カテゴリー : 不妊・婦人科 コラム

男性不妊総論

男性側の場合は、「不妊」というキーワードはちょっと距離をおいて、体調、体力貯金を少し増加させるということがポイントとなります。この体調体力貯金がちょっと増加したことで、結果として自然妊娠に向かうという感じです。これが案外大事な不妊治療のポイントとなります。

漢方では

漢方では八味地黄丸か補中益気湯をすすめられる場合が多くあります。

八味地黄丸タイプ:アンチエイジング的な発想で、身体そのものの底力をつけ若返りが必要なタイプです。
補中益気湯タイプ:胃腸の調子を整え、食べて滋養になる力をつけることが必要なタイプです。 これは弁証論治による見分けが必要です。

男性不妊のポイント

1:当たり前の体調をよくするための治療をする。
2:食事は食事バランスガイドに従う。
3:睡眠、食事、休息の当たり前のリズムを大切にする。
4:下肢の脾腎の経絡の温養、上焦の肝気(あるいは肺気)の鬱滞をとり、腎気をたてる。

病院での診断について

私は、患者さんにご縁があったドクターのお言葉は信じたいと思っています。しかしながら時に、ドクターご自身が患者さんの事を考える余り、早く!早く!とあせりすぎていらっしゃらないのかなと思うことがあります。

男性側の要因は女性よりも生活改善や身体の手入れで大きく変化します。確かに現時点では《自然妊娠など絶対に無理》という状況であっても、体調がよくなり自然妊娠に至ったケースはよくありますし、逆に体調悪化で精子の状態も悪化ということもよくあります。

《男性側の要因は、よくも悪くも大きく変化する!》

以下の症例0194でも、男性不妊特有の問題が絡んでいます。第一子は自然妊娠しているという状態であるのに、病院での検査で『自然妊娠は到底無理、体外受精(振りかけ受精)も無理で、顕微授精(一匹の精子を卵子の中にいれ顕微授精させての受精」しか無理』と言われています。

しかしながら、第一子は自然妊娠していると言うことは、このご主人の精子の状態は「大きく変化する」可能性があるということです。年齢要因が待てるケースならば、奥様の治療を休憩しながら「体力貯金アップまで待つ」ということがよいわけです。

どうしても、ドクターからは「いま、ここでの妊娠」を強く勧めます。それは当たり前の事だと思いますし、今の現状を大きく変えるにはかなりの努力や方法が必要です。これは逆に病院でやっていくことでもないのです。日常生活、日常での手入れがポイントとなるのです。

症例0194

30代後半男性、第一子は自然妊娠。ドクターには、いまの精子の状態では顕微授精でしか妊娠が成立しない状態と診断され
る。

状況
・30代から身体が疲れやすくなった
・お酒を飲むと翌日までだるい。

体表観察ポイント
・肺兪、膏肓の抜けがきついーー風邪の内陥の可能性
・足三里、脾兪(BL20)の陥凹がきついーー脾気の弱りの可能性
・左三焦兪から腎兪(BL23)にかけての陥凹がトップ
・両大腸兪(BL25)の陥凹
・臍周抜けあり、
・右の季肋部期門にかけて突っ張りアリ。
・右の内関陥凹
・右の太淵腫れ、右の神門硬結

身体の状態
身体が疲れやすいということから、生命力全体の底力が不足(腎気の不足)それに乗じて、冷えの入り込み(風邪の内陥、肺兪、太淵の反応)があり生命力への負担となった(腎気への負担)。この底力の不足(腎虚)があったために、もともと少し弱めの脾気の状態が悪くなり、現時点での体表観察で見られる、足三里脾兪(BL20)の陥凹となっている。

治療方針
1:先ず第一に生命力の負担となっている風邪の内陥を取り去る
2:現時点では脾虚中心ではないかとは思われるが、脾気、腎気は反応が出ている方を先に手を入れる。

治療経過
気海(CV6)、関元(CV4)温灸。右の内関ー左三陰交ー左公孫。
肺兪、胃兪、大腸兪(BL25)。

治療を経るたびに身体のだるさが減る感じ。
3診目から左の足の巻き爪(いつも炎症があるために手術もできず、濡れた田んぼやプールには入れない)のために左の公孫、大都(SP2)をしっかりと入れる。
3ヶ月後、妻が妊娠した。
20診後、巻き爪の調子がよくなり日常生活に不自由がなくなった。

全体の治療について
風邪の内陥がとれ、全体に体調がよくなったところで自然妊娠。
病院による検査はうけていないものの、顕微授精しか無理と言われたレベルから自然妊娠できる精子の状態へと好転したものと思われる。

風邪の内陥を取り去った後は、脾気を中心とした治療で好転してきている。結果として、風邪の内陥が腎気への負担となり悪循環に陥っていたが、風邪の内陥がなくなったのちは、現時点での課題である脾虚の手入れを中心にすることで、身体全体への滋養がなされ、体調が良くなったものと思われる。