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不妊相談:「必要十分な鍼灸、養生の量」で妊娠へつながった症例0136

不妊治療において、身体作りや養生がとても大切です。

確かに高度生殖医療などが決め手となることも多いと思いますが、
逆に言えば、何度高度生殖医療をしても、”卵の質が悪い” ”良好胚を移植しても妊娠しない”
”着床しても継続出来ない” ”原因はない”のに妊娠できないというように、西洋医学的な
医療介入が結果につながらないことも多いのが現実です。

こういったときに、養生や身体作りがとても大切となります。
鍼灸治療自宅養生睡眠漢方薬などその必要量をしっかりと満たすことで、妊娠、出産につながることがよくあります。

この症例のYさんは、”やるべきときに、やるべきことをしっかりとやる”ことを気負わず出来る
素晴らしい女性です。そして、これぐらい”十分な刺激量でおこなう”ことが大切なのかが
わかる症例となりました。

当院での治療方針がかわったわけではなく、ご本人が身体作りのための養生としての刺激量を『ある程度』から『必要十分な量』まであげることで結果につながったということです。

 

さて、Yさんの物語の世界の扉をあけましょう

☆ご相談:妊娠できません、どうしたらいいでしょうか?

32才です。
30才から妊娠したいと思い不妊クリニックにて治療を受けてします。
検査などをして取り立てて原因になることはないと言われています。

20代後半から仕事が忙しくなり体調がぐっと悪くなった気がします。
血圧も低く(60−90)、生理周期も伸びてしまい、疲労感が残るようになりました。
転職し、仕事は楽になったものの通勤距離が伸びてしまい体調は回復していません。

早く子供を授かりたいと思っています。どうしたらいいでしょうか?

 

☆不妊カウンセリング 身体作りの提案

病院での検査では問題ないと言われながらも、なかなか妊娠しないというお悩みですね。

妊娠には、生命力の余力が必要です。つまり身体にそれなりの余裕があって初めて成立するわけです。

ただ、女性のタイプにはふたつあります。
1)余裕がないから次の世代で!タイプ。
このタイプは、ご自身の身体に余裕がないとかえって次の世代にいきましょう!というスイッチが入る方です。母体側がどうであれ次の世代を生み出そうと身体のスイッチが入ります。

2)余裕がないから、生殖は少しお休み
このタイプは、ご自身に余裕がないと生理の周期が伸びたり、なかなか妊娠しなくなるなど、いまが余裕がないから生殖などは後回しでというタイプです。

Yさんは、

2)の余裕がないから生殖まは少しお休み、いまが精一杯で生殖まで手が回らないから、妊娠はちょっと待ってね

という身体のタイプだと思います。

お話しを伺いますと、日々のお仕事、生活、趣味などがとても盛りだくさんですね。30代前半、一番充実した世代ですから納得の出来るところです。しかしながらお身体を拝見しますと、

・踵に感じる冷え
・関元(CV4)、腎兪(BL23)、大腸兪(BL25)、湧泉など生命の余力を示す経穴が力がない。
・生理周期のおくれ、生理の塊、舌の瘀斑、少腹急結、歪舌
・大椎の冷え、陶道の発汗

上記などから、素体の弱りがあり、気血の巡りが悪いこと、そして滞りが少し病的に変化しはじめ瘀血という東洋医学で言う血の滞りを感じさせるポイントも出現し始めているという状況です。

30代前半、お若いです。
しっかりとご自身の養生に取り組み、不妊治療を一歩前にすすめましょう。

私からの提案をしますね。

患者さんへの提案:
1)週に1度以上の頻度での鍼灸治療
2)毎日の自宅施灸
3)十分な睡眠
4)漢方薬の服用

漢方薬は薬局や専門病院への受診をお勧めします。
私がYさんだったら、生薬タイプの八味地黄丸などを選ぶかなと思いますが、具体的なところは、薬局や専門クリニックで相談してみて下さいね。

東洋医学的な見たて。
腎虚 肝鬱瘀血
益気補腎 疏肝理気 活血化瘀

治療方針、まず第一に腎気をあげることを中心の課題とする。
瘀血や肝鬱は、腎気がたつことによって解消しない場合には手を加える。

治療経過:妊娠にたどりついた2段階の道のり

初診:
左外関、三陰交、右臨泣 復溜 中注 関元
大椎温灸 腎兪(BL23)、大腸兪(BL25)

外関ー臨泣: 少陽の枢をたて、腎の陽気をアップさせる。
復溜 中注 関元:  腎の陽気をアップさせる
大椎:肺気を救い、腎への負担を取る
腎兪(BL23)、大腸兪(BL25) 腎気をアップさせる

 

初診から3ヶ月目までの様子と結果
やったこと:
・1から2週間に1度の鍼灸治療を受ける
・2,3日に一回程度 ウチダの八味丸Mを服用
・時々自宅施灸
・夜の1時過ぎに寝る。

結果:朝の目覚めがよい、17日かかっていた排卵が13から14日目でおこる。夕方に疲れを感じない。
:体外受精では1個しか採卵できず移植するも妊娠できなかった。

4ヶ月目以降、10ヶ月目の様子と妊娠につながった結果
やったこと:
・週に1度以上の頻度で必ず鍼灸治療を受ける
・毎日自宅施灸
・毎日漢方を規定量しっかり飲む
・11時には寝る。

結果:朝の疲労感が違う、朝から動ける、腰痛を感じなくなってきた。体外受精で8個採卵が出来5個受精、2つグレードの良い胚盤胞が出来た。胚移植し妊娠出産。

結果を表にまとめてみました。

治療方針がただしく、養生の方針が正しければ、それなりの結果は出ます。体調も良好な変化はしています。ただ、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療受精をしてみると、結果は歴然。同じ治療方針で十分な刺激量、十分な養生をおこなっていくことで無事の妊娠、出産につながりました。

まとめ:養生を不妊治療の結果につなげるために

身体作りは、『ある程度』行えば、それなりの結果は出ると思います。
体調がそれなりによくなったというのは、不妊という明確な課題がなければOKだと思います。

しかしながら、はっきりとした結果を求める場合は、
『必要十分な養生の量』が必要です。

Yさんのすごいところは、しっかりと腹をくくり、いままでと明確に違う養生の量をまもり、結果につなげたことです。これはもうご本人の努力のたまものとしかいいようがありません。

さすが!と頭が下がりました。

⑦胎児と栄養:「小さく産んで大きく育てる」の意味 杉ウイメンズクリニックの考察から。

⑦胎児と栄養:「小さく産んで大きく育てる」の意味 杉ウイメンズクリニックの考察から。

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーのYouTubeから①から⑥まで考察しています。

①から⑥までは以下の通りです。
その①https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4655
その②https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4661
その③https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4672
その④https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4689
その⑤https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4692
その⑥https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4731

さて、赤ちゃんが小さいという話しになると必ず出される言葉があります。

「小さく産んで大きく育てる」という言葉です。

これは、赤ちゃんは小さく産んで大きく育てるのがいいよ~という言葉です。分娩の時に巨大な赤ちゃんだとトラブルが多いから、赤ちゃんは小さい方がよいのよという受け取り方をしている方が多いのではないかなと思わせる言葉です。

確かに確かにとと思う側面もあります。

しかしながら、私がこの言葉に疑問をもったのは、とある患者さんからのメールからです。
やせた方の妊娠フォローの症例(BMI15.6)
この方はお母さんであるご自身がBMI16.5でした。
産科でも低体重児の出産を危惧されていました。
(だからといって、なにかするわけではないですが(^_^;))

妊娠前から治療院に通っていらした方でしたので、妊娠中は初期を中心にがっつりと胎盤形成期の鍼灸アプローチをおこないました。

その結果、ご自身は3300㌘越えのベビちゃんのスムーズな出産となっています。
ご報告のメールからです。

「旦那さんも痩せているのに、随分大きくて飲みっぷりがいい赤ちゃんですね」
と褒められました。
確かにみんなが大きな胸に小さな赤ちゃんを抱いているのに、
私だけ小さな胸に大きな赤ちゃんを抱いていて、
不思議がられていましたよ。
予定日を超過したものと思っていた人もいたようですが、
39週3日での誕生となりました。
「妊娠中、何キロ増えたんですか」と聞かれて
「10キロちょっとです」と答えると、みんなびっくりしていましたよ。
判定日に体重が37.9キロしかなくて、自分でも大丈夫かと心配したものですが、
産院では「高齢初産だし、痩せているから低体重児が」などと随分注意されたものです。
それがこういう結果になったのも、
先生のところに週に二度も通わせていただいたおかげだと思います

ここで考えていただきたいのが、妊婦の体重増加=赤ちゃんの体重増加ではないということです。ここをはき違えると、妊婦が太る=巨大児と思われて体重指導が入ったり、妊婦の体重増加が少ない=低体重児とされて心配という話しにもなります。

ここにはワンクッションあるということです。

健やかな子宮血流を保つ

穏やかな妊婦の体重増加につながる

十分な赤ちゃんの体重増加につながる

この三つであるということです。

この方からのメールは続きます。

出産のときは、たまたま同じときに分娩室に入った人がいました。
私は破水で、その人は予定日超過で陣痛促進剤を投与していたのですが、
向こうのほうがとても強い陣痛が早くからきていて、大変そうでした。
でも、後から軽い陣痛が来た私のほうがあっさり出産して、
その方は母子ともに弱ってきたらしくて、帝王切開になってしまいました。

翌日、産まれた赤ちゃんを見つけました。
保育器の中の、とても小さな女の子でした

後日、「○○さんって、すごい安産でしたよね。隣で、びっくりしたんですよ」と
そのお母さんに声を掛けられました。
お腹がまだ痛そうで、「本当に大変でしたねぇ」と私は返したものの、
一歩違えば他人事でなかったかもしれません。
もしかすると、私も赤ちゃんが小さくて、
こういうことが起こりえたかもしれないなとつくづく思いました。

この方の体験だけで、全てであると語ってはいけないことは重々承知です。しかしながら、体重増加=巨大児=分娩時の大きなトラブルとされているのには違和感を感じます。

分娩時のトラブルは確かに大きいし生命に係わります。母子の生命が第一だということも重々承知です。ただ、その上で妊婦の体重増加が、健康とかけ離れ必要以上に体重増加することと、必要な体重増加であるということを分けて考えなくてはならず、健康度を落とす体重増加が非常に危険であり、出産のトラブルにつながることはよく理解出来ます。

大きい赤ちゃんという言葉の曖昧さ

大きい赤ちゃん=分娩時のトラブル多発 ではないのはこのエピソードから私に大きく問いかけてくれました。大きい赤ちゃんというのは、巨大児ではなく、一昔前にいわれた、
大きい赤ちゃんは、「3000㌘50㎝の健やかな赤ちゃん」ということだけです。

そしてこの方のメールで、同時に陣痛を起こしていた方が、非常に難産で苦労され、お産みになった赤ちゃんがとても小さかったのに驚いたと。
そして自分が大きい赤ちゃんを産むことは難産になるのではと漠然と思っていられたそうです。それはそうなんだなと同感出来ます。

ただ、
充分な体重の赤ちゃんを産むことは、
充分な血流、体力のある妊婦であること

であるという認識は持ちたいと思います。

妊娠糖尿病などによる、巨大児は確かにハイリスクな分娩であり、避けるべき事態だと思います。ただ、これも、健やかな健康状態を妊婦が保つという観点からの血糖コントロールであるようにという努力が必要なのかなと思います。

とにかく食べちゃダメという指導

他の症例で、血糖値が上がってきてしまった方に、
「とにかく食べちゃダメ」というようなカロリーコントロールが指示されていました。まあ、とにかく食べちゃダメということが本筋ではなく、ちゃんとした栄養指導だったとは思うのですが、アドバイスを受け取ったご本人はとても真面目な方だったので、妊娠前よりも細い手足であるのに、しっかりと食事制限をし、それでも、

「こんなに食べるのをやめているのに、血糖値が高くて食事制限を言い渡されるんです、どうしたらいいのでしょうか」と仰りなげいていらっしゃりました。

私は、ぐっと細くなってしまった手足、薄くなった皮膚をなでながら、

「これじゃあただの低栄養じゃないの???。出産に向けて食事バランスガイドに沿ってしっかりと食べてみては。血糖値をあげないように糖質を最初に食べないようにしてみてね」

と私自身が感じたことではあるけれどという前提はお話ししながらアドバイスしました。

その結果、赤ちゃんは、2500㌘を少し越え、おかあさまも元気に分娩されました。

その方はいまでも、
「あのとき、先生に食べろって行ってもらって本当によかった」と言ってくださいます。お体を拝見していて、これ以上の食事を減らすことに私は意味を見いだせなかったのです。確かに数字はその通りの高血糖なのでしょう、そして高血糖のリスクも充分分かります。しかしながら、身体がこれだけ細り参ってしまったら、ただただ「食事を減らせ」だけが指導なのかと疑問を感じざる終えません。もう少し丁寧に、栄養を取ること、その上で血糖値をあげない食事を患者さんに指導して頂きたかったし、あの状態のままで、これ以上どんどん食事を削ったら分娩が乗り越えられるのかと思ったのです。

小さく産んで大きく育てるの意味。

杉ウイメンズクリニックの

小さく産んで大きく育てるの意味

すぎ先生はご自身のブログの中で、DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説についてかかれ、小さく産んで大きく育てるという言葉が覆されたとされています。不育症については、様々な議論がありますので、東洋医学のカテゴリーに身を置く私としてはなんともコメントしづらくはあります。

しかしながら、私が「多分不育症で引っかかるな」と思うかたにはこの杉ウイメンズクリニックの受診をお勧めしています。流産を2回したら不育症の検査というには、年齢要因的に妊娠ー出産自体が厳しくなると思うからです。

そして、私がお体を拝見して、ん?と思い、杉ウイメンズクリニックの受診をお勧めした方は、90%以上の確率で「不育症との診断を受けました」というご報告をいただいています。不妊の方に不育症要因は重なるのです。そしてもう一つ、小さい赤ちゃんということも重なります。

DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説について

DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説については、

実験医学オンラインにて、このように紹介されています。

『異なる生活習慣を背景とする異なる人種を対象として「出生体重に代表される子宮内環境などの出生前の環境因子が成人期・老年期の健康や疾患発症リスクに関連する」という共通の結論が得られたこと自体が衝撃的であり、医学:生物学の研究対象としてDOHaDの概念が注目されるようになった』とあります。
サイト* https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/book/9784758125307/916.html

私達が健やかな身体をと願うとき、そのスタートは胎生期から始まっているという、あたりまえであるけれど、忘れられがちであることを、いま、あらためて大事であると私は感じます。

胎盤形成期の鍼灸アプローチは、そのスタートに非常に効果的です。

ぜひ取り入れてみてくださいね。

母乳がよい!GABAとラクトフェリンの違い:京都女子大学のセミナーから⑥

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。

 

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

YouTubeは京都女子大学 食事でこんなに変わる、脳の発達や病気

ブログでは、①、②、③、④、⑤ととりあげています。

その①https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4655

その②https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4661&preview=true

その③https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4672&preview=true

その④https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4689&preview=true

その⑤https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4692

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。

YouTube

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

 

 

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑥です。

YouTubeの18.33から最後のまとめとなっています。学生さん向けのセミナーなので、栄養学の発展について、また面白さについて述べられています。私もこの臨床研究と基礎研究の違いは面白かったです。どうしても、基礎研究の部分や介入試験などは臨床では出来ない部分。学術研究を期待します。

 

☆過去は変えられない、お母さんを責めないで

 低体重で生まれると、iqが低く、多動などの問題をもつかの黄精が高い

 妊娠中に魚を沢山食べたり、母乳育児だと子供のIQが高くなる

 →でも、母乳中のどの成分がよいかは不明

基礎研究(辻先生の研究室)

 低出生体重自と同じ症状のモデルラットを開発した

辻先生は、ここで、いままで人工乳やお母さんが魚を食べないという状態の方々へのフォローを話しています。

栄養学は進歩している、こういったデーターはいままでなかった。かえって昔は魚が水銀を含んでいて危険だと言われ妊婦は食べないようにという警告もあった。だから皆さんのお母さんのせいではないんですよ。

では、基礎研究の話しをしますね。と、お話をつづけられています。

 

☆脳の興奮性を増すグルタミン酸、抑制する増すGABA

スライド33(20.01)では、大脳皮質感覚野の脳地図を出しています。

 

ラットの足。この図は人間の図もよくみかけますね。

親指を刺激すると、脳のある部分が電気的に活性化する。

人差し指を刺激すると隣が反応する。

低出生時で生まれると、感覚野がいびつになり、小さくなる。

これはフランスのジャッコラビコックの研究です。

☆神経伝達物質、グルタミン酸とGABA

そして、スライドの34(21.07)からは、具体的な栄養素でお話が続きます。

細胞と細胞の間はやりとりしている。そのやりとりに神経伝達物質がかかわる。

神経伝達物質としての、グルタミン酸とGABA
低出生体重だと興奮性を増すグルタミン酸が↑、抑制するGABAが↓

低出生体重だと神経細胞の興奮性が増して、抑制性が減るということです。

また、スライド35(21.58)では、脳内物質の分布を可視化し、抑制性神経伝達物質であるGABAは視床下部に集まり、低出生体重で多動のラットでは、GABAの集積がみられないんです、つまりあまり分布がみられないということがわかって何匹もやってみたんですというお話がされています。(再現性が大事なので)

スライド37だと、正常体重で生まれたラットの視床下部にはGABAが視床下部にあるが、低出生体重のラットではほとんどわからないと。

☆低出生体重が多動などの障害をおこす機序(22.44

スライド38では、低出生体重が多動などの障害をおこす機序を図で説明しています。つまり

低出生体重

まず感覚が変わる→大脳感覚野での配置が変化する

次に→神経細胞の興奮性が増して、抑制性が減る

特に→GABA(抑制性神経伝達物質)が視床下部で減る

このような機序で多動がおこると考えられています。

(他の研究室では他の機序も説明しているのでこれはひとつです。)

では、最後に治療の話しをします。

 

☆治療は母乳、ラクトフェリン

治療には母乳がよいとお話しされ、ラクトフェリンという成分が非常に大きな役割を果たしているとされています。

·母乳と人工乳の違い

人工乳と母乳の違いを比べ、牛乳で少なく母乳で多いものをさがされています。
また、新生児を対象とする実験は非常に難しい。人の臨床試験の難しさは格別。そして母乳だと非常に研究がしやすいという利点はあるとのこと。だから母乳がよいという実験はしやすいんですねえ。このあたり、他の物をよいものとし難い点もみえてきますね。

つまり、母乳以上によいものがあったとしても、その実験は難しいわけです、倫理的に。

母乳の成分:ラクトフェリンについて

1)牛乳には少ない。母乳に多い。
2) →血管endothelial cell内皮細胞のトランスサイトーシスによって、blood-brain barrierを容易に通過

脳の中にはなかなか成分は行ききにくいですね、blood-brain barrier(血液脳関門)があります。

そのなかで、ラクトフェリンは届きやすいという点が、GABAとの違いとなってきます。
そして、ラクトフェリンは内臓脂肪を減らしやすいと言うことでいまはサプリまででているので手軽にとることができる。

ここで先生は、ラクトフェリンについて、赤ちゃんの脳障害、行動障害によいということがわかれば、すぐに人に応用出来るという可能性を秘めているとされています。ラクトフェリンの摂取を現段階で赤ちゃんの脳障害、行動障害の治療に結びつけられてはいないということなのでしょう。

 

☆まとめ 妊娠中や赤ちゃんの栄養はとても大切

臨床研究では、妊娠中や赤ちゃん時代の栄養は脳の健やかな発達にとって重要である。

基礎研究では、低出生体重児が多動となるのは脳内の抑制性神経伝達物質の減少がひとつの原因です。(2627

母乳の有効性は明確なので、母乳の成分を用いた治療法開発をおこなっている。

最後のスライド(26:40)栄養学の発展には、臨床研究と基礎研究の両方が必要である。

臨床研究では、観察研究と、介入研究との違いを考慮して結果を解釈することが重要である。以上です、これで栄養学に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。

 

☆98才の隣のおじいちゃんは毎日タバコを吸っている、
だからタバコが健康によい???

ここまでの、辻先生のお話を聞いていると、この話しがおかしいのがわかります。
つまり、臨床としてみれば、

・98才で元気に生きている長寿のおじいちゃんがいる。

・毎日ぷかぷかタバコを吸っている

・だから、タバコを吸うと98才まで生きられる!

ってな論理は大間違いなわけです。

・98才で元気に生きている長寿のおじいちゃんがいる。

この事実に基づき、もっと大規模なデーターをあつめ、同じく長寿グループでのタバコを吸っている率を見るべきでしょうし、同じ対照群でタバコを吸っているグループと吸わないグループのデータ。そして介入実験までするということが求められるといういお話をされているわけです。

世の中には、このような話しは山ほどあります。
私自身も、自分自身の体験から、自分によい、患者さんによいといったことを
お話ししています。それはかなり用心深くしなければならないという戒めだと感じます。

栄養や健康に関する介入は、非常に難しい側面があります。
用心深くしながらも、
私達の生活を前向きに押し進めてくれる可能性のあることを
体験をもとにしながら知り、前に進めていきたいと思います。

ありがとうございました。
それにしても、栄養学の実験、論理って面白いですねえ。
栄養という成分分析しやすいものでも
こんなに研究、観察を積み上げていくことが必要なんですね。

庭の金柑、だんだん色付いてきました。どんな栄養が喉にいいのかな(*^_^*)

akiko yoneyama

 

胎児と栄養、やはり魚:京都女子大学のセミナーから⑤

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑤です。

 

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

YouTubeは京都女子大学 食事でこんなに変わる、脳の発達や病気

ブログでは、①、②、③、④ととりあげています。

その①https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4655

その②https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4661&preview=true

その③https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4672&preview=true

その④https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4689&preview=true

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその⑤です。

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食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

 

多動の障害や低くなったIQをどうやったら治せるのか?

臨床の話しに戻ります。
どうやったら、低くなったIQや多動の障害を治せるのか?栄養が少し足りないからというお話が始まります。

そして栄養が足りないからIQが低くなったり、多動になるのであれば、治すのも栄養で治せないかと言うことが考えられますということで、論文のデーターをだしています。

そして人を対象とした論文でその答えが見つかっていますとされ、アメリカ食品医薬品局の報告書(8:41)2014をだしています。

 

魚なんですねと思いますが、一筋縄ではいかない論理展開です(^_^;)

魚を食べる人と食べない人の比較

19枚目のスライドでは、魚をほとんど食べない人から食べる人まで10項目で並べたんですと説明(左端の欄) 

 

魚を食べる上位5%は一週間に360グラム(12.7オンス)食べていた

その生まれた子供→ほとんど食べない人を0として、妊娠中にお母さんがたべればたべるほど、IQがあがる

データー的にいうと、3.9上がる。

そして20枚目のスライドでは、魚の摂取とIQというタイトルで、
妊婦が週に2回シーフード(230グラムから340グラム)を食べると、子供のIQ33上昇すると、お話しされています。

妊婦が週に2回シーフード(230グラムから340グラム)を食べると、子供のIQ33上昇する!ううむです。

辻先生の一人突っ込み

ちょっと待った!確かシーフードには水銀などもあり妊婦は控えた方がよかったんじゃなかったですか~という一人突っ込みに、先生は最近分かったことなんですよ、お母さんを恨まないでね(^_^;)と話していました。うううむ。ただし、マグロは、注意が今でも必要ですよね。(きはだまぐろ、びんなが、めじまぐろ、ツナ缶はOKです)

詳しくは厚生労働省のお魚について知って置いて欲しいことというりんくがありますので、参考になさってくださいね。

☆生まれたときに低出生体重児だったらどうすればいいのか。

ただし、これは生まれる前の話し。産まれたときに低体重だった場合はどうすればいいのかという話しが続きます(10/13)

イギリスの研究 早産児300人に7才時点でIQテスト

22枚目のスライドでは、母乳で育った子供は人工乳で育った子供よりもIQが83高かったとされています。偏差値で56の違いです。

じゃあ、みなさん、お母さんが母乳で育ててくれたらIQ83もたかったのかと考えちゃいますよね。でも、それだけでは論文データとしてはダメなんです。(10.13

 

☆観察研究だけではダメ、母乳で育てたら=OKとはいえない。

これは観察研究なので、母乳で育てたら83高いとはわからない。

そもそも、母乳と人工乳で育てようと思ったお母さんは違う。

母乳を選んだ人は、母乳だけの影響かどうかわからない。

最近ではこれだけのデーターだけでは信頼されない!

最近ではこんな論文では信頼されないんです、補正が必要です。

☆補正10項目を入れた母乳栄養と知能、30才の収入の相関関係をみる

家族の月収、両親の学歴、妊娠中の喫煙、母親の年齢、妊娠前のBMI、分娩様式、在胎週数、出生体重、一家の資産至数、祖先(ヨーロッパ系、アフリカ系、先住民系の割合)この10項目の補正をいれてデーターをみていきます。

結論として、(12.36

25枚目のスライドで、母乳栄養の期間

1ヶ月未満 基準
3ヶ月
6ヶ月
12ヶ月

の期間を区切り、母乳で育てた期間が長いほどIQが上がるとしています。
また、30才時点での月収もあがるとしています。でも、まだ観察研究

☆介入試験をせねば、信頼出来るデーターとはならない。

介入試験をせねば! 信頼出来るデータとはならないという説明です。さすが大学の先生、そんじょそこらの、『これをすればバッチリ!』系のお話とは違います。

コインをふって、表がでたら強制的に母乳で育ててくださいと振り分ける。
コインの表裏。

そういった強い介入する。

これで、母乳群と人工郡かがわかれる。

母乳栄養に関する大規模無作為割り付け試験のスライドで、ベラルーシの赤ちゃん17000人。6才児にIQテストをおこなったということを説明し、母乳で育った子供は、6才児にIQ59高かったとしています。

これで、母乳がよいということが結論づけらたとしています。

これはすごい研究だけど、倫理的にできるのか?と。お話ししながらこの実験の経緯を説明されています。そして、結論として、母乳をすごく推奨するとのこと。

また、スライド28(16.15)は、生後10ヶ月から4才までの健康な乳幼児133人において、大脳白質の体積をMRIで計測

母乳対人工乳大脳白質が増えるとの結論を述べています。

☆スライド29(16.53)では、母乳のどの成分がよいのか?

母乳にはいっぱいの栄養素が入っている
多価不飽和脂肪酸→子供の脳の発達によいのではないかというお話をされています。

また、そのなかで次のスライドでは、ω−3脂肪酸(魚などに多く含まれる)の話しをされ、ドコサヘキサエン酸(DHA) エイコサペンタエン酸(EOPA)、Ω−6脂肪酸などの話題を出され、さて、本当にこれはいいのか?ということでの検討がなされているとしています。

多価脂肪酸の説明です。このあたり、私の頭には難しい〜。

そして、スライドの31番目では、沢山の論文がある。すべてまとめて再解析しているということで、次のお話になります。

 

補充による有用性は認めない!

·早産児に対する長鎖多価不飽和脂肪酸の補充

·正期産児に対する長鎖多価不飽和脂肪酸の補充

補充による有用性は認めなかった

なんと!これら多価脂肪酸を補充してもダメなんですねえ。さすがデーターに裏付けられた論文の世界。厳しい現実をちゃんとつきつけていますねえ。

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーから④

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーからその④です。
③が少し長くなったので補足の④となります。

食事でこんなに変わる、脳の発達や病気  / 京都女子大学 辻 雅弘先生

YouTubeは京都女子大学 食事でこんなに変わる、脳の発達や病気

ブログでは、①、②ととりあげています。

その①https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4655

その②https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4661&preview=true

その③https://bigmama-odawara.jp/blog/?p=4672&preview=true

 

☆脳の形態:低出生体重ラットの脳は小さく、大脳白質の体積は減る

 

 

15枚目のスライドです。ラットでの脳の大きさを比較しています。

脳の形態について、低出生体重の脳は小さく、大脳白質の体積は減ると語っています。これはなかなか唸ってしまいます。血流が悪く低栄養になり小さく産まれると言うことは脳の形態にも差を生じると言うことをお話ししています。

スライドの中では、

底出生体重ラットの脳は小さく、大脳白質の体積は減る

ということが示され、脳がほんの少し小さいということが、どういうことなのかということを、

大脳白質とは神経細胞と神経細胞をつなぐ、神経線維が通っている部位である。

上記のような説明をしています。

人のMRIでも、同じ。大脳白質が小さい。

脳が小さくなると言うことは、大脳白質が小さいと言うことを意味するというお話です。

大脳白質って何?大脳の白質と灰白質

→大脳の表面は神経細胞が集まっており灰白質と呼ばれます。その奥にある、神経細胞からの命令 を伝える神経線維が束となって走行している部分が大脳白質です。つまり神経線維の束がある場処が大 脳白質ということです。

整理すると、
:灰白質→脳の表面、神経細胞があるところ
:白質→灰白質の内側、神経細胞の連絡路(軸索)

☆子宮血流の低下がもたらす低出生体重モデル動物の特徴4

16枚目のスライドでは、子宮血流の低下がもたらす低出生体重モデル動物の特徴を4つあげています。

血液の流れを減らし=栄養を減らす:子宮血流の低下

この子宮血流の低下がもたらす4つの結果は、

1:低体重で生まれる

2:多動

3:社会性が低下

4:大脳白質の体積が減る

低出生体重児であることのリスクについて、脳が小さいと言うことからわかることをこのように分析し、京都女子大学の辻先生は語っているということです。

日本でいわれる、『小さく産んで大きく育てる』という言葉は、こういったリスクに踏み込んだ言葉ではなく、ただ、小さく産んでも大きく育てればいいんだよと言う言葉だと思います。
それは確かに、

 分娩は先ず第一に安全であること。(母子の生命がかかっていますからね!)

 その上で、母子共に健康であること。

その安全であることが、低体重児とされるほど小さくでもいいに直結しているのならば、ここは少し考えて、『小さく産んで大きく育てる』という言葉をもう一度考えてみるべきではないかと思います。