カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 不妊 婦人科

良好胚移植でも着床のみ。焦らず体調アップで妊娠、出産(39歳出産)

概要

グレードの高い胚盤胞を移植しても着床のみで妊娠ができない。年齢要因に対する焦りという状況。ご自身の体調を整えることで、しっかりと着床、妊娠出産までつなげることが出来た症例です。

(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」8-3)【case:0316】【神奈川/小田原】

ご相談内容

よい卵を移植しているのに妊娠出来ません、どうしたらいいでしょうか?

36歳から妊娠を希望しています。大きな問題はなかったので、タイミングで1年間、人工授精を半年ほど試したものの妊娠せず。

体外受精にステップアップして、採卵を2回し、毎回非常にグレードのよい卵はできているのですが、ちょっと妊娠反応が出る程度で終わってしまっています。

年齢も38歳になってしまい、精神的にもいろいろと考えてしまいます。どうしたら良いでしょうか?

今までの不妊治療歴
30歳 子宮内膜症がみつかる
35歳 病院でのタイミングを始める1年、男女とも大きな問題はないといわれる
36歳 人工授精を3回おこなう。クロミッド、デュファストン、プラノバール、ゴナールなどを使う
36歳 体外受精を行う、3つ採卵出来た。新鮮胚にて移植→妊娠出来ず。残りの二つは胚盤胞まで培養したが途中で止まってしまった
37歳 採卵、胚盤胞にて非常によいグレードの卵が2個できた。移植→ほんの少しだけ着床反応があったものの妊娠は継続出来ず

東洋医学的診立て

妊娠をご希望になり、体外受精までステップアップなさっていること。良好胚ができ、移植もスムースで、着床の反応はでるものの、妊娠が継続出来ないということですね。

年齢要因もあがってきて、早く治療を前に進めたい、出産したいというご希望ですね。治療を続けられてもう2年、精神的な不安が出てくるのもあたりまえだと思います。一緒に考えていきましょう。

(1)胚盤胞まで到達出来る採卵が出来ているのですから、自信をもってすすみましょう。

現時点で、ちゃんと胚盤胞まで到達出来る卵が出来ていますね。これは非常にありがたいことです。まず、ご自身で確認納得して頂き、不必要な不安を持たないようにされた方がよいかと思います。自信を持って前にすすみましょう。

(2)ストレスタイプ、気血の巡りをあげましょう。

お身体を拝見すると、身体のボディーの部分(体幹)は、それなりに温かく良い感じです。それに比較して手足は冷えています。そして手のストレス反応のツボががっつり出ています。

これは、身体の緊張状態があり、気血の巡りが悪くなっているということが考えられます。緊張をゆるめ、全身の気血の巡りをあげていきましょう。このためには鍼灸やお灸でのセルフケアが効果的です。

(3)血流の問題

お身体を拝見していると、この血流の問題は、血液凝固系の亢進の課題をもっているのではないかと思われます。いまのところ病院では検査をすすめられていないようですが、私は、不育症、着床障害などの検査をしてみてもいいのではないかと思います。

(4)体外受精の治療を意識しながらも、自然妊娠を意識した日々をおくることを提案します。

今の状況のまま、体外受精を中心にした日々をおくるのはかなり負担が大きいと思います。少し気持ちを切り替え、まず体調をよくすることに意識を集中してみてはいかがでしょうか? 体調が整い、自然妊娠がかなえば自然妊娠、そうでなくても体外受精での治療に大きく貢献出来る時間が過ごせると思います。

治療を休みなく続けて採卵なさっていますね。体外受精や顕微授精などの高度生殖医療受精までステップアップなさっていると、自然妊娠なんて無理と思いがちです。ただ、現状は振りかけ受精でも良好胚ができています。大きな不妊の要因もないとすると、身体の緊張が主因かもしれません。

この場合、採卵をどんどん継続するよりも、一休みしてちょっと心身共にリラックスをお勧めします。今のご年齢、状況であれば、気持ちがあせるようならば3ヶ月、まあいいやあと思うのならば6ヶ月。この期間は自然妊娠への挑戦であり、体調を整え、体外受精再開時に向けての身体作りでもあります。

また2ヶ月前には、採卵のために8つ刺していますよね。これは、ずーっと昔は卵巣のドリリングといって、自然妊娠しにくい方への一つの治療法になっていました。この効果が期待できるのが約半年間。こう考えてみるのもよいのかなと思います。実際に、これで妊娠なさる方も多いんですよ。

年齢要因がだんだん迫ってくる年齢になると、いろいろあせりますよね。休憩をするのも大事。そしてその休憩を効率よくするのが不妊治療を成功させる鍵です。

この体調を整える時間が、結果的に、良好な卵を作ることに貢献し、自然妊娠をする場合もありますし、また自然妊娠をしなくても、体外受精をしてみると、今まで以上にグレードのよい卵がとれ、妊娠につながるという事も多いです。

一緒に前へすすみましょう。

治療経過

週に1,2回のペースで鍼灸治療スタート
2ヶ月後、3ヶ月後、採卵→あまりよい卵ができず
7ヶ月後、採卵→凍結 よいグレードの卵が出来た
10ヶ月後移植、妊娠→無事の出産

初診時の鍼灸治療
右の外関(TE5)、陽池(TE4)、左大都(SP2)左公孫、両三陰交 右足三里(ST36)
中脘(CV12)、気海、関元(CV4)
肺兪(BL13)、左脾兪、胃兪、腎兪(BL23)、次髎(BL32)

あとがき

無事にご出産、赤ちゃんを迎えることが出来て本当によかったなと思います。

不妊治療をすすめていると、妊娠しないからという理由でステップアップされ、体外受精へ。胚移植しても妊娠しないから繰り返す。グレードが悪いから誘発方法を変えてみるなど、無限ループに陥ってしまうことがありますね。

こんなときに、『不妊の原因は?』『病院を変えたら?』『もっと検査してみては』『薬があわないのでは?』ということも当然考える要因にはなります。しかしながら、その部分を追求しすぎて悪循環に陥ってしまうことも多々あります。

妊娠にはあたりまえの淘汰のプロセスもありますし、またシンプルに健康状態がよいと妊娠しやすいということもあるかと思います。

考え込まずに、一歩引いて、『妊娠』とか、『不妊治療』にだけ注目するのではなく、体調全般をあげていくということが、結果的に、不妊治療を前に進め、結果につながる治療となることができるのかなと思います。逆に言えば、体調が悪ければ、前に進まないのも不妊治療なのです。

また、ご自身について、『何が一番の課題なのか』をいったん医療的な不妊治療だけの視点から引いてみることも大事だと思います。案外、気がつかないポイントに道が開けるヒントがあります。