身体の土台の力、生命力をあげることへのアプローチ
この身体作りの中心課題は、『生命力を養う』ことです。
妊娠ということだけではなく、あなたの人生を健やかで軽やかに過ごせるような身体作りにも通じます。そして、あなたの生命力をあげることが、遠周りの様でも、妊娠への一番の近道なのです。
治療的には、全身状態、とくに生理の状態をみながら、脾胃の力、腎気の力を上げていき、 全体として暢びやかで生命力のある身体作りをめざしていきます。
ご自身でできることもいろいろあります。土台作りは少し時間がかかりますが、ご夫婦で、楽しみながら、生活の一部として取り入れていただけたらと思います。
からだの『生命力を養う』には、ふたつのポイントがあります。
それは
腎気を養うこと
脾気を養うこと
この二つの観点です。
腎気の力を養おう(臍下丹田の力を養おう)
腎気の力というのは、臍下丹田の力でもあります。充実した力を感じられる柔らかい下腹は、妊娠にはとっても重要です。また、妊婦になっても腎気を充実させて臍下丹田に力があるという状態は、安定した子宮の状態をつくっていくことに欠かせないことです。
下腹に棒灸をしましょう
棒灸という棒状となったお灸があります。これで間接的に、関元、大巨などの経穴をあっためます。表面があったまったら、手のひらで、その暖かさを子宮に届かせるように押し込みます。暖かさが子宮に到達するようにという思いで、少し力を加えて押さえてあげるのです。暖かさが届いたなと思ったら、もう一度棒灸を経穴の表面に近づけ暖めます。そして子宮に暖かさを押し込む。この繰り返しを、5-7回おこない、充分に下腹があったまったことを確認して終わりにします。
お腹がぽかぽかして、暖かさが継続する感じがしますよ。
妊婦さんであれば、硬かった子宮がやわらかくなるのが実感できるでしょう。
中注というツボに毎日1回センネン灸をしましょう【図】
おへその下、両脇に中注という経穴があります。
おなかを拝見すると、下腹部に冷えていたり動きが悪いポイントがある方が多くいらっしゃいます。治療室では、中注と限定するのではなく、その方の一番弱りが出ているツボや冷えているツボなどにお灸をするように印をつけています。
なかなかご自身ではわかりにくいと思いますが、中注、大巨、関元、気海といった下腹部の経穴が治療ポイントとなるケースが多いです。探すことができない場合は、中注や関元を目標にしてお灸をしてみてください。できれば、鍼灸院で指導を受けたほうがよいでしょう。
よく眠りましょう
睡眠は、腎気を養うことにおいては本当に大切です。
よく、肌を美しくするには10時から2時までの睡眠が大切といいますが、 肌を美しくすることイコール生命力をあげることなのです。腎気を養うことも 同じです。
夜型生活が身についてしまっている現代人には早く寝ることはとても難しいことかもしれません。
生活のパターン全体をも見直し、とにかく10時代には寝ることを習慣づけてください。腎気を養うという観点においては、睡眠は欠かせないポイントです。「なにを食べたらいいですか?」とよくご質問を受けますが、何を食べるかよりも、よく寝ることのほうがずーーーっと身体にダイレクトに効きます。とにかくよく寝ること。肌のゴールデンタイムといわれる時間にしっかりと眠ること。卵の成長が気になるというかたには、とくにお勧めです。
歩きましょう
肛門をきゅっと締めて引き上げるように意識し、お臍と結んだ線の中心部分を感じます。その部分が臍下丹田です。
臍下丹田にあなたの意識が落ち着き、そこにあるように感じながら、ゆっくりと歩きましょう。
鼻から吸った息が、身体の奥まで入り、手足の末端の筋肉にゆっくりと届くように意識します。早く歩く必要はありません。常に意識の置き所は、身体の下部である臍下丹田におきます。がんばるぞー、たくさんあるくぞーという気持ちで歩くと、意識が頭に上ります。いわゆる『気が立つ』状態になってしまいます。現代人のがんばるぞ意識、気の張りをぐっともったがんばった状態ではなく、気負いのないゆったりとした気持ちで、酸素が身体の隅々にまわることを意識するように歩いてくださいね。
東洋医学の言葉で説明すると、がんばるぞという意識であるくことは、肝気をたて気を張った状態になります。身体の充実度が足りない人がこういった意識で運動すると、気を張ってがんばることが中心となり、土台の力を養うことができないばかりか、土台の力をも使ってがんばるという本末転倒になってしまいます。
いま必要なことは、土台の力を養うことです。気を立ててがんばることではないのです。
意識のポイントが、頑張るぞ!というときは頭にあります。そして土台の力を養うときの意識のポイントは下腹の臍下丹田の位置なのです。意識のポイントの位置が重要です。
『赤ちゃんが欲しい』という思いで身体を整えようとする方は、なにをしてもがんばりすぎてしまうような印象があります。意識のポイントが下腹から上に、上にとあがってしまっているのです。
こうのとりというのは、がんばったり、狙えば狙うほど匿れてしまうようです。
肩の力を抜いて歩きましょう。
道の端には、名もない花が小さく咲いています。
季節によって変化しているのですよ、気がついていますか。
風のにおいも、毎日違います。
肩の力を抜いて、まわりの自然を見渡してみてください。
沢山の生命がそこここに存ります。
わたしたちも、その一部。
歩く時間の中で、ゆっくりと自然の一部になって溶け込んでみてはいかがですか。
歩く時間を楽しむ、
自然を楽しむ、
生命と存ることを楽しむ。
腎気というのは身体の土台の生命力です。
身体のバリアをとって、ゆったりと楽しむ時間の中から 生まれてきます。
健やかな脾気を
脾気というのは、胃腸の力です。
東洋医学で考える胃腸の力とは、食物を身体にとりいれ、それを受け取り、消化吸収し、しっかりと身体の隅々に配布させることです。また、いらないものを便や尿ですっきりと排泄させることです。人間の身体にとって、当たり前のことですが、とっても大事なことです。
食物の力をしっかり受け取ることのできる身体があってはじめて、食物の力、食物の生命力を享受できるわけです。いくら美味しいものや栄養のあるものをたべても、脾胃の力が小さければ、栄養は素通りしてしまうばかりか、かえって身体に負担をかけたり、疾患のはじまりにもなってしまいます。
『何を食べるか?』ということよりも、『健やかな脾胃を保つこと』が大事なのです。
どんな食物やサプリ、栄養をとるかということよりも、健やかな脾胃であることのほうが重要なのです。逆に言えば、脾胃の状態が悪ければ、どんなに素晴らしい食品を摂取してもなんら身につかないのです。脾胃がしっかりしていれば、食物から必要な栄養をしっかりと選び取ることができますし、いらないものをきちんと出すことができます。脾胃を充実させることは身体作りにとても大事なことなのです。
間食をやめましょう
健やかな脾気を作るためには、脾胃の状態をよくすることが大切です。間食をやめて、毎回の食事を大切にしてください。
間食は、非常に個人差の多い部分です。
脾気の弱い人、胃腸の力のない人ほど間食をする傾向があるようです。 これは悪循環の第一歩でもあるのですが、脾胃の力がないため陥ってしまう罠でもあります。
『食欲がないし、痩せてて栄養が足りないと思うので、ついチョコやお菓子を食べちゃうんです。そうするとまたご飯が食べられなくなってしまって・・・』
これでは、まるで幼児がおやつを食べすぎてご飯を食べませんという悩みと同じことです。間食をやめて、おなかをすかせて、美味しく食事をいただきましょう。
規則正しい、当たり前の食生活のリズムが大事です。
また、お菓子、チョコレートなどの甘いものは直接的に脾胃に負担をかけ力を落とします。また果物も胃腸を冷やすことが多い食べ物です。なるべく遠ざけましょう。
チョコレートはとくに依存的になり習慣になっている方をお見かけします。チョコレートは、肝気をたててくれるので、一時的にやる気がでたり、気持ちがすっきりとします。あの甘味も独特でそそりますね。ただ、脾胃にかける負担はかなりです。背中の真ん中辺りが痛い方や筋肉や間接の痛みがあるかたなど、チョコをやめただけで改善することがよくあるのですよ。習慣から抜け出すことは大変ですが、一度チョコ断ちを挑戦してみてください。
足三里、脾兪、胃兪など胃腸のツボに、お灸をしましょう
足三里のツボへのお灸は、胃腸の状態をよくし、全身の気を引き下げ、身体全体をしっかりさせることにもつなげることの出来る健康法です。ぜひ、取り入れてみてください。
脾兪、胃兪などは背中のツボですので、ご家族に手伝ってもらうとよいでしょう。
やりかたは、市販のセンネン灸などを使うと、手軽にできます。