宿題をさせて解消するものではないのです。

A君に宿題をするという課題がなぜ必要なのか理解してもらい、その上で、共通の課題に出来るのかを検討するということから始めるしかないのです。A君に自分の課題を取り組む勇気をもってもらう、これが勇気づけですね。

もう少し整理しましょう。

私の課題、
貴方の課題、
そして共通の課題。

少し整理してみましょう

(1) お母さんが子供が勉強しなくて困っていますという問題で悩んでいるときに、誰の課題か?と考えます。

(2) 子供の課題は?
 子供が勉強するのは子供の課題、ですね。

(3) お母さんの課題は?
 お母さんの課題は「子供が勉強しないことで、心配している自分の心配をどうするのか」というのが課題です。

結論:お母さんは自分の課題である「心配」を子供を使って解決することは出来ません。だって、自分の課題は自分で解決なのですよ。これが親の自立かな。

解決策として、共通の課題にするということがでてきます。つまり、宿題に取り組むことを親子ともどもの共通の課題にするわけです。

これには、「宿題がなかなか出来ないようだけど、お母さんに手伝えることはある?」とご用伺いをして、OKが出れば共通の課題となり、一緒にどうやったら宿題をして終わらせることが出来るのかということを、一緒に考えることが出来ます。つまり、親子関係が良好でなければ成り立たないわけです。信頼関係がある親子であること、これがまず大前提になるんですよね。

さあ、勇気を持って親子関係をつくり、楽しい時間を増やしましょう。

7. 勇気づけの10箇条

アドラー心理学の野田俊作先生が、「勇気づけの10箇条(野田俊作の補正項)」として紹介されています。

読んでいてハッとすることの連続です。知識としては知っていても、自分の行動で振り返ってみると勇気づけが自分にも、家族にも出来ていないことが多いなあと感じます。

でも、大丈夫。いま、このときから、勇気づけを意識して過ごしていきましょう。

勇気づけの10か条
1.原因ではなくて目標を、過去でなく未来を見る
2.足りないものではなくて、すでに与えられているものを見る
3.短所や欠点ではなくて長所や能力を見る
4.「悪いあの人、かわいそうな私」をやめて、「私にできること」を探す
5.人を変えるのをやめて、自分を変える努力をする
6.達成不可能な目標を捨てて達成可能な目標を探す
7.一歩一歩、段階的に問題を解決する
8.相手にとっても利益になる目標を探す
9.陰性感情や症状は目的のために使われていることを理解する
10.事態には別の解釈もあることを学ぶ

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