人工授精での妊娠経験があるのに、ステップアップした体外受精では妊娠すらしません。すすめられた漢方も飲みました、病院での方針に迷います。どうしたらいいでしょうかというお悩みをいただきました。
”なにもしなかったときは、すんなり妊娠反応がでたのに、
治療をすればするほど混迷するばかりです。”

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お話を伺って、『うーーーーん』と大きく唸ってしまいました。
この、努力すればするほど全く前に進まないというのは、不妊治療あるあるですね。
医療介入がないときには、するっと妊娠。ただ、残念ながら継続出来ず。
それでは、『不妊治療をして前に進もう』と思ったら、妊娠すら出来ない。
いったい不妊のための、沢山の注射、超音波、診察などなど、なんのためにしているんだろうという疑問がふつふつとわいてきてしまうというお気持ちはよくわかります。
生殖医療の原則は低い介入からだんだんステップをあげていくということです。
自然な形で妊娠しているカップルならば、ご自身の妊娠する力を信じることもとても大切です。
ただし、年齢要因が絡んでいる場合は臨機応変に、よく考えながら進める必要があります。
そんなときに、とても迷うのはよくわかるところです。
☆ご相談:治療すればするほど、かえって不妊治療が前に進みません。
36歳です。
結婚したてのころに自然妊娠しましたが継続出来ませんでした。
1年ほどタイミングをとり、人工授精をして妊娠。しかしながら化学流産。
その後、ステップアップを勧められ、IVFをしましたが妊娠すらしません。
潜在性高プロラクチン血症と診断され薬を飲んでいましたが、転院した病院では
不要な薬だと言われてしまいました。
病院によって診断が違うのにとても迷います。
クロミッドとHCGの注射をしたあとに卵巣が腫れてしまい治療が中断してしまったこともありました。
色々な薬を飲んで治療を進めてから、治療周期が28日ぐらいから26日と短くなってきてしまっています。
クロミッドやセキソビッド、hcgの注射、テルロンなどを組み合わせて、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療も含めて不妊治療を進めていましたが一度も妊娠していません。
すすめられるまま、漢方薬ものみ、体外受精もやってきているといういまの現状。
1回目は夫の精子の状態が悪く顕微授精となり上手く行かず終了
2回目はフェマーラとHMGの注射を使い2個採卵できグレードのよい卵を移植しましたが
妊娠しませんでした。
薬を飲んだり、注射をうったりなどのことをなにもしなかったときは、すんなり妊娠したのに、
治療をすればするほど妊娠すらせず、混迷するばかりです。

イラスト ツボ セルフケア
どうしたらいいのでしょうか?
☆私からのお返事:身体の力をあげて、不妊治療を前に進めましょう
治療をどんどん進めているのに、かえって結果には繋がらず、
生理周期も短く体調全体も悪くなってしまっているということで
どうしたらいいのかわからなくなってしまったということですね。
本当に辛い、悩んでしまいますね。
不妊治療というのは不思議なもので、
沢山介入すれば結果がでるというものでもなく、
かえって混迷してしまうということはよくあります
これは妊娠だけに注目して治療を進めるために、
・排卵させること、
・受精させること、
・胚移植すること
こういったことだけをみているために、かえってご自身が自分で妊娠する力を落としてしまっていることがよくあるということなんです。
☆☆お身体の状態
手足がよく冷え、冬が辛い。頭痛(目の奥)や肩こりも辛く精神的に不調。
舌が歯痕ありはんどん 両列厥ややこそげ、右の内関陥凹
心下つまりあり、左の肝の相火きつい
中カン動悸、冷えあり、左外関陽池冷え
下腿胆経突っ張りが強い、陰陵泉曲泉のラインがゆるい
☆☆不妊治療へのアドバイス:
妊娠しないと言うことでいろいろ治療をすすめていますが、そのことがかえって
全身の体力に負担となっています。その負担になんとか頑張って耐えるために気を張って身体の枠に力が入っているため、かえって妊娠に一番大切な気の昇降出入が滞ってしまっています。
35才という年齢を考えると、西洋医学的な治療を進めていくことは私も賛成です。可能性の幅を広げる事につながると思います。しかしながら過去の妊娠の状況をみると、自然妊娠の可能性もかなり高いとは思います。結局、○○さんにとっては、体外受精だけを狙う受精にまつわることが課題ではなく、身体の力そのものの不足があったために、医療介入そのものが身体の力を落とし、悪循環となっていったと思います。
一度妊娠反応がでているカップルです。必ず妊娠への道はあると私は思っています。一緒に前に進んでいきましょう。
2)食事記録をつけよう→生活見直し
3)体調がもう少しupしてから病院治療をはじめましょう。
4)男性側の課題も考えよう→精子の状態をよくすることで再度の自然妊娠も可能性ありかも

イラスト ビッグママ
☆東洋医学的なみたて
・弁証 :腎虚肝鬱オケツ
・論治 :益気補腎 疏肝理気
・治療方針
全身の器が小さいために上焦の気滞が強くなったり、フレームである胆経が突っ張りとなり全身の気血の巡りを悪くしまっている。腎気をあげることで全体の余裕をつけ、気の昇降出入が無理なくおこなわれるようにする。肝欝気滞については基本的に手をつけない。
☆治療経過
週に1-2回のペースで鍼灸治療開始、毎日の養生お灸手入れスタート
食事生活記録をつけ、食事を改善
初診:
三陰交(SP6)、右足三里(ST36) 右外関、右陽池(TE4)、大巨(ST27)、関元(CV4)
肺兪、腎兪(BL23)、気海兪、次髎(BL32)
セルフケア:右の外関、陽池(TE4)、大巨(ST27)、関元(CV4)、三陰交(SP6)、腎兪(BL23)、次髎(BL32)

イラスト ツボ セルフケア
1ヶ月後:夫が食事の変化をよろこんでくれて、食事が楽しい。
3ヶ月後:食事メニューが充実してきて夫が喜んでくれている。果物も買う習慣が出来た。
4ヶ月後、基礎体温が安定、高温期低温期の長さが十分になってきた。
6ヶ月後、もう一度人工授精での妊娠に挑戦→妊娠できず
1年半後:3回目の採卵ー空砲と未熟卵で移植出来る卵は出来なかった
2年後:4回目の採卵ー2個取れた
移植ー1個をフレッシュ胚盤胞で同じ周期に移植ー妊娠せず。残りの卵は胚盤胞にて凍結、
2年2月後:移植ー凍結胚盤胞を移植 妊娠 出産
妊娠初期に出血や不安定感は多かったが、鍼灸治療頻度を週に3−5回に上げ妊娠初期を乗り切るー無事に出産(38歳)
☆妊娠〜出産までを振り返って
一度、自然妊娠をされています。体外受精をすれば妊娠できるはずという強い思いは
わたしもとても納得できるものでした。
不妊治療は、沢山医療介入をすれば上手く行くというものでもなく、ではなにもしなければいいのかというものでもありません。
ご自身の状態を把握し、理解し、何をすれば良いのかしっかりと考え、淡々と前に進んでいく。あたりまえのことなのですがなかなか難しいことでもあります。
今回のケースでは、西洋医学的な治療にご自身の身体がしっかりとついていけるようにという後押しが無事な妊娠を支えたのかなと思います。無事に元気な赤ちゃんを迎えられてよかったね(^^)

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☆体外受精をすすめるべきか、病院での方針に迷います(38歳出産)