概要
38歳、三回採卵し移植をするも着床すらしない状況。お体を手入れしていくうちに自然妊娠し出産。凍結胚を残しているので今後の第二子への期待も大きくなりました。
(この症例の弁証論治→39才 体外受精のあとの自然妊娠、出産。)
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」1-1)
【case:0198】
ご相談内容
38歳です。36歳で結婚し、すでに人工授精を七回、体外受精も三回行い、胚移植もしましたが妊娠しません。
1回目ゴナール5回(自己注射)、ガニレスト3回、クロミッド5日間、採卵数5、受精卵拡張期の胚盤胞が3つ、3回移植するもまったく着床せず。
2回目ゴナール、クロミッド、ガニレストなど薬剤同じ、2つしか卵胞が大きくならなかったのでタイミングに変更、妊娠せず。
3回目薬剤同じ、ガニレスト4回、HCG注射、6個採卵ができ、2回胚移植、妊娠せず。
採卵すれば卵はとれ、よい受精卵もできるのですが、妊娠しません。とても冷え性なのも気になります。どうしたらいいでしょうか?
東洋医学的診立て
36歳で結婚、西洋医学的には大きな問題がないものの、体外受精で良好胚を何度か移植するが妊娠しないということですね。お食事、睡眠ともに大きな問題もありませんね。
お体を拝見すると気の滞りが目立ち、それにともない血の滞りもおこしやすくなっています。腹部の右肝の相火、足のつぼである臨泣のつまり、舌で見受けられる舌裏の怒脹、膝周りにある細絡と、血流の悪さ、滞りの所見が多くみられますね。また身体の素体の力を直接的にあらわす体幹の経穴は、左胆兪から胃兪の陥凹、右三焦兪の陥凹と、胃腸の経穴を中心に弱さがみられます。
二便・睡眠に問題がなく、翌日に疲れが残らないという状況は、それなりに現時点で大きな問題はないということと考えてよいかと思います。日常がそれなりにちゃんと保たれているということです。
しかしながら、もともとしもやけができやすい素体は局所での冷えが血の滞りまでに進みやすいという状況をしめしています。妊娠という下焦の血流がより望まれる状況に対しては、生命の土台の力(腎気)を底上げし、胃腸の力をバックアップし、気滞を取り去り血オになりやすい状態を改善し、下焦を中心としての生命力賦活化が必要と思われます。
一緒にがんばっていきましょう。
東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚、気滞血オ
論治:益気補腎、活血化オ
治療方針:腎気のそこあげによって脾気をバックアップし、全身の気滞をとりさり活血化オをしていく。
治療経過
38歳11月初診:すでに体外受精の周期に入っている。
1)左外関、右臨泣、三陰交、大巨(温灸)、左脾兪、左腎兪、右三焦兪、次髎
施灸指示:大巨、関元、左外関陽池、曲泉、陰陵泉
以降、週に1、2回の鍼灸治療、自宅施灸。
2ヶ月後:無事に6個採卵出来、2つ三日目胚で凍結、1つ拡張期にて凍結。
4ヶ月後:年齢要因も気になるので再度採卵から凍結胚を作ろうとするもインフルエンザで中断。
6ヶ月後:自然妊娠成立、鍼灸治療を週に3~4回にする(12週まで)、その後週に2回程度で出産まで継続。
無事に39歳にて出産。残った凍結胚で、少し落ち着いたら第二子に挑戦したい。
患者さんからのメール「・・・中略・・・この出産まで、本当にいろいろありがとうございました。この1年、私たち夫婦にとって、子供を授かるにあたり、思い出深い一年となりました。しばらく通院は休みますが、年齢が高めの私にとって残った凍結胚は自分たちの心の保険です。またよろしくお願いします」
私からのお返事「無事に生まれてきて本当によかったですねえ(^^)なかなか手強い陣痛だったようですが、無事に生まれてきてくれて本当に嬉しいです。きっとなくなられたおばあちゃんが見守ってくださったのでしょう。
新しいご家族を迎えて、これから賑やかな日々が始まるのかなと思いますが、あまりがんばらず、ゆっくりとすごしてくださいね。病院で頑張りすぎないのが大事ですよ~。
あっという間の一年でしたねえ。去年の今頃はいろーんなこと(インフル騒ぎとか)があった記憶があります(^^)落ち着きましたら、またお越しくださいね。
悪露がある間に一度施術できるとよりよいとは思いますが、このあたりは赤ちゃんは連れ歩くことが出来ない時期ですので、ご家族の都合などがついたらという事でよいかと思います。それでは!」
あとがき
初診の時には、何度も良好胚を戻しているのに着床がまったくしないこと、年齢的にも高齢になってきてということでとてもあせっていらっしゃりました。しかしながら、しっかりとカラダ作りをしていくなかで、凍結胚が保存でき、胚移植を待つ間に自然妊娠をなさり、39歳での出産となりました。これで40代では自然な妊娠を待つことと同時に、妊娠が成立した若い年齢での凍結胚を移植出来る可能性もできたわけです。本当によかったなあと思います。