概要
体外受精や顕微授精などの高度生殖医療に挑戦し、採卵では7,8個とれるものの、移植できる受精卵が出来ない状態から、体調を改善し、無事に妊娠、出産とたどりついた症例。
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」4-1)
【case:0323】【神奈川県/小田原】
ご相談内容
体外受精や顕微授精などの高度生殖医療を挑戦しながら不妊治療を続けていますが、移植できる卵が出来なかったり、排卵誘発剤を使うものの卵胞が出てこなかったりで治療が前に進みません。
自分としては低血圧、低体温、便秘、冷えなどのある体質を改善していきたいと思っています。どうしたらいいのでしょうか?
東洋医学的診立て
37才頃から不妊治療にご夫婦で前向きに進めていらっしゃいますね。現時点で体外受精や顕微授精などの高度生殖医療まで進めていらっしゃるのに、なかなか治療が進まないと言うこと、どうしたらいいかわからなくなってしまいますよね。また病院で年齢要因によって卵胞の数が減っているという説明を受けられたと言うことショックでしたよね。
いまお身体を拝見すると、全身のパワー不足、東洋医学でいうところの肺脾を中心とする気血両虚が顕著です。妊娠には女子胞(子宮)の力が必要ですが、この女子胞(子宮)の力を支えるには腎気という生命力を下支えする力も必要です。いま、肺、脾、腎という3つの臓腑を中心とする全身の力が不足しているため、女子胞(子宮)まではとてもパワーが回らないという状況です。
しかしながら、採卵すれば卵胞も出現し、きちんと月経もあるようですね。年齢も現時点で39才。私はもう20%体力アップをはかれば、自然と余力が女子胞(子宮)へとまわり、妊娠-出産へとつなげることが出来ると思います。
体力アップというと、すぐに『運動をすればいいんですか?』と聞かれちゃいますが、全身の気虚がある人が、今の状態で運動すれば、体力アップではなく、単なる過労になって、もっと体力ダウンです。生命力をつけるというのは、食べて、滋養を取りこみ、身体の力とするということです。
現時点で、体重と身長のバランスであるがBMI18.5を下回っています。とにかくこの数値が19.5を越えられるということを目標に身体作りをしていきましょう。痩せ型タイプの人にとって、『食べて太れる』ということは本当に大事なポイントです。
また、お身体を拝見すると冷えの入り込みも顕著です。全身の体力アップと、冷えの入り込みを排除して身体作りを進め、妊娠をめざしていきましょう。
東洋医学的弁証論治
弁証:肺脾の虚を中心とする全身の気血両虚 風邪の内陥
論治:益気補脾補肺 疎風散寒
治療方針:まず第一に風邪の内陥をとりさる。益気補脾補肺をし、生命力の余力をつける。もともとこの状態でも月経があり、卵胞もでている人なので、女子胞(子宮)の力は生命の余力がつけば自然と出てくると思われるので、経過をみていく。
治療経過
初診
左外関 右足三里 三陰交 右臨泣 大巨(ST27)、関元(CV4)
肺兪、左胃兪三焦兪 大腸兪(BL25) 次髎(BL32)
自宅施灸 左外関、陽池 三陰交 右足三里 大巨(ST27) 関元(CV4) 背部兪穴
1ヶ月後 食べる量が増えてきて、便通尾改善
4ヶ月後体重が1.5キロ増えた(BMIが18.43から19.03へ)
クリニックを変えることを提案(排卵誘発がシンプルで、多数狙いにせず、なるべく休診日が少ないクリニックがあうのではないかとアドバイス)
5ヶ月後、採卵、新鮮胚移植。妊娠できず
7ヶ月後 採卵、胚盤胞を二つ凍結
8ヶ月後 採卵、凍結胚できず。
11ヶ月後体調を整えて移植、無事に妊娠!出産。おめでとうございました。
あとがき
年齢要因や、治療が前に進まないことでだいぶあせっていらっしゃいました。しかしながら、根本的なご自身の体力アップ、食べる力upをしていったことで、もともとあった女子胞(子宮)の力を充分に発揮することができ、妊娠、そして3000グラム越えの元気なお子さんの出産となったと思います。よかったですね。