症例集→産後のだるさ、下痢、腰痛、肩こり(29歳・女性)【case:0009】
.9)産後の腰痛肩こり 弁証論治29歳女性 子供ひとり 夫と3人暮らし。
身長155センチ 体重52kg、出産後4ヶ月目
主訴:腰痛、肩こり
..時系列の問診
27歳ごろ、仕事中に少し腰痛を感じることはあったがさほど気になるものでは
なかった
29歳 妊娠、妊娠6ヶ月目のおなかが大きくなってきた頃から腰痛が悪化。
29歳 出産 出産自体は回復よく元気だった
産後1,2週間、下痢がとまらなくなった。
産後一ヶ月から腰痛が急に悪化。
朝起きると非常にいたい。
買い物などで出歩くと途中から痛くなってきてしょうがない。
産後4ヶ月(現在)だんだん悪化しているが、
いまは辛い状態になれて来ている感じ。
..問診
腰痛は、一日中痛い、また身体全体にだるい。
妊娠、出産育児によりおこった腰痛であると自分では思う。
立っているとき、子供を抱っこしているとき、朝起き上がったときにとても痛い。
【普段の状態について】
季節の変わり目につらい。
食欲は普通、食事は不規則で早食い、空腹感は時々。いつも美味しく感じ、時々おなかが張ったり
胸やけがする。
産後毎日チョコレートを間食している。
喉の渇きはよくある。粘ったり違和感はない。
便通は2日に1回。時々おなかがはってつらいことがある。出切らない感じは時々。
コロコロ、バナナ状。こぶしだい。便器に付着することは時々。
小便は1日3回、残尿感などない。授乳時に夜間トイレに行く。
妊娠中から寝つきが悪くなり寝起きも悪い。産後に特に悪化。
疲れる夢を見る。
生理痛はいつもあり、腰が鈍痛を感じた。生理の色は濃く、小指大の塊がまじることがあった。
自然妊娠で37Wで2680グラムの子供を出産。体重は妊娠前が50kgで7kg増加。現在は52kg。
出産後4ヶ月たつが身体がとてもだるい。母乳は良く出ている。
..切診
【脉診】右の寸口浮いてコロコロ下感じ
左右関上、弱い感じ
左右尺位全体に浮いている
【舌診】やや紅 あかるい 舌裏怒脹なし
【腹診】両大巨脱け 軽い冷え
【経穴診】
左列缺 かげり
左内関 ゆるみ
左合谷 冷え、ゆるみ
左外関 冷え
左陽池 冷え
下肢ーあまり経穴が出ていない
左申脈冷え、左臨泣冷え、右臨泣つまり
両下委陽 抜け
大椎風門 冷え
両肺兪 抜け、発汗
両心兪 小さく抜け
左脾兪、胃兪抜け(左胃兪が抜けの中心)
左三焦兪 抜け
右脾兪、胃兪、三焦兪 抜け
..五臟の弁別
【肝】
右臨泣つまり
産後にチョコレートを毎日食べている(肝気をたかぶらせる可能性)
【心】
喉の渇きはよくある(心熱の可能性)
【舌診】やや紅 あかるい (心熱の可能性)
左内関 ゆるみ
両心兪 小さく抜け
【脾】
季節の変わり目につらい。(脾虚の可能性)
不規則で早食いの食事、空腹感は時々。おなかが張ったり胸焼けも時々する。
(脾虚の可能性)
産後にチョコレートを毎日食べている(脾気を非常にいためる可能性)
便通が時々で切らない感じ、おなかが脹る感じ(脾気が弱い可能性)
【舌診】やや紅 あかるい (胃熱の可能性)
左脾兪、胃兪抜け(左胃兪が抜けの中心)
右脾兪、胃兪、三焦兪 抜け
【肺】
左列缺 かげり
左合谷 冷え、ゆるみ
大椎風門 冷え
両肺兪 抜け、発汗
【腎】
妊娠6ヶ月目ぐらいから腰痛悪化(腎虚の可能性)
産後1,2週間、下痢がとまらなくなった。(腎虚の可能性)
朝起きると非常にいたい。(腎虚、とくに陽気不足の可能性)
買い物などで出歩くと途中から痛い(腎虚の可能性)
産後とくに寝つきが悪く寝起きが悪い(腎虚の可能性)
左外関 冷え
左陽池 冷え
左申脈冷え、
両下委陽 抜け
左三焦兪 抜け
右三焦兪 抜け
【風邪】
産後1,2週間、下痢がとまらなくなった。(風邪を引き込んだ可能性)
【脉診】右の寸口浮いてコロコロ下感じ
左列缺 かげり
左合谷 冷え、ゆるみ
左外関 冷え
左陽池 冷え
左申脈冷え、
両下委陽 抜け
大椎風門 冷え
両肺兪 抜け、発汗
..病因病理
妊娠ー出産は腎気の支えが主導でおこなわれます。
とくに出産は大きく気血の損傷を伴い、腎気を大きく落としてしまう可能性があります。
順調な経過であれば生理的な範疇として回復基調にのれますが、場合によっては、大きな気血の虚損から
回復できない場合があります。
本症例は、
もともとの腰痛が妊娠で少し悪化するも、無事なご出産で出産後も回復がよく
元気だったという状態であったのに、産後、気血が大きく損傷している間に、寒邪の侵襲を受け、
1-2週間下痢が止まらなくない状態になっています。産後の生理的な腎気の弱りの状態であったところに
風邪を引き込んだために、腎気の弱りの回復が非常に遅れてしまったと考えられます。
産後より、チョコレートを毎日食べてしまうなどという脾気を弱らせる食生活が、より
産後の回復や風邪の治りを悪くし、産後の気血の虚損が回復しがたい状態になったうえに、風邪が内陥した状態と
なり、腎気が回復せず、だんだん悪化する腰痛、身体のだるさとなっていると思われます。
まず第一に内陥した風邪を取り去ること、産後の腎気の虚損を立て直すことが簡要かと思われます。
..弁証
風邪 腎虚
..論治
去風邪 補腎
風邪を取り去り、腎気をたて産後の回復をはかる。
..生活提言
妊娠ー出産は女性の健康にとって大きな曲がり角になります。
上手に切り抜けないと、のちのちに続く不調のはじまりになってしまいます。
また、出産は身体の力を大きく落としますが、『生理的な出来事』の範囲でもあり、
身体自体が『回復しよう』という方向性をもっているときでもあります。
なるべく早めに治療をすすめて、まず第一に冷えの入り込みを取り去ることを目標とします。
こののち、弱った身体を少しづつ土台から立て直すようにしていきましょう。
また、忙しさなどあり、どうしてもチョコレートなどに手が伸びるようですが、身体の建て直しにとっては
好ましくありません。チョコレートは是非全面的にやめて、間食のあり方も見直してみてくださいね。
赤ちゃんがいらっしゃるとなかなかご自身の健康までは手が回らないことだとは思いますが、
お母さんの健康は赤ちゃんにとってもなによりです。
年齢的にもお若いです。産後の回復基調のあるうちにこの状態を脱するようにしていきましょう。
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