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二人目不妊、不育症を乗り越えて巡り会った赤ちゃん(42歳出産)

概要

冷えがきつく、体調が非常に悪い状態からの二人目不妊の取り組みです。不育症や着床障害などが判明し、少しずつ、少しずつ前に進み、無事に妊娠、出産とつながり、3000グラム越えの赤ちゃんと巡り会った症例です。

(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」10-3
【case:0208】【神奈川県/藤沢】

ご相談内容

なかなか第二子が授からず、悩んでいます。34才で結婚後、すぐに妊娠し、35才で第一子を出産しました。第一子は、妊娠中毒症を発症し血圧があがり少し早め小さめでしたが無事に出産出来ました。

37才から第二子を希望していますが、なかなか妊娠出来ません。産後から体調が悪く、冷え性がつらいです。冷えに弱く、冷えたとき、疲れたときに背中からお腹が痛みます。

この冷え性はどんどん悪くなっている感じがします。少しのイベントや、季節の変化に身体がついていけない感じがします。

食事はおいしく、空腹感もあり胸焼けがすることはありません。便通の状態もよいです。トイレは近く、産後から夜トイレに起きます。寝付き寝起きはよいのですが、疲れが残ります。

早く第二子が授かりたいと言う思いと、体調の悪さで、今後どうしたら良いのか悩んでいます。

東洋医学的診立て

第二子がなかなか授からないというお悩みですね。また、第一子の出産も、いろいろなトラブルはあったようですが、お子さんが無事に生まれ、生まれは小さかったものの、いまでは充分に頼もしく成長しているようで本当によかったですね。

お身体を拝見すると、問診では胃腸の問題がないようでしたが、食物から滋養を受け取り全身に頒布する力をしめす脾胃のツボ(公孫、大都(SP2)、三陰交、脾兪など)の弱りが明瞭です。そのうえ、冷えの入り込み風邪が身体のなかに停滞している(風邪の内陥)があり、この停滞が非常に強い身体への負担となっています。

胃腸の力不足、風邪の内陥がおこってしまうのは、生命力の底力である腎の力が不足しているためです。この腎の力は女子胞(子宮)の力を支えますし、全身の生命力を支えます。

早く第二子をというあせる気持ちはよくわかります。ただ、ご自身もお気づきのように、このままの体調で妊娠されても、非常にきつい状況であるのは明瞭ですね。もう少し体調をよくすることと、下記しました不育症の検査をお勧めします。体調を改善して、前に進みましょう。

≪不育症の検査について≫
不育症の検査をお勧めします。出産した病院にて不育症の問題はないとのことでしたが、

・手足のきつい冷え(実際に冷たい)
・妊娠初期の黄体機能不全
・赤ちゃんが小さめ
・妊娠高血圧

上記既往がありますから、一度不育症の専門クリニックを受診されてはいかがでしょうか? 私はお身体を拝見して、不育症と診断される可能性が高いと思います。第二子の妊娠を無事に安心して経過するためにも検査をしておいた方が良いかなと思います。

東洋医学的弁証論治
弁証:脾腎陽虚 肝鬱 風邪の内陥
論治:温養補脾補腎 疎風散寒
治療方針:先ず第一に風邪の内陥をとる。このために脾腎の陽気をたて、全身状態をよくしていく。

治療経過

初診:大巨(ST27)、関元(CV4) 右外関ー右臨泣 足三里、三陰交、肺兪、大椎、脾兪、腎兪(BL23)、三焦兪、次髎(BL32) など。公孫、大都(SP2)、拇指丘

漢方薬:苓桂朮甘湯で水滞はコントロールできるものの、脾陽虚のために軽く疏肝しながら補うことのできる桂枝人参湯を服用。

不育症クリニック:不育症と着床障害と診断される。生理の出血が終わった時点でアスピリンを服用。妊娠した場合35週まで飲むようにと指示を受ける。

体調の変化が大きく、とくに8月は辛いと言うことが明瞭なので、9月妊娠、5月出産を目指してみてはとアドバイス。

採卵して、それなりの良好胚はとれるものの、なかなかスムーズな妊娠にはつながらず、不妊治療のクリニックを途中で変更し、複数回の採卵、胚移植ののち、10月胚移植で妊娠。妊娠高血圧にもならずに無事に経過。無事に6月正期産にて3000グラムオーバの元気な赤ちゃんを出産。

あとがき

第一子の妊娠は奇跡のような感じだったなあと思いますとご本人が何度もいわれるように、本当に長い二人目の赤ちゃんと出会うための旅となりました。

なかなか妊娠しないと言うことで、高度生殖医療にステップアップされましたが、それですんなり治療が進むわけではなく、ご自身の体調との兼ね合いが非常に難しい状況は続きました。

しかしながら、上のお子さんとの生活を上手に楽しみながら、ご自身の体調と良く付き合いながら、しっかりと前に進み、不妊治療を終えられ、無事の出産となりました。妊娠中も、不育症のケアをしつつも、しっかりと大きな胎盤を作ることを目指し、養生ケアをおこないました。無事の出産報告を伺ったときは本当にうれしかったです。

二人のお子さんに巡り会われたこと、私も奇跡のようだと感じました。不妊治療は、私達にはわからないなにかに、導かれているような気がすることがあります。そんな導きの手を感じさせる症例でした。多くの人に支えられ、導かれての妊娠。無事なご出産、心からお喜びもうしあげます。