赤ちゃんと出会う道を考えましょう
不妊の治療というのは、私の20年前の出会いでもわかるように、ある時期まで、女性側に過排卵をおこさせて、なんとか受精の機会をあげようということが中心でした。それがこの10年ぐらいでしょうか、体外受精の登場で圧倒的な進歩をみせました。
35歳で不妊治療終了とされていた時代から、生理がある限り治療可能の時代です。
また、時代の流れとともに、女性側の妊娠への意識もかわり、妊娠を望む年齢があがってきたことも、現代の不妊治療の流れを大きく推し進める要因にもなっていると思います。
体外受精を含むすばらしい現代の不妊治療ですが、それでも、 結果がでないことも往々にあります。
精子と卵子が一つに出会えた初期分割の受精卵を戻しても、 着床寸前の杯盤胞の受精卵を戻しても、 妊娠しないときはしません。
そして、それほどの治療をうけたあとでも、あっさりと自然妊娠することもあります。
妊娠は、単に物理的な問題だけではないなあと実感させられることが 本当にたくさんあります。私をふくめ、不妊の治療とされるものは、すべて、お手伝いをしているだけなんだと思います。
受精する、着床する、妊娠として成立する。これらのプロセスは、次の世代を生み出すための神様の領域があるのだと思わずにおれません。
女性側のかかえる問題
妊娠したい女性は、身体全体の問題、精神的な問題、生殖器系の問題、年齢の問題、経済的問題と、沢山の考えるべき問題を抱えているケースが多くあります。
私のところへご相談にいらっしゃる方も、『なにが問題なのかわからない』『どうしていいのかわからない』『体調ばかり悪くなって、こんなことで妊娠できるとは思えない。だけど、どうしたらいいのかわからない』『こんな年齢で妊娠できるのだろうか』とお悩みの方がたくさんいらっしゃいます。
悩んでいるばかりでは、なにもはじまりません。 時間がどんどん流れてしまうばかりです。 妊娠にとって時間を有効に使うことは大切なのです。時間が 妊娠を遠ざける場合もあります。
むやみにあせる必要はありません。
問題を明確にせず、ただ悩んで困っているだけでは、状況は前に進まないのです。
ときに、問題点を明確にしてしまうことを恐れている人がいらっしゃいます。 はっきりと『不妊』であることを認めることが辛いとおっしゃいます。 『このままでは、だめなんだ』とはっきり知るのが恐いのですよね。
それでも、現状を知らなければ、次の一手がうてません。
あなたの『いま』に一番必要なことはなんなのか、 あなたがいま『できることは』なんなのか、 一緒に考えていきましょう。
『避妊に成功している』のか、『不妊』なのかわからない
女性にとって、生理が定期的にきているということで、「いつでも妊娠できる」と思い込んでいる方がいらっしゃいます。
しかしながら、『生理が来ている事=妊娠できること』ではないのです。 生理が来ているということは、一つの条件にすぎません。
妊娠は、妊娠できるか出来ないか試してみるわけには行きません。 『生理が来ている』『避妊している』状態の方は、妊娠しないことを避妊の成功と思いがちです。この状態は、『避妊が成功している』のか、『不妊』なのかわかりません。
そして『避妊が成功している』と思い込んでしまっているので、いざ妊娠にチャレンジして妊娠が成立しないと、非常にあせるのです。妊娠の適齢期を逃してしまわないように していただきたいと思います。
もし、妊娠のご希望があるのならば、『避妊に成功してる』と思っている状態を長く続けないでほしいのです。
あなたにとって、最善な選択肢を一緒に探していきましょう
不妊は病気ではありません。 赤ちゃんができないという状態です。 赤ちゃんができないということを除けば、まったくの健康状態であることもあります。
こうしなければならないという決まりはありません。 こうすれば必ずという方法も西洋医学も含め残念ながらありません。
思想信条も絡む問題です。体外受精などの高度生殖医療に対して精神的な抵抗感がある場合もあるでしょう。
またドクターでも、ドクター各々のそれぞれの妊娠観があります。
ある患者さんが『Y病院の女医先生は主人にとっても厳しいことをおっしゃっていました。 でも、K病院の先生は女性である私のことばっかりいいます。病院の先生でも違うんですね』
これは私も感じるところです。
漢方薬を中心になさる先生は、あくまで身体を整えれば自然に妊娠するという立場を主張なさる場合もありますし、体外受精を中心にするクリニックではとにかく体外をと進められる場合もあります。
あくまでも自然にということに拘わる立場もあれば、強引にでも妊娠にもっていこうとする立場もあります。この考え方の違いでも治療法の差ともなります。
いろいろな立場があり、考え方があり、選択肢がある。それが不妊に対する現状です。
ひとつだけ決められた正解があるわけでもないのです。
迷う方にとっては、どう考えたらいいんだろうかと考え込んでしまうところですね。
あなたにとって、最善な選択肢はなんなのでしょうか? ゆっくりと整理して考えて見ましょう。 あせらず、でも遅くなりすぎず、しっかりと作戦を練って赤ちゃんと出会うための旅に出ましょう。