アドラー心理学8,9

8. ライフスタイル

ライフスタイルとは人生の設計図です。人生という旅をするときに、この自分の設計図にそって、その時々を選択して具体的な行動につながってきます。

ただ、最終的に決めて行動するのは、ライフスタイルではなくて、自分自身。つまり、もし今ある人生の流れ、自分の選択のありように困った問題があるのならばライフスタイルを変更すればよいのです。だって、「私」が「ライフスタイル」を選択してつかっているのです。ライフスタイルの奴隷ではないのですからね。

私は『東洋医学で人を診る』というスタンスです。東洋医学的な生命観で目の前の患者さんを理解します。このときに、その方がどういったライフスタイルをもっているのかなということも東洋医学的な観点から理解しようとします。そして現在の困難を乗り越え、「あらまほしき未来」に向かうにはどうしたらいいのかを考えます。

アドラー心理学でも同じですね。ライフスタイルを分析し、明確にし、ライフスタイルの変更を示唆してくれます。「変える」ことには勇気がいります。その勇気づけのためにカウンセラーの人が寄り添ってくれます。

私は鍼灸治療を通じて、患者さんがライフスタイルを変更し、新しい一歩を切り開く勇気をもてるように寄り添って行きたいなあと思っています。

さて、もう少しライフスタイルという観点、アドラーはどのように考えているのか、復習をしていきたいと思います。

(1)きょうだい関係

ライフスタイルを決める要素はたくさんありますが、このきょうだい関係というのは、なかなか面白い要素です。

「実践カウンセリング」(監修、野田俊作/ヒューマン・ギルド出版部)から紹介しますね。

家族の間の相互関係はライフスタイルの形成に重要な働きをする。
→ふむふむ、それはそうですね。子供にとって、家族ははじめて知る社会。そこから学びますね。

役割の選択:こどもはきょうだいとの競合の中で自分なりの成長を発揮して社会(両親や大人達)に受け入れられようとする。
→こういった環境によって、自分のライフスタイルを子供みずから選んでいくのですね。

私は、多くの方と接していて、確かにその方がどういった家族関係(兄弟順位)出会ったのかと言うことをぼんやり感じることがあります。野田さんのこの本を通じて、はっきりと意識することが出来ましたので、もう少し学んで行きましょう。

単独子(ひとりっこ):
 親の影響を受けやすい
 孤独に弱い
 対人関係が下手
 自信がない
 わがままになりやすい

私の夫や母は一人っ子です。どうも当てはまるようなあてはまらないようなという気がしますが、ワガママになりやすいという点から言えば、「それをワガママと認識してないワガママ」であるのが一人っ子の特徴ではないかなと思います。

たとえば、美味しいケーキがあります。人が3人います。全部自分が食べたいというのはワガママでしょう。一人っ子である、私の夫や母はここを「ワガママ」と意識せず、「わー美味しそう!食べよう」と、自分の好きなだけ、まわりにシェアする人がいるということが「もともと発想になく」食べちゃいます。食べ終わってはじめて「美味しかったよ、貴方も食べれば?」って言います。でも、結果的に全部食べ終わってしまっていて、シェアはできませんから、ワガママな行動です。

ただ、このワガママは、他を押しのけてとか、自分だけが独占したいという思いがあってのワガママではなく、「まわりの存在を気がつかない」「シェアしなくてはいけないことに気がつかない」ワガママなのです。

つまり、丸ごと一つのケーキがあれば、自然とケーキの上に切り取り線が浮かぶのが兄弟のいる人でしょう。3人で分けるのかな?5人でわけるのかな?切り分ける前にその切り取り線が浮かび、「そんな切り取り線など無視だ!おれが全部独占する!」となるならば、ワガママもわかりやすいのですが、一人っ子の夫と母には、そもそもこの切り取り線が見えません。

見えないんだから、わけようもないし、独り占めしてもワガママと言うよりも、空気読めないってところでしょうか?。一緒に暮らしていると悪気のないかわいいヤツだけどムカつくぞって感じです。

第一子
 第一子の最初の体験は王座を喪失すること。
 高い目標をたてる。
 リーダーシップがある。

王座の喪失ってのは、ずっと第一子で親の注目をあつめ生活していたのに、第二子、第三子の登場によって転落しちゃったということですね。王座を奪われた後は必死で親の関心を建設的な方法で引こうとするか、それに失敗して問題児的に感心を引くか。私は第一子ですが、妹と2つ違いなので転落っていう意識がないのですが、あるのかな?

中間子
 中間子は自立的
 現実的、社交的

一度も親の愛を独占したことがない。自分の人生は自分で切り開くそんな考えを感じて生きる人が多い。上下の兄弟関係を作るという立場から、現実的で社交的。ただ、自分の扱いが不当だと感じれば攻撃的になるかもしれないとのこと。兄弟との関係、親子との関係のありようですねえ。

第二子
 第二子は第一子と正反対になりやすい。

これは非常にわかりやすいですね。そして競合的になりやすいというのもなんとなく納得。がんばりやさんですね。

末子
 永遠の赤ん坊

末子の記述を読むと、割合と否定的な文言がならびます。自立できない「永遠の赤ん坊」と。ふうむと思いながら、私自身は末子の人の「かわいい優しさ」をみることが多いです。また親にとって、親思いの人でもあるような感じがします。親との蜜月が続いているのですかねえ(これを永遠の赤ん坊と把えているのかな?)

テキストに紹介されているこれらのきょうだい順位。改めて読み直して面白いなあと感じます。人間観察の妙ですねえ。もっと観察を重ねてみたいと思います。

【参考文献】
「実践カウンセリング : 現代アドラー心理学の理論と技法」
野田俊作:監修 アドラー心理学研究会:編集 ヒューマン・ギルド出版部刊

(2)ライフスタイル診断

ライフスタイルを知るライフスタイル診断に、早期回想があげられています。これはその個人の過去の特定な思い出を語って頂くことによって、その人のライフスタイルを診断しようというものです。

条件は、特定な思い出であり、ストーリー性があること、視覚性があり感情を伴い出来れば10才ぐらいまでの出来事であることとされています。

この早期回想によって、ライフスタイルを知り、アドラー心理学の実践によって早期回想が変化することにより、ライフスタイルの変化を知るわけです。

ここで私が気がつくのは、「記憶は書き換えられる」ということです。

つまり、過去の思い出も、今の私のライフスタイルによって脚色されていているということ。私が弁証論治をするなかで過去のお話しを候うことが多いです(身体に関することが多いですけどね)。これも、今の状況によって変化するということですね。過去が変わるわけです。

(3)ライフスタイルの類型

ライフスタイルは一人一人個別具体的なものだと思います。ただ、ある程度典型的な分類を知っておくと目の前の人を理解するときに少し役立ちますね。実践カウンセリングに挙げられている類型をたどってみましょう。

(1) GETTER ゲッター

「他者は自分に奉使して当然」

与えることなく自分が得ることばかり考える人。とても未熟ですねえ。「自分には能力がないので、自分からは人生の課題に取り組むことが難しい」と考え、安全感信頼感を欠いた世界像をもつ。自己中心的で依存的、強欲で攻撃的。感情的。ゲッターにやりなすい環境として過保護や物の与えすぎがあげられています。基本的にどの様なライフスタイルを選択するかはその子供自身の課題ですが、親として、「よかれ」と思ったことが、「他者は自分に奉使して当然」というライフスタイルを築くことになるのでしたら、考えちゃいますね。子供には「自分には能力がある」「人々は仲間だ」と感じて生きて欲しいです。

(2) BABY ベイビー

「他者からの保護が欲しい」

ゲッターとベイビーの違いは、ゲッターの方が奉使してくれて当然と強く思っている事に対して、もう少し弱くそうあってほしいと思っていると。依存性、幼児性があること。自分の弱さを強調して周りの注目を得ようとする。

(3) DRAIBER ドライバー

「自分は優越でなければならない」という自己理想を持っている。

良くも悪くも「優越である」ために努力はする積極性がある。勝ち負けに拘わるというのは優越であるためには当たり前ですねえ。対人関係も力関係と考え、優越であるために権力を握ろうとする。こりゃなかなか大変なライフスタイルです。競争こそ全てであれば勝つことが全てでもありそうですね。ふう。

【参考文献】
「実践カウンセリング : 現代アドラー心理学の理論と技法」
野田俊作:監修 アドラー心理学研究会:編集 ヒューマン・ギルド出版部刊

注)なお、私のweb、ブログでのアドラー心理学についての記載は、私が個人的に学び、生活の中で実践し、考えている範囲での記載です。アドラー心理学そのものを正しく学びたいというご希望の方は、アドラー心理学会http://adler.cside.ne.jp/)のwebサイトなどをご覧頂き学びの道に入って頂ければと思います。

9. 夢診断

夢は未来のリハーサルと把えます。今直面している問題と、人生の目標とをつなぐ橋。夢の中で役割を演じて練習し、現実にそうなるように準備しているわけです。だから、夢はしばしば現実となります。

アドラー的に考えると、夢も「目的に向かって使われる」と考えるわけです。

ここが他の夢診断のように「過去の葛藤を解決する」ために夢をみると考えるわけではないところが特徴ですね。

夢を解釈するにはその人が直面しているライフタスクと関連づけて考えます。

たとえば、「仕事でノルマを達成してほめられた」夢をみるということであれば、ノルマが達成できるんだ、自信を持って進んでいいんだと自分に言い聞かせて安心させているようですし、「仕事でノルマが達成できずに責められて辛かった」という夢ならば、ノルマが達成できないときにはこうなるんだと心の準備をしているように考えられます。

また、アドラーは夢は感情を作り出す工場であるともしています。明日の旅行を迷っていて「やめた方がいい」というような夢をみれば、その感情にしたがいやすくなります。また逆に、乗り換えが上手く行って楽しかったという夢ならば、旅行に行く気持ちをかきたてます。感情の増幅装置みたいですね。

夢はその人の人生の文脈に出てきている事柄、言葉であらわれるために、その人の人生の流れ、言葉遣いを知る必要があります。一般論ではなかなか述べられないと言うことですね。それでも、「実践カウンセリング」のなかでは夢の小辞典があげられています。面白そうなものをピックアップしていきますね。

泳ぐ:人生を渡っていく
追われる:あせり
おかし:あまやかし、良い贈り物
金縛り:(1)問題解決は不可能に思われる。手も足も出ない。(2)自由がない、束縛されている
髪の毛:自分自身のボディイメージ
墜落:特権を失う(ことへの恐怖)失敗する(ことへの恐怖)
電車に乗り遅れる:チャンスをのがす、遅刻を口実にのがれる
不安な夢:現実生活での失敗への恐怖
夢をみない:変わりたくない、人生のことを深く考えない、現在大きな問題がない

注)なお、私のweb、ブログでのアドラー心理学についての記載は、私が個人的に学び、生活の中で実践し、考えている範囲での記載です。アドラー心理学そのものを正しく学びたいというご希望の方は、アドラー心理学会http://adler.cside.ne.jp/)のwebサイトなどをご覧頂き学びの道に入って頂ければと思います。

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