弁証論治:

0041:低血糖(めまい、動悸、過呼吸)の弁証論治

・問診

機能性低血糖症というのは医学用語ではないようですが、疲れやすさ、気力の低下、眠気、不安、イライラ、めまい、発汗、動悸、甘いものに対する強い欲求、異常な空腹感などの症状を、血糖の大きな変動による低血糖症と結びつけて考えているドクターもいらっしゃるようです。 東洋医学では、低血糖症(機能性低血糖症)そのものを分析することはしません。しかしながら、四診を通じ、ご本人からの愁訴、食事の問題、そして食事にまつわる体調の変化からこのような問題も考えることが出来る可能性を感じております。 今回の症例は、ストレスによる発作的な過呼吸、めまい、動悸の症状に端を発し、継続する心身の状態に対して、鍼灸治療と、ご本人のタンパク質不足、甘味への過度の偏り、血糖値の変動などを意識し食生活へ取り組んだことによって、身体自体がかなり安定した状態になっていった症例です。

28歳女性 155センチ45.5キロ

主訴:低血糖(めまい、動悸、過呼吸)

主訴は夕方辛く、イライラしたときや空腹になってきたとき、緊張したときに辛い。
最近(ここ1,2週間)増えている感じがする。
24歳の時に会社で上司が替わりストレスがマックスだったときにおこったことがある。

症状は夕方の空腹になってきた16時から18時頃によくおこる。
気を使ったとき、緊張したときにおこる。
症状は手足ががくがくする、頭がクラクラする。
ひどいときは一気に血の気が引いてきて冷や汗、しびれが出る。

24歳の症状発症時に、肉体的な無理、精神的な無理をしていた。
上司がかわり仕事環境が細かく厳しくなったことで発症した。

自分ではこの症状はストレスや偏食でおこっていると思う。

今回の症状が出現した24歳のころから、
 1)歯ぎしりがひどくなり、歯が薄くなってしまったために夜寝るときにはマウスピース着用。
 2)身体全体に力が入っている感じ。
 3)動悸、のぼせ、ふらつきがある。
 4)昼ご飯を食べたあと(14時から15時頃かなり眠気がくる。昼寝すると1時間半ぐらい寝てしまう)
 5)全体の体調の変化に合わせて、主訴も変化する。

症状が発症時、ストレスからの体調不良でということで病院にて薬をもらい、その後、色々な症状が出て低血糖もその一つと言われた。初期のころは効果的であり、今は安定傾向でまあまあな感じで経過している。

夕方、気を使ったあと、睡眠不足の時に体調が悪い。
風邪を引くと、喉痛、発熱、左右の頭痛、
食欲については大食から普通(友達には以外と大食いと言われる。人よりよく食べる)
食欲は若いころよりも増えている
食事時間は規則的で夜食なし
空腹感があり、少し噛んで飲み込むことが多い。食事は美味しい、
胸焼けおなかの張りはない。
間食は毎日。
主訴が発症当時に24歳頃はとにかく甘いものが好きで、ご飯よりもスイーツで満たしていた。大学生から社会人まで昼食は菓子パン2コ。
治療院に来た当時は甘いものはシュークリームプリン煎餅大福ケーキ。
現在の間食はアーモンドやチーズ
飲み物は1000cc程度
以前はウーロン茶や紅茶(800cc)、いまはルイボスティーなどノンカフェイン。

口舌の乾きはよくある。
便通は1-2日に一回、おなかが張って辛いことはめったにない、薬の服用もない、
出きらない感じはめったにない。軟便やバナナ。便器に付着することがよくある。
小便は1日3,4回残尿感、尿切れの問題などはない。夜間尿もない

寝付きはよく、夢をよくみる、寝起きは普通、翌日に疲れが残ることはよくある。

初経は11歳
周期は28日6日間規則的
生理前早いときには10日から2週間、だいたいは1週間前に
 イライラ、ニキビ(いつもよりさらにひどくなる)、火照り(へそから逆上して汗をかく)
 クラクラする、動悸、精神的な症状(気分がはれない、すっきりしない、不安感)

生理前日に下肢の痛み、吐き気
排卵時の体調の変化は気がつかない

生理になると気分がすっきりとする時もあるし、しない時もある。まちまち
生理痛は何ヶ月に1度程度のすごく軽い痛み、ほぼ初日のみに下腹部が押される感じ

生理の色は濃い、小さな塊を含む、初日2日目に多い、初日からドバドバ出ることもあるが、最初は茶色っぽい血が出て1日たってから出ることもある。

・時系列の問診

小学校のころ、ところてんダイエットに挑戦 体重が変化するほどではなかった

中学校のころ 42キロぐらい ぽっちゃりしていてダイエットしたかった。
   高校まで、少食にしたり、おかずを極端に少なくしたことがある。
   ただ、体重は変わらず、生理も不順になるほどではなかった。

大学のころ、
   痩せた女性の方がよいという意見で、頑張ってダイエット。一番痩せたころは
   体重が38(BMI15.8)キロまでになった。まわりから『どうかしたの?』といわれるほど痩せていたが、自分としてはさほど体調の変化は感じなかった
   一番体重が落ちたころから下あごからほほにかけてニキビが出始める。

22歳 体重は今と同じぐらい(40.9キロBMI17)仕事をはじめる かたこり、首の凝り(気力がないと症状がアップ)

23歳 仕事のストレスにより、スイーツを中心にストレス食いが加速。
   その後、仕事上の大きな精神的なストレスから過呼吸になり、
   その後ずっと目まいなどが出てきてしまった。
   全身のしびれ、過呼吸 めまいが続く

24歳 投薬治療を受ける 症状少し落ち着く
   めまいは疲れたときに出る
   過呼吸はなくなり、発作的なものもなくなった

26歳
  3月 生理前に寝汗がでるようになる

26歳 
 10月 結婚
   きちんとしっかりと家事をこなそうと、頑張りすぎた
   きっちりやろうと意識しすぎて寝る時間がおそくなったりして調子が悪くなってきた。

 1月  薬を半分に減らしたら過呼吸、めまいが強く出て、薬を戻す。
   船酔いのような波に揺られている感じがある。
   気力があまり出ない、身体全体に力が入っている感じ、こわばっている感じがある
   空腹感があまりない

   薬を飲んでいれば普通に生活できていたが、1月から薬を半分にしたらまたダメに なって、今は薬の量を戻して様子を見ている感じ。
人混み、外出、美容院などで症状悪化する    

27歳 
 3月 ビッグママ治療室受診 体重40.9キロ(BMI17) 20代を通して変化なし
   空腹感が結構でてきた。
   スイーツを控える。 週に1,2回の鍼灸治療の開始

 10月 食生活の中で、とくにタンパク質の摂取を意識する。体重が増え始める

28歳 
 1年経過後の4月
   体重増加45.5キロ(BMI18.9) 身体に自信が出てきた

 1年前に比べて呼吸が苦しいは少し減った
 過呼吸は出そうになるが止まるので出ていない(生理の前に結構感じる)
 めまい、動悸はあまり変化がない。
 生理の寝汗は出ている、変化がない
 最近、生理の1,2日目に不安感、あせり、火照りがある
 1年前にあった、脱力感や無気力感はあまりない
 喉の違和感は最近ない、昔は考え事や悩み事をするとよく感じていたが今はない
 便の状態が安定、便秘なし、コロコロなし、量も出る
 1年前は、『あと5分寝ていたい』という感じが毎日、いまはすんなりおきれる

1年前の問診票のよく食べるもの  鶏肉、豚肉、白米、根菜類、果物、スイーツ  好きなものは鶏肉、キムチ、漬け物全般 嫌いなもの特になし  飲み物は紅茶、ウーロン茶 今回の問診表のよく食べるもの  玄米 ベーコン、味噌汁、レタス、トマト  好きなものは漬け物全般、醤油味のもの、せんべい、肉 嫌いハム、ソーセージ、魚肉製品  飲み物は、ルイボスティー

ご本人に確認事項―1年前の初診時と比べて

この方は1年前(2010年4月)が初診です。初診時の問診表と今回の問診表の違いなどから質問をさせていただきました。

1)1年前の問診から体重が増えていますが(40.9キロから45.5キロ)これは食生活を代え、スイーツを控え、タンパク質をしっかりと摂取したことでの変化でしょうか?

 スイーツを控えたのは治療院に来たとき(1年ぐらい前)からです。タンパク質を意識し始めたのは半年ぐらい前から。昼食をしっかり採りようになって増えたのかも。肉サラダか大豆、米を昼食でたべています。体重が増えてから少し身体に自信がついた感じ。

2)1年前の問診表にある、呼吸が苦しい、めまい、動悸、過呼吸の頻度は、それぞれどんな感じで変化していますでしょうか?

 呼吸が苦しいは少し減ったかも
 過呼吸は出そうになっても止まる(なので出ていない!?)生理の始まる前には結構感じる
 めまい、動悸は余り変化がない

3)低血糖症ということを意識したことで、以前からあったご自身の症状が、食事との関係がある(食後の眠気、空腹時に頭のクラクラ、冷や汗、しびれ、手足ががくがくなどが出る)ということがわかったということでしょうか?

 わかりました。
 きっと過去に何度かあった大きな発作も、多分関係していると思った。

4)1年前の問診票にある生理前の寝汗、生理時の頭痛、生理前の吐き気は変化していますでしょうか?

 生理前の寝汗は出ています。変化なし
 生理時の頭痛、吐き気は月によってそれぞれ。一概に断言できない
 最近は生理1,2目に不安感、焦り、火照りもある

5)1年前の問診票にある、気力があまりわかないという感じは変化していますでしょうか?

 1年前は薬を減らしていたのが大きく関係していたと思いますが、今は脱力感や
 無気力感はあまりない。ただ、低血糖症からか眠気はよくある。
 (食事の時に50回噛むようにしたら、眠気が少なくなってきた)

6)1年前の問診票では、口や舌の乾きがよくあり、喉の違和感が時々あるとありますが、現在はいかがですか?(現在の問診票には口の渇きはよくあるとありますが、喉の違和感などのことは書かれていません)

 もともと塩気のある辛いものが好きだったので、そういうものを食べたあとは当たり前だけど乾きがあった。あと、水を飲むと落ち着く感じがして、よく飲んでいた(ただなんとなくの感覚で)

 喉の違和感、最近はない。
 言われてみると最近はない。昔は考え事や悩み事でよく感じたが、今はない

7)便の状態ですが、以前は、太い、細い、コロコロ、軟便など日によって違うということでしたが、いまはコロコロはあまりないという感じでしょうか?

 昔は便秘でコロコロの時もあったが、今は便秘がほとんどなし。
 玄米のせいかも。量も結構出る

8)以前は寝起きが悪いとありますが、現在は普通とあります。寝起きが少し良くなっている感じでしょうか?

 以前は『あと5分寝ていたい』という感じが毎日のようにあったけど、最近はすんなりおきれている感じ。(よく噛んで食べているからかも!?)

・体表観察

・・舌診
少し歯痕あり 淡紅から淡白 やや怒脹アリ

・・脉診
右尺やや固い 浮いている
左寸口やや輪郭が甘い

・・腹診
中脘から下脘にかけて動悸
気海 関元 抜け
臍正面を向いている(1年前は上向き)
臍周盛り上がり、中注つっぱり

肝の相火あり 右>左
右裏の肝の相火あり

心下上、季肋部の部分に湿痰のノリあり
左右少腹急結なし

・・経穴診
内関陥凹 右<左
右太淵 はれ
左合谷 陥凹
左外関 動き悪い
右後谿陥凹
神門はれ 硬結
ニキビは下顎から両ほほにかけて。

・・背候診
左膵兪 陥凹
左肝兪 胆兪 筋張りばらけている
右肝兪胆兪 陥凹
筋縮詰まり
左右脾兪 筋張り(右は奥に陥凹が柔らかく広がっている)
左右三焦兪 脾兪から広がる筋張りの根となり陥凹
右腎兪陥凹
右次髎つまり

・五臓の弁別

・・肝
主訴は夕方辛く、イライラしたときや空腹になってきたとき、緊張したときに辛い。

24歳の時に会社で上司が替わりストレスがマックスだったときにおこったことがある。
24歳 歯ぎしりがひどくマウスピース
24歳 身体の力が入っている感じ 動悸のぼせ ふらつきの出現

気を使ったとき、緊張したときにおこる。
症状は手足ががくがくする、頭がクラクラする。
ひどいときは一気に血の気が引いてきて冷や汗、しびれが出る。
夕方、気を使ったあと、睡眠不足の時に体調が悪い。
生理になると気分がすっきりとする時もあるし、しない時もある。まちまち
喉の違和感、
 最近はない(言われてみると最近はない。昔は考え事や悩み事でよく感じたが、今はない)
舌 やや怒脹アリ
臍周盛り上がり、中注つっぱり

肝の相火あり 右>左
左肝兪 胆兪 筋張りばらけている
右肝兪胆兪 陥凹
筋縮詰まり
○大学生のころ、体重が38(BMI15.8)キロまでになった。まわりから『どうかしたの?』といわれるほど痩せたが自分では体調の変化感じず
○23歳 仕事のストレスにより、スイーツを中心にストレス食いが加速。
○現在便の状態が安定、便秘なし、コロコロなし、量も出る

・・心
左寸口やや輪郭が甘い
内関陥凹 右<左
右後谿陥凹
神門はれ 硬結
心下上、季肋部の部分に湿痰のノリあり

・・脾
主訴は夕方辛く、イライラしたときや空腹になってきたとき、緊張したときに辛い。
夕方の空腹になってきた16時から18時頃によくおこる。
症状は手足ががくがくする、頭がクラクラする。
自分ではこの症状はストレスや偏食でおこっていると思う。
昼ご飯をしたあと2,3時間ぐらいのころにかなり眠気がくる。昼寝をすると1時間半ぐらい寝てしまう
食欲については大食から普通(友達には以外と大食いと言われる。人よりよく食べる)
空腹感があり、少し噛んで飲み込むことが多い。食事は美味しい、
胸焼けおなかの張りはない。

間食は毎日。
主訴が発症当時に24歳頃はとにかく甘いものが好きで、ご飯よりもスイーツで満たしていた。大学生から社会人まで昼食は菓子パン2コ。
治療院に来た当時は甘いものはシュークリームプリン煎餅大福ケーキ。
現在の間食はアーモンドやチーズ

便が便器に付着することがよくある。
1年でタンパク質を意識し、昼食をしっかりとるようになり体重が5キロ増え、身体に自信がついた
食事の時に50回噛むようにしたら、眠気が少なくなってきた
水を飲むと落ち着く感じがして、よく飲んでいた(ただなんとなくの感覚で)
最近便の状態が安定、便秘なし、コロコロなし、量も出る

ニキビは下顎から両ほほにかけて。
中脘から下脘にかけて動悸
心下上、季肋部の部分に湿痰のノリあり
左膵兪 陥凹
左右脾兪 筋張り(右は奥に陥凹が柔らかく広がっている)
○小学校のころ、中学校のころダイエット経験、体重や生理の状態は変わらなかった
○一番体重が落ちた(20歳38キロ)ころから下あごからほほに書けてニキビが出始める。
○23歳 仕事のストレスにより、スイーツを中心にストレス食いが加速。
○現在 体重増加45.5キロ(BMI18.9) 身体に自信が出てきた
○現在 過呼吸は出そうになるが止まるので出ていない(生理の前に結構感じる)

・・肺
右太淵 はれ
左合谷 陥凹
○一番体重が落ちた(20歳38キロ)ころから下あごからほほに書けてニキビが出始める。
○現在 1年前に比べて呼吸が苦しいは少し減った
○現在 過呼吸は出そうになるが止まるので出ていない(生理の前に結構感じる)

・・腎
主訴は夕方辛く、イライラしたときや空腹になってきたとき、緊張したときに辛い。
夕方の空腹になってきた16時から18時頃によくおこる。
症状は手足ががくがくする、頭がクラクラする。
夕方、気を使ったあと、睡眠不足の時に体調が悪い。
小便は1日3,4回残尿感、尿切れの問題などはない。夜間尿もない
寝付きはよく、夢をよくみる、寝起きは普通、翌日に疲れが残ることはよくある。

生理前高温期に、イライラ、ニキビ 火照り(へそから上逆して汗をかく)クラクラ、動悸精神的な症状
生理前日に下肢の痛み、吐き気
生理になると気分がすっきりとする時もあるし、しない時もある。まちまち
生理前の寝汗
生理1,2目に不安感、焦り、火照りもある

水を飲むと落ち着く感じがして、よく飲んでいた(ただなんとなくの感覚で)
 以前は『あと5分寝ていたい』という感じが毎日のようにあったけど、最近はすんなりおきれている感じ。

右尺やや固い 浮いている
左外関 動き悪い
気海 関元 抜け
右裏の肝の相火あり
左右三焦兪 脾兪から広がる筋張りの根となり陥凹
右腎兪陥凹
右次髎つまり

○小学校のころ、中学校のころダイエット経験、体重や生理の状態は変わらなかった
○大学生のころ体重が38(BMI15.8)キロまでになった。まわりから『どうかしたの?』といわれるほど痩せた
○一番体重が落ちた(20歳38キロ)ころから下あごからほほに書けてニキビが出始める。
○26歳生理前に寝汗はじまる(今も変わらず)
○現在 体重増加45.5キロ(BMI18.9) 身体に自信が出てきた
○現在 1年前に比べて呼吸が苦しいは少し減った
○最近、生理の1,2日目に不安感、あせり、火照りがある
○現在 1年前にあった、脱力感や無気力感はあまりない

・・気虚
舌 少し歯痕あり 
中脘から下脘にかけて動悸(動悸が表面に感じるということで、気虚の可能性)

・病因病理

1年前より、当院を受診され週に1,2回の鍼灸治療を継続している。
今回、問診表を再度記入していただいた。

10代のころより、なんどかダイエットに挑戦している。
特段太っているわけではなく、痩せたいという希望で、かなり食を偏らせていた。
しかしながら、そういった食生活でも体重は変動することなく、また無事に11歳で天癸がいたり、初潮となり、その後も体重、生理の状態は食生活が偏っても変化はなかった。腎気が割合としっかりとしているために、ご本人の肝気にまかせの脾気への偏りも、受け止めることができ、器はしっかりと成長し、天癸も迎え、体重の変化もなく過ごせていた。

大学生のころ、友達からの指摘により、本格的なダイエットを行い、 体重が減り、38キロ(BMI15.8)までになった。顏にニキビが出来るようになり、まわりから 大丈夫?と言われるほどの状態であったのに、ご自身でダイエットをするという意志があり強く肝気を張っていたため体調の変化は感じなかった。

それまでは脾気に負担をかけても、器には変化なくすごしてきたが、今回の本格的な ダイエットでは、脾胃に強く負担をかけ、体重が減少、器が小さくなったために内熱が発生しやすくなり、強い肝鬱(意思の力)もあったため上焦の胃経にそってニキビが発生するようになった。

ダイエットをやめたことで脾気は回復し体重は戻ったが、腎の器には少しもろさが残り、こののちニキビは発生しやすくなっていった。

22歳、仕事をはじめる。気力がなくなると肩こりを感じる。肝気を強く張って生活しているので、肝気を張ることが出来ていると体調不良を自覚しないが、肝気が中折れてしまいやる気がでないほどになると、一気に体調の状態を自覚するという状況であった。肝気が中心の生活である。

23歳のころ、仕事上のストレスが増え、スイーツを中心にストレス食いが加速。肝鬱による脾気への負担の増加である。腎気に少し残ったもろさの上に、脾気を落としながらの日々のちに、強い大きなストレスにより肝気が暴発、主訴が発症している。

肝気の暴発は、上焦を犯し、めまい、肺気をつき過呼吸の発作、心をつき動悸を生じ、また強い上逆であったため四肢末端は気虚をおこし全身のしびれとなった。これにより腎の器をひとつ小さくすることとなった。(この段、もっと陰陽関係を明確に細かく書くならば、脾気のバックアップが少なく肝陰、腎陰の根がよわっているところに、肝気が暴発し、肝陽が上焦であばれ、内風によるめまい、肺に逆気を起こし過呼吸の発作、心陽を高進させ動悸、上逆に全身の気が傾いたため、四肢末端では逆に気虚をおこし、全身のしびれとなった。これにより腎の陰陽両虚をおこし、器を小さくした)

投薬により、肝気の暴発は納まり、精神的に落ち着き、大きな発作などは出現せず、日常生活にも特段の問題は生じなくなった。しかしながら、腎の器をひとつ小さくしてしまった状態であったため、日常を支えるためには肝気をよりしっかりと張っておく必要があり、身体はこわばっている感じになり、歯も強く食いしばりマウスピースが必要なほど歯が薄くなってしまった。

日常的には落ち着いていたが、器を補うことはなく、肝気を張ることでカバーしていたため、腎気には負担が掛かり続けたため、生理の傾きを支えきれなくなり、26歳では生理前の高温期に寝汗が出るようになった。

26歳で結婚し、しっかりやろうとより肝気をさらにたてて生活することで腎に負担がかかり、全体の調子が悪くなっていくなか、服薬を半量にしたために再び肝気の強い上逆が発生、過呼吸、めまいが強く生じてしまった。服薬を戻し日常生活を取り戻すものの、人混み外出美容院など肝気をはるときには、腎気が支えきれず、症状が悪化している。

27歳で、週に1,2回の鍼灸治療、自宅でのお灸、同時にスイーツを控えるなどの食事指導を受ける。これにより、食事前の空腹感がでるなど、まず脾気が回復していった。また、半年後からは、積極的にタンパク質の摂取も意識することにより、体重も増加し始めた。

1年間の食事療法と鍼灸治療により、脾気が安定し、器もそれなりに補われた。このことにより

 肺気が安定し、呼吸の苦しさが少し減少。
 肝気の強い上逆も納まり過呼吸が出そうな感じはあるものの出ない。
 器の安定により、肝気の中折れがなくなり、脱力感や無力感がでることがなくなった。
 肝気を強く張る必要がなくなり、鬱滞することもなくなったので喉の違和感がなくなる。
 脾気の安定により便通の状態が安定。
 強い肝気を張り続けることがなくなり、腎への負担が減ったため、あと5分寝ていたいという
 疲労感がなくなった。

鍼灸治療で、肝気の負担をとり、脾気を健やかにすることと、スイーツをやめたことで、脾気がたちなおり、その上で、タンパク質を摂取することで器自体が充実の方向に向かった。もともと脾気が案外しっかりとしているため、タンパク質の摂取が脾気に負担にはならず器の充実となっていくことが出来たと思われる。

しかしながら、腎の器そのものへの回復には、まだ不足し、充分に補われ立ち直っているとはいえないため、肝鬱がつよくなるとめまい、動悸などは出現、腎気の弱さのため生理前には寝汗が生じている。3月の地震以来肝気を張ることが続いており、このところ生理の1,2日目には不安感、焦り火照りなどの症状が出現している。また腎の器への大きな負担がきっかけとなったニキビも続いていることより、内熱の生じやすさも変わらず継続しているものと思われる。

・弁証論治

弁証: 腎陰虚を中心とする腎虚
    肝鬱

論治: 益気補腎 疏肝理気

・治療指針

ご自身での食への養生がとても効果的に脾気の回復を促しているので、 鍼灸治療においては、ご本人のまじめな性格により生じる強い肝鬱を適宜理気し、 器への負担を軽くし、腎気をたて器が安定し補われていくことを目指す。

・生活提言

この1年のまじめで強い意志をもった食生活の改善と、しっかりと鍼灸治療を継 続なさった ご自身の努力のたまもので、身体作りは大きく前進できたと思います。

ストレスから生じた過呼吸などの強い発作は(肝の鬱熱による暴発)、身体の土 台の力(腎の力)を大きく損ねてしまい、身体の内側に熱(陰虚熱)が生じやす くなってしまい、薬でのコントロールが継続的に必要となっていらっしゃったと 思います。

この内側の熱(陰虚熱)はなかなかやっかいで、精神的なストレスでも高ぶり暴 れますし、ご自身の緊張感などでも気が高ぶると暴れます。また、土台の力が疲 労などで弱(陰虚)るとより高ぶってもしまいます。緊張や疲労などで症状が重 くなることがよくわかります。

薬はとても有難いものです。

こういった内熱をどうにか押さえてくれ、日常生活を無理なく送れるようにして くれています。

しかしながら、身体の内側の熱も、ご自身が生きていく『生命力』そのものでも あるのです。

ですので、内側の熱は押さえ込むのではなく、内側の熱をしっかりと支えられる 生命の土台を作ることが、とても大切なのです。東洋医学でいうところの、脾腎 の状態を良くしていくということです。脾腎の脾は胃腸の力。これはいまのご自 身の努力が充分に実を結んでいます。そしてもうひとつの腎は生命力の土台で す。胃腸の力は腎気も増強していきます。脾腎の力を養っていきましょう。

また、人間は『生きる意思』をもって生活しています。これを東洋医学の世界で は『肝気』といいます。食事のコントロールがしっかり出来るのも、ご自身の意 志の強さ、肝気の力です。胃腸の状態がよくなり、脾の力は回復し、だんだんと 身体がしっかりとしてきたのはご自身の良好な意思の力、肝気の使い方であると 思います。

しかしながら、この肝気の力は、ストレスともあいまみえます。同じ出来事で も、強くストレスとなるのは、ご自身の性格的なきまじめさでもありこれが肝気 の暴発とつながったり、身体の緊張感へとつながるのです。ご自身のしっかりと した、そして真面目な『肝気』は、強い味方にもなりますし、自身の内側を破壊 する刃にもなります。上手なコントロールが求められるところです。

地震などの影響で少し肝気が高ぶり、身体の土台である腎気に少し負担がかかり 辛さが若干生じていますが、この1年上手に身体作りが出来たことで、良い状態 でコントロール出来ていると思います。

まだ20代という若さです。いまのような上手なコントロールが続けば、きっと充 分に回復出来ると思います。22歳ぐらいの程度にまで戻り、生理という身体の中 におこる波も乗りこなせるようにしていきましょう

・その後の経過

その後、穏やかに経過し、いろいろなトラブルもそれなりに対処。大きな心身への負担 となることもなくなっていった。住環境が大きく変わったり、生活環境の変化もあった が、食事と運動、生活のリズムがご自身の日常となり落ち着いた経過をとるようになっ た。

2012年終わり頃、無事に3500グラム弱の赤ちゃんを30歳にてご出産。 おめでとうございます(^^)。