カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代前半 不妊 二人目不妊 冷え・のぼせ

胎盤形成時期への鍼灸アプローチ。しっかりとした胎盤と3000グラム越えの赤ちゃん(33歳出産)

概要

二人目不妊。第二子を希望して3年が過ぎますが、なかなか妊娠出来ません。第一子の出産後、3回ほど妊娠しましたが、化学流産も含めすべて流産してしまっています。強い冷え性。しもやけ。冷えるのにのぼせます。
【case:0327】

ご相談内容

「流産を繰り返し、なかなか妊娠が継続出来ません。また最近は妊娠そのものもなかなか成立しにくくなっています。どうしたらいいでしょうか?」

35才です。第一子は妊娠を希望してほどなく自然に授かりました。第二子を希望して3年たちます。その間に流産を2回、化学流産を1回しています。病院ではよくあることといわれ、特段の問題を指摘されず、様子をみていますが、この1年は妊娠すらできなくなっています。

第一子は途中から妊娠中毒症に近い症状が出現し、いろいろなトラブルがありましたが、病院の対応もよく、なんとか無事に少し小さめの赤ちゃんを出産することができました。

足はとても冷えて、身体の芯から冷える感じがあります。またしもやけもできます。風呂上がりや、寝入りばなに急にぐっとした冷えを感じることがあります。この半年は特に冷え感がつよく、足首、腰の冷えを強く感じています。ふとしたきっかけでおこった肩の痛みもなかなか治らず、なんだか体中がぎくしゃくしているかんじです。

早く妊娠したいと思っています。また妊娠したら流産をせずに生みたいと思っています。どうしたらいいでしょうか?

東洋医学的診立て

なかなか第二子の妊娠にいたらない。また妊娠しても流産が多いというお悩みですね。流産も何度もなさり、小さなお子さんを育てながらの日々は大変だったと思います。

東洋医学的なお体の状態を拝見しますと、
1)身体の土台となる底力(腎気の力)が不足気味であること
2)土台の力が不足気味であるので、身体が気を張って頑張って日々を過ごそうとしているので、気の鬱滞状態を招いている。

つまり、土台の力不足(腎気不足)があることそのものがまず妊娠を主る女子胞(子宮)の力の不足となります。

その上で、土台の力不足だと、全身の生命活動を支えるために、気を張り頑張って身体は生命力を偏らせて日々を過ごしていきます。必要とされるところに集まり、その集まりがなかなか解消されないという状態になるのです。

土台の力不足と気の停滞は、上実下虚という、身体の上部はのぼせがちなのに、足腰は冷えているという状態を引き起こし、より妊娠を遠ざけます。また、この足腰の冷えが、妊娠の継続も妨げる原因となります。

東洋医学的弁証論治
弁証:陽虚を中心とした腎虚 肝鬱 心熱 
論治:温陽補腎 疏肝理気、
治療方針:基本的に温陽補腎を中心とするが、上焦に熱が籠もりがちになることが多ければ理気、清熱も適宜加えていく。

不妊カウンセリング
流産の回数や、第一子の妊娠中の途中経過から、不育症の検査を受けることも検討してもよいのではないか。不妊治療そのものは、もともと妊娠する力がありますから、あせらずに半年ほどは体調をあげることに専念しましょう。年齢要因もありますので、36才ぐらいを目処には体外受精などを考えてもいいのかと思います。

治療経過

初診:
1:右足三里(鍼+お灸)、左陽池、外関、復溜(鍼+お灸)照海、太谿温灸、中脘、気海温灸
2:身柱温灸
3:左三焦兪、右胃兪、腎兪 次髎 
自宅施灸指示:右足三里、復溜 左外関、陽池、中脘、気海

週に1度の鍼灸治療。
6ヶ月ほどで自然妊娠。週に3回の施術に切り替え、しっかりと毎日、朝晩、棒灸をするように指導。

無事に出産。助産師さんから非常に立派な胎盤とほめられ、第一子の時よりも大きい3000グラムを越えた赤ちゃんを無事に出産。第一子の時は出産後の自分の体調が非常に悪く辛い時間が長かったが、今回は子供が大きいのに、自分の体調は非常によかった。

妊娠初期の手入れがこれほどまでに、赤ちゃんや出産の経過に影響するものなのかと驚きましたというメールを出産報告と共に頂きました。

あとがき

無事に妊娠、そして心配なさっていた流産をすることなくのご出産に繋がり本当によかったなと思います。

また、メールで『この子は肌つやもよく、ちょっと小さめの第一子の1ヶ月検診の時の大きさで生まれてきてくれました』という報告は印象的でした。第一子と第二子の体重の差が700グラム以上あったということです。

妊娠初期の胎盤形成期をしっかりと鍼灸でケアすることは、妊娠の経過そのものを安定させますし、また充分な大きさで赤ちゃんが生まれてきてくれるということは、赤ちゃんそのものにも大きなプレゼントになりますし、お母さんにとってもとても育てやすいと思います。

『胎盤がしっかりと大きいと言われました』というお声は本当に多くの患者さんの出産報告で頂いています。

はじめは、無事の出産の結果だなと思っていたのですが、妊娠初期の手入れをしっかりとなさった方からそのお声が多く聞かれることに気がつき、『胎盤形成時期の鍼灸治療』のよさを実感しています。

妊娠初期の手入れは、妊娠が継続出来ない方や、流産を繰り返しているという方におこなっていましたが、結果的にそれが、『しっかりとした胎盤作り』につながり、流産の危険性を下げ、充実した胎盤から栄養をしっかりと受け取れる環境で育つ赤ちゃんという流れになってきていると思います。