概要
リウマチによる手や肩、下肢などさまざまな痛みやこわばりなどの症状をもちながらも、薬に頼らない鍼灸治療を積極的に取り入れ、免疫抑制剤やステロイドなどの使用をなるべく少量に抑え、薬の効きをよくし、痛みやだるさを軽減している症例です。
(この症例の弁証論治→0070:妊娠6ヶ月の方のリウマチの弁証論治)
(この症例の不妊治療についてはこちら→産後のリウマチと妊活、手足のこわばりや痛み(34歳出産))
【case:0070】
ご相談内容
リウマチで手、肩、膝、足のこわばりや痛みがあります。
風邪を引いたりすると全体の症状が悪化しますし、気圧、湿気、忙しさなどいろいろな要因で悪化します。西洋医学の病院も並用し、免疫抑制剤なども服用していますが、なるべく薬を少なくしたいと思っています。
リウマチは長い経過で、付き合っていかなければならない病気だということは理解しています。妊娠を希望してた頃から取り入れている鍼灸は自分にとてもあっているのかなと思っています。
いろいろな症状の悪化の時に、薬を増やすことなく、乗り切っていきたいと思います。
どうしたらいいでしょうか?
台風や、湿度があがったり、季節の変わり目などや疲労などで手、肩、足の指、膝などの状態が悪化します。
東洋医学的診立て
リウマチはなかなか手強い疾患ですね。無理しすぎずに、上手に西洋医学も取り入れながら対処なさっていると思います。
いまのリウマチの症状は、東洋医学でいう痺証(ひしょう)という状態ですね。この痺証は、ご自身の身体の弱り(正気の虚)、風邪(外邪)、蓄った湿気やオ血(オ血湿痰)の課題が重なり合い現在の症状となっています。
リウマチなどの痺証は、ストレスや妊娠、出産など大きな身体の状態の変化の時期の身体の弱りに乗じて発症します。1度発症してしまうと、単なる対処療法的な治療だけでは状態の好転に進むことが難しくなってしまっていると思います。
お身体の状態を良い状態でキープするには、
(1)さまざまな症状に振り回されずに、身体の弱りを立て直すことが第一とする
(2)症状のある場処への対応は1)が主軸であることを認識した上でおこなう。
この二点は非常に大切です。
どうしても、首や肩、足など症状のあるところが気になり、その症状を治そうとしてしまいますが、(1)の課題がそのままだと、悪化の悪循環に陥ってしまいます。まずしっかりと身体の弱りをとり、その上で余力に応じて2)の症状のある場処への対応をしていきたいと思います。
(1)への手入れがしっかりと出来れば、自然とさまざまな症状は軽くなり(2)の対応も穏やかな治療で効果的なアプローチになってきます。
また、(1)の治療の補足となっていけるようなセルフケアもお伝えしますので、日々の養生のヒントにしてくださいね。
あせらず、いきましょう。必ず、状態はよくなると思います。そしてご自身の人生を楽しめるようにと願っています。
東洋医学的弁証論治
弁証:肝欝気滞、脾気虚損、風邪の内陥
論治:益気補脾 疎風散寒
治療方針:まず、風邪を取り去ることを第一とする、また外寒風邪が入り込んだときも取り去ることを第一とする。
脾気を補い全身への補気とし身体の力をあげていく。
必要に応じて、肝欝気滞をとる
治療経過
治療方針にそって、週に2回のペースで施術。
治療
膝上三点施灸
大椎の三角温灸
脾兪、三焦兪(BL22)、次髎(BL32)鍼して温灸その後温灸
下肢三点お灸
必要に応じて、百会、曲池(LI11)、足三里(ST36)、合谷、気海、大巨(ST27)、失眠、肺兪(BL13)
季節要因や、気圧、湿度、花粉、疲労などさまざまな条件によって、体調は変化し症状も変化するものの、鍼灸治療を中心として漢方などの東洋医学のツールを使うことによって、症状があるものの穏やかに経過し日常生活や人生のイベントを十分楽しめる状態を保っている。
あとがき
慢性関節リウマチは女性に多く、ストレスや妊娠、出産を契機に発症したり悪化したりする手強い疾患です。
現在、西洋医学の薬が非常に良く発達し、心強いパートナーとなってくれていると思います。まず、病院やドクターを信頼し、しっかりと状況を把握していただき、むやみに薬を怖がらないことはとても大切なことだと私は思っています。
なぜならば、1度破壊された関節は元に戻りません。しっかりと炎症をコントロールすることはとても大切です。炎症をコントロールしたうえで、体調をあげ、薬の効きをよくし、薬が少しでも減らせるような努力をするという順番が、ご自身にとって大きなメリットがあると思います。
この症例の方は妊娠の希望からはじまり、産後の悪化、ストレスによる悪化など色々な事がありましたが、上手につきあい、乗り越えていっています。
健康状態を保ち、毎日を楽しく過ごせるお手伝いに東洋医学や鍼灸がなっていければとてもいいことだと私は思っております。