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「三陰交」は安産のお灸とはいえません

あるとき妊婦さんからご質問をいただきました。

『三陰交が安産のツボだと聞きました。いま、体外受精胚移植をして判定日を待っています。三陰交にお灸をするとよいでしょうか』

スライド2実はこの類いの質問はよく受けます。そして私は思いっきり驚いてしまうのです。三陰交が安産のツボというのはいったいどこからでているのでしょうか?

人の身体はそれぞれとても状態が違います。経穴(ツボ)の反応も人それぞれ本当に驚くほど違います。非常に身体が充実している人の三陰交もあれば、全体に疲れ気味の人の三陰交もあります。気が上逆して上実下虚(上の方が実して、下の方が空虚)というタイプの方もいらっしゃいます。

三陰交という経穴は身体の下部にあり、非常に血分を大きく動かす経穴です。身体がよい循環に乗っている場合は、三陰交でよいリズムを出すことが出来るケースをよく経験します。生理痛がきついときなど下にスムーズに通じさせるために反応の出ている三陰交を組み合わせて使うこともあります。

そしてこの下にスムーズに通じるということは、稽留流産など子宮に停滞してしているものを引き出すことにも使います。子宮に力をつけて自力リセットをし、人工流産の手術回避の時に私がよく使う経穴が三陰交なのです。

この子宮周りの血流を大きく動かし下に引くということが、妊娠初期の方には出血や流産に結びつきやすいということにもつながります。組み合わせる経穴によってはより強く下に引く作用が出やすいですし、逆にこれを単独で使うことでも、この『下に引く』力が強く出やすいです。妊娠しにくいタイプで子宮の力が不安定な方であれば、なおさら危険!!!と言うことができます。

少し前に妊娠26週の方が治療希望でいらっしゃいました。私は一目見て『このお腹すごく下がっていますね。第一子のときはどんな出産だったのですか?』と伺うと、35週の早産だったとのこと。

24ご実家に帰省され、赤ちゃんが小さかったので鍼灸院にいったところ、”安産のお灸ですから、この三陰交だけお灸しますね”と言われお灸してもらったら、そのあとすぐに陣痛がきてしまい35週での出産になってしまったとのことでした。

この三陰交のお灸が本当の原因か、そうでないのかは厳密には断定は難しいところだと思います。その鍼灸の先生はあなたのお腹をみて下がっているとは言わなかったの?と伺うと、『なにも仰いませんでした』と。じゃあお腹が下がったのは今回だけなのかなあと思い、もう少しお話しを伺うとご自身のお母さんは『お腹が下がっていておかしいよ』と言っていたとのこと。うううーーんと唸ってしまいました。

その鍼灸の先生がどういう判断で安産のお灸として三陰交を使ったのか私には理解できません。全身をみてお腹の状態も見れる範囲でみて、施術そのものが適応であるのかないのか判断した上で経穴を使い施術すべきではないかと私は強く思います。その方のお身体も拝見しないうちに、なんらかの経穴、たとえば三陰交などを安産のお灸として提唱することに私は大きな疑問を感じます。

三陰交は安産のお灸とはいえません。