カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 40代 不妊 ストレス・精神症状 虚弱体質・疲労

1度の体外受精でスムーズに妊娠、鍼灸による出産までの体調管理(41歳出産)

概要

人工授精、タイミングを行うも妊娠せず。その後、鍼灸を並用し1回の体外受精で無事に妊娠。妊娠中の鍼灸と自宅でのセルフケアにより、妊娠初期の切迫早産による出血ものりきり、その後の下肢のむくみや腰痛などもケアができ、妊娠糖尿病や高血圧などもなく順調な妊娠出産となった。

(この症例の患者さまの声(1)はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」12-4
(この症例の患者さまの声(2)はこちら→「妊娠-出産できた理由についてのアンケート」R2-2
【case:0217】

ご相談内容

40歳です。1年ほど前から妊活しています。人工授精やタイミングを行っていますが、なかなか妊娠しません。不妊治療の一般検査では夫も私も大きな問題はありませんでしたが、

(1)最近生理周期が短め(24-25日)
(2)卵管の通過は左右ともOKであったが、少し左の通過が悪い
(3)プロラクチンが高め
(4)フーナー検査不良
(5)AMAは年齢にしては良好

病院ではそろそろ、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療へのステップアップを勧められています。

身体全体の体調としては
(1)疲れやすいこと
(2)腰のだるさ
(3)精神的なストレスに弱い

上記のことが気になります。

なにか自分にできることがあったら取り入れて、妊娠そして出産に取り組んで行きたいです。

東洋医学的診立て

早く妊娠出産したいとのご希望ですね。

いままで、人工授精、タイミングなどをなさってきたこと。もうすぐ41歳という年齢要因を考えても、なるべく早くステップアップをなさるのはとてもよいかなと思います。このまま間を置かずにすすんでいきましょう。

お身体を拝見すると、大きな問題はありませんが、手足が大きく体格がよいわりに、体幹のパワーがないために、動きや動作によって体力の消耗が大きいタイプだと思います。(手足の大きい気血両虚タイプ)。このタイプの方は、周りに気を使うこと、こまめに動くことが身体の力を予想外に使ってしまいます。

妊娠はこの臍下丹田にある女子胞(子宮)の力がとても大切です。しかしながら、手足の大きな気血両虚タイプの方は、ご自身の生命力が女子胞(子宮)にあつまりにくく、手足末端に引っ張られがちです。

妊娠をめざす今は、少しわがままになり、自分中心でいきましょう。頼まれごとや、仕事の気遣いもほどほどに。自分大事、家族大事で過ごしていくことが、自分というこれから子宮という身体の中心で卵ちゃんを迎え、孵卵器となって育てて行くコツです。

また継続的な冷えの入り込みが身体にうかがえます。これは身体の負担となりますので、取り去っていきたいと思います。またセルフケアも効きますからとりいれていきましょう。

少しまとめておきますね。
(1)気血を養い全身の生命力をあげるという観点を中心に。
(2)身体の中心にある女子胞(子宮)の力を育てましょう。
(3)AMHがよいので、細かい婦人科的な課題は気にしない
(4)自分中心にして、わがままにすごしましょう。
(5)冷えの入り込みに対応していきましょう。

東洋医学的な観察ポイント

  • 食欲あり、食べるのは遅い。食事は美味しい。口が渇く。二便に大きな問題なし。睡眠は寝つきが時々悪く夢をよくみる。寝起きが悪い。
  • 生理周期が最近短め。塊などはない、排卵時に軽く下腹部が痛む、イライラ、眠気。
  • 舌、色褪、瘀斑あり。舌裏怒張無し。列缺(LU7)のかげりあり。右の内関(PC6)陥凹。右の肺兪(BL13)、厥陰兪(BL14)発汗、動きが悪い。右の肝兪(BL18)、左胃兪(BL21)、両腎兪(BL23)陥凹(右の腎兪(BL23)トップ)。左右とも脾募あり。左の股関節から大腿部に若干冷え動きの悪さあり。

東洋医学的弁証論治

弁証:腎虚肝鬱 衝任脈を中心とした気血両虚
論治:益気補腎 衝任脈を補う
治療方針:女子胞(子宮)を養うために、衝任脈を中心に益気補腎をおこなう。 必要に応じて、肝鬱などの処置もするが、基本的に女子胞(子宮)の安定に勤めていくことを中心とし、ほかのことには養生の範囲で対応していく。

治療経過

初診
(1)右内関(PC6)、右陽池(TE4)外関(TE5)、足三里(ST36)、陰陵泉(SP9)、三陰交(SP6) 関元
(2)右肺兪(BL13)(抜けをしっかり)
(3)腎兪(BL23)、右胃兪(BL21) 左脾兪(BL20) 次髎(BL32)
セルフケア 関元(CV4) 右外関(TE5)陽池(TE4)、陰陵泉、三陰交(SP6) 脾兪(BL20)、腎兪(BL23)、次髎(BL32)

棒灸指導 臍、中注(KI15)、関元(CV4)

1ヶ月後
採卵ー移植ー妊娠判定陽性 ここから週に2−3日から5日の鍼灸治療、毎日のセルフケア。

妊娠初期の不安定さ
動くと出血しやすい→とにかく安静に。鍼灸継続、セルフケア継続
切迫流産などの診断もあり、診断書をもらい仕事を休む。

妊娠15週〜35週まで
子宮筋腫が目立つが、棒灸をいれて対応
鍼灸治療も継続。

35週
恥骨付近が痛い→トコちゃんベルト、置き鍼で対応
遠方からの通院のため、一人での来院はここまでで終了

出産近くになりご主人の送迎などがあれば可能であれば来院はOKと指導。
41週、3000グラム越えの男児を出産。
おめでとうございます。

あとがき

手足のおおきな気虚タイプの方は、自分の中心を守るという課題をしっかりと意識していただくことがとても大事です。

臓腑、子宮のある体幹にくらべて手足が大きいと、気血や身体の力が動いているおおきな手足にひっぱられ、相対的に臓腑や子宮(女子胞)の力が薄くなります。気遣いをよくする人や優しい人に多く、少しワガママで自分勝手にしてねというアドバイスが結果的に妊娠に貢献してくれます。

妊娠し、子宮(女子胞)で赤ちゃんを育み、出産するのはご自身です。自分を守ることを最優先にした時間が、妊娠そして出産をスムーズに導いてくれたんだなと思います。