女性にとって、月経にまつわるお腹の痛みは辛いですね。
とくに、子宮内膜症などの婦人科疾患があると、痛みも強くなったり、時に手術が必要なこともあります。あまりにもひどい生理痛などの場合は、1度婦人科を受診しておくことも大切かと思います。
今回のケースは、卵巣嚢腫の手術もおこなわれ、子宮筋腫の手術歴がある、
骨盤内臓器の癒着が高度な事例であり、なかなか解決が難しい状況にありましたが、ご本人の努力によって妊娠、出産につながりました。
しかしながら、妊娠中も痛みが強く、出産後も再度痛みの出現があるという状況で、子育てもお辛い様子でした。
生理がある限り憎悪する子宮内膜症ですので、抜本的な解決はなかなか
難しい状況ですが、温補補腎という温めて下焦の力をつけるという鍼灸治療が
ご本人の辛さの軽減に役立ったようで何よりです。
☆ご相談:子宮内膜症の痛みがとても辛いです
子宮内膜症がとても辛いです。切除術やアルコール固定、剥離手術も受けていますがあまりよくなりません。
薬の影響で体重も増えました。身体が痛いです。右の骨盤骨折をしてから、左の太ももが痛くなり右の座骨神経痛も出ます。
第一子の妊娠中に痛みが強く入院しました。
産後1ヶ月たったころから、痛みが再発し、麻酔科などの注射で対応してもラテいますが、痛みは強く辛いです。
だるさや、疲れやすさ、肩こりも辛く子育てが辛いです。
子宮内膜症があるので次子も早めにと思っていますが、どうしたらいいでしょうか?
☆☆お身体を拝見して(東洋医学的な診立て)
重度の子宮内膜症による骨盤内臓器を中心とする気血の循環が悪く痛みの出ている状態(東洋医学的な用語で言うところの瘀血(おけつ))
生命力そのものが低下した状態なので、気血のよどみが大きく、症状が強くなっていると思われる。
弁証論治:腎虚オ血 補腎、活血化瘀
補腎をおこないながら、活血化オ(下焦におけるオケツを生じやすくなっている骨盤内臓器に対して温補、理気していく)
治療方針:腎気をあげ、下焦を中心に生命力の底上げをする
痛みの部位と思われる骨盤内臓器を中心とし、強く温補し気血を
動かしやすくしたうえで理気し活血化オしていく。
☆☆治療と経穴、治療方法
1)下腹に温灸指圧(痛みや塊のところを中心)、左外関、陰陵泉、三陰交、右の臨泣
2)大椎三角温灸、腎兪、次髎、左胃兪。仙骨尾骨の痛みの部位に温灸指圧とパイオネックス。
子宮内膜症のためか、手術のためか下腹部の攣ったような動きの悪い部分にしっかりと温灸指圧を入れることによって、下腹の血流改善を図る。
陰陵泉(足太陰脾経合水穴)この症例の場合は、非常に反応がきつく出ていました。内転筋群の付着部で骨盤内の反応と連動している可能
痛みが全般に軽減。とくにパイオネックスを並用することで持続的に痛みのコントロールがはかれるようです。

お灸 温灸 灸
三角温灸です。督脉につかいます。骨盤から頭までの背中の経絡がすうっと陽気が通じ道筋がすっきりすることで、全身の状態がよくなります。

お灸 温灸 灸
こんな感じの大きな温灸。煙が台座側にまわり、ゆっくりと温養してくれます。
☆☆経過:
本格的な生理が始まり、痛みが強くなるものの、鍼灸治療を開始し、薬物無しに痛みがコントロール出来るようになる。
痛みの部位と思われる骨盤内臓器を中心に温灸やお灸を深めにおこない、またその痛みをコントロール出来る
可能性がつよい経穴を配置し、下腹の血流をよくしていきました。
頭部、頸部、頸椎、胸椎、腰椎、骨盤、仙骨と一つの流れをしっかりとした温灸を使うことで疏通させ血液の流れを活性化させ、東洋医学でいうところの活血をおこなう。
温灸指圧法、大椎督脉三角温灸法などを積極的に用いました。
とくに、子宮内膜症のためか、手術のためか下腹部の固まったような動きの悪い部位にしっかりと温灸指圧を入れることによって、下腹の血流改善をはかりました。
☆☆結果:
動きの悪い手術痕や、子宮内膜症による血流の滞りを積極的に温灸指圧法で活性化し血流を改善させることにより骨盤部と下肢内転筋群の付着部で骨盤内の反応と連動している部位も用いたことによって全般に症状が軽減することとなりました。
とくに指示した部位に自宅での施灸をし、パイオネックスを並用することで持続的に痛みのコントロールができたのがよかったです。第二子への妊娠、出産にもぶじつなげることができました
☆☆まとめ・・妊娠の希望と子宮内膜症
生理とともに悪化する子宮内膜症は妊娠を希望する方にとっては手強い疾患です。
痛みの軽減に生理を止めると言うことは排卵を止めてしまうので妊娠が出来ません。
また、子宮内膜症によって卵巣嚢腫などの問題を引き起こせば妊孕力の低下となります。
チョコレート嚢胞などで手術をすればダイレクトに卵巣の問題が大きくなります。
妊娠の希望があれば薬物の投与はあまり進められないようですね。鍼灸や温灸療法での
コントロールで、なんとか妊娠ー出産にこぎつける症例は多いです。
エストレゲンの依存性疾患ですので、抜本的な解決は妊娠希望の方にとってはなかなか
難しいのですが、暖め養い生命の賦活化をおこなうことを取り入れていきましょう。

イラスト ツボ セルフケア