カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代前半 不妊 身体の痛み

産後のリウマチと妊活、手足のこわばりや痛み(34歳出産)

概要

リウマチによる手や肩、下肢などさまざまな痛みやこわばりなどの症状をもちながらも、薬に頼らない鍼灸治療を積極的に取り入れることで、無事に妊娠、出産した症例です。産後もリウマチのために鍼灸治療を継続中。

(この症例の弁証論治→0070:妊娠6ヶ月の方のリウマチの弁証論治
(この症例のリウマチ治療についてはこちら→慢性関節リウマチに対して、生活の質をあげ、投薬を減らそう
【case:0070】

ご相談内容

妊娠を希望しています。

花粉症がひどいし、風邪も引いていて、持病のリウマチの状態がわるくとても辛いです。妊活のために、花粉症の薬も風邪の薬も飲まずにがんばっています。

第一子を妊娠、出産した後、リウマチを発症しました。身体によいということを色々試したのですが、逆に症状が悪化するばかりです。

とくに、身体に良いと勧められたお水(鉱泉)を飲んだところ、かえってリウマチが悪くなってしまいました。お水を勧めてくれた方々は、その症状は好転反応だということですが、続けていていいのかもわかりません。

第一子の妊娠中は妊娠中毒症になり高血圧となってしまい、大変でした。早く妊娠したいと思っています。妊娠したいという気持ちはとても強いです。

ただ、手、肩、足の指、膝、肘の腫れ、痛みがあり、手のこわばりもあります。また、首もいたく、鉱泉を飲んでから、腸の調子も悪い感じです。

どうしたらいいでしょうか?

東洋医学的診立て

いろいろとがんばっていらっしゃいますね、また痛みの症状が強いですね、お辛いと思います。

いまのリウマチの症状は、東洋医学でいう痺証(ひしょう)という状態になっていると思われます。

この痺証は、ご自身の身体の弱り(正気の虚)、風邪(外邪)、蓄った湿気やオ血(オ血湿痰)の課題が重なり合い現在の症状となっています。またこの状態になってしまうと、単なる対処療法的な治療だけでは状態の好転に進むことが難しくなってしまっていると思います。

お身体の状態を立て直すには、妊活の問題はひとまず棚上げし、身体の弱りを立て直すことが第一だと思われます。この弱りがある程度立ち直ってきたのならば、自然と妊娠も成立すると思われます。あせらずに取り組んで行きましょう。

また、妊娠のために、花粉症の薬も、風邪の薬も飲んでいないとのことですが、現在の状態で、ご自身の身体の力だけでこれらの症状に立ち向かうのは無理があると思います。「妊娠のため」と我慢なさっていることが、かえって身体の弱りをひどくし、痺証の状態を悪化させ、妊娠しにくくなってしまいます。とりあえず現時点では花粉症の薬、風邪の薬ものんで身体の回復をはかりましょう。

あせらず、いきましょう。必ず、状態がよくなり、妊娠もスムーズに訪れてくれると思います。

そして、リウマチという手強い相手としっかりと立ち向かい、ご自身の妊娠、出産、そして産後の家族との生活が楽しく送れるような身体作りをしていきましょう。

東洋医学的弁証論治
弁証:肝欝気滞、脾気虚損
論治:疏風外感、瀉鬱熱、通腑補脾

治療方針:まず、風邪を取り去ることを第一とする。また痛んでいる脾気の虚損を手入れすることもおこない、脾気を立てることで全身の生気の回復、そして風邪を取り去ることの助けとしていく。必要に応じて、肝欝気滞をとる。

治療経過

治療方針に沿って、週に一度のペースで施術

3ヵ月後
症状が全体におちつく、きつい痛みが減ってきた

7ヵ月後
風邪を引いて症状が悪化することがあるが、風邪が治ると症状も落ち着く
症状が悪化したときに、市販の痛み止めを飲めば収まる程度。
                             
1年後
朝のこわばりもなく、全体的に落ち着いている
手を使いすぎて腫れることになっても、翌日には大丈夫
疲労や風邪で症状が悪化しても、薬などの痛み止めはほとんど不要の状態になる

1年3ヵ月後
二人目の妊娠

全体的にリウマチの症状が落ち着いている中、妊娠。

病院にて、リウマチは薬を飲んでいない状態ならば問題ないといわれる。

二人目の妊娠の経過、出産

一人目の妊娠中に、血圧、尿蛋白などの状態が悪くなり、妊娠中毒症となり、帝王切開になっているので、リウマチのほかに、身体の状態をよくするようにと、妊娠前と同様に、脾気をたて、軽く肝気を調整する治療をおこない、そのうえで妊娠に対して力をつけるように、腎気を高める治療を加えていく。

第一子妊娠中におこった、妊娠中毒症などのトラブルもなく、リウマチも症状が悪化することなく落ち着いて経過。無事に出産しました。

あとがき

慢性関節リウマチは女性に多く、妊娠、出産を契機に発症したり悪化したりする手強い疾患です。

妊活中は薬を控えることも多いかと思います。鍼灸治療は薬が飲めないこんな時期にはとても頼もしい存在になるかと思います。

色々な事がありましたが、無事に出産を終えられよかったなと思います。身体の弱りがでると、リウマチ(痺証)が悪化しやすくなります。お身体の手入れをし、子育てを楽しめるようにしていきましょう。