カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 不妊 身体の痛み

良好胚を移植しても妊娠できません(35歳出産)

概要

4回の胚移植は一度も成功せず、からだ作りをして無事に着床、妊娠、出産。

(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」11-1)【case:0329】

ご相談内容

33才から不妊治療をはじめ、昨年の体外受精では10個以上の卵が採卵出来、良好胚と言われる卵を4つ凍結できました。1年ほど掛けてすべて移植しましたが、一度も着床していません。どうしたらいいでしょうか?

東洋医学的診立て

4回も「可能性が高い良好胚」を移植なさったのに、一度も妊娠できなかったという事ですね。とても残念な事だと思います。

肩こりや頭痛もひどいということですが、身体の上部に気の停滞がおこりやすいということが肩こりや頭痛の直接的な原因だとは思いますが、その気の停滞をおこしているのは、全身の気の巡りの悪さ、それに一歩加えて東洋医学で言うところのオ血の状態を引き起こしています。

このオ血の状態は、お体を拝見すると、足の経穴の冷え感や滞り、また細絡という血管の浮き出しが年齢の割に多いこと、また、身体の力を支える腎気とよばれる土台の力の弱さがあるために、暢びやかに気血が巡ることがしづらく、血流そのものが滞りやすい素体をお持ちではないかと思われます。

日常生活を送られる範囲であれば、大きな問題とはならないと思いますが、この血が滞りやすい問題は妊娠や出産には大きな課題となります。手入れをしながら、不妊治療を前に進めていきましょう。

不妊治療についての具体的なアドバイス

(1)今のクリニックは薬が多く、刺激量が多いクリニックだと思います。このやり方が人によっては合う合わないが生じます。薬のせいで頭痛や肩こりがひどくなるというのは、素体に負担が強くかかっていると言うことだと思います。

良好胚を移植しても着床しないということのなかに、素体が弱ってしまっているということも可能性が高いと思われますので、転院も視野に入れて良いかとは思います。

しかしながら、前回の採卵で複数胚の採卵ができています。これはとても重要なポイント。もう1回は同じクリニックでおこない、胚移植の時にお体を整えることをしっかりとやっていくのもいいのかと思います。

(2)良好胚が凍結出来ているということは、卵の質の大きな問題はないと思います。着床障害について考えてもいいのかもしれません。着床障害の検査はお身体を拝見すると、血流を中心としたことを調べるのがベターではないかと私は思います。(着床の窓を調べたりする検査ではなく)

(3)お体の細絡(細かい血管の浮きだし)や、偏頭痛は、血流問題があるのではないかと思われます。体調を整えることと、不妊治療の方向性は合致します。腰骨盤の血流をあげるために、下腿から足首、足のツボや温冷浴を使い十分に血の巡りをあげるようにしていきましょう。

東洋医学的弁証論治

弁証:腎虚肝鬱瘀血 
論治:益気補腎、疏肝理気、活血化瘀
治療方針:腎気の底上げをし、気血の循環が暢びやかであるようにしていく。

治療経過

初診:
右の外関陽池、大巨温灸 三陰交、陰陵泉、左足三里、大都(ミニ灸)
肺兪温灸、左脾兪、右腎兪、三焦兪、次髎

治療後、目がぱっちりとスッキリする感じがする。

2ヶ月後、採卵、凍結胚が3つ出来た
6ヶ月後、移植、初めての着床。無事に妊娠成立し出産。

あとがき

良好胚を移植しても妊娠できないということは、一体何をしたらいいんだろうと途方にくれてしまいますね。結局、様々な検査でも問題がなかったということは、ご本人の血流の悪さが、あと一歩の妊娠成立を妨げていたということなのかなと思います。

妊娠はあと少しというところで阻まれてしまうことも多くあります。ご自身の努力を前に進めることができて、本当によかったなあと思います。