カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 40代 不妊 不育 流産

自然妊娠後の流産、不妊不育からの妊娠、出産(41歳出産)

概要

自然妊娠後の流産、のち妊娠もできず。ステップアップで大学病院での体外受精、顕微授精の治療をするものの妊娠できず。卵子の質が悪い、着床しても継続出来ないという不妊不育の状態から、無事の妊娠、出産へ。

(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」10-1
【case:0213】【神奈川県/小田原】

ご相談内容

不妊治療が前に進みません。35才、36才の時に自然妊娠したものの心拍が確認できず流産となってしまいました。その後、なかなか妊娠しないので、大学病院で不妊治療の相談をしました。

自然妊娠をしたことがあるので、人工授精を勧められ6回行いました。しかしながら、妊娠できませんでした。

そこで、体外受精ならばということで、さらなるステップアップをしましたが、卵胞刺激を注射でしっかりと行い、ホルモン補充周期にて凍結胚盤胞を移植をするものの、全く妊娠すら成立しません。こんな状態ならば、自然妊娠したときの方が良かったような気もします。

体調そのものは、別に気になることはありません。不妊治療のドクターからは『卵子の質が悪い』と言われています。まだ凍結胚が1つありますので、それを移植する予定です。妊娠するにはどうしたらいいでしょうか?

東洋医学的診立て

流産、残念でしたね。自然妊娠をする力があるのに、念のためにとステップアップしておこなった人工授精や高度生殖医療の体外受精や顕微授精などを行って、凍結胚盤胞を移植するところまでしているのに、妊娠すら成立しないと言うことですね。なんだか無限ループに落ちてしまっているようで、どうしたらいいのかわからないというお悩みはもっともですねえ。

東洋医学では身体の状態を五臓の関係性から考えていきます。肝心脾肺腎の五臓です。一本の木にたとえれば、肝という木が脾腎の大地に根ざし、心肺の天空に枝葉を伸ばし気持ちよさそうに揺らいでいるというイメージです。脾というのは胃腸の力で、脾胃という二つのセットでも考えます。

いまのお身体の状態は、ご自身で気になるところがないという状態ですね。ただ、東洋医学的な観点から生命の状態を考えると、子供の頃からのひどいアトピーや、検査で引っかかる程度の血尿など、もともとの素体に脾胃の弱さ、そして胃腸の力をバックアップする腎の弱さがあるようですね。この脾腎の大地の弱さが、いま一歩、不妊治療が前に進まない原因になっていると思われます。

とくに、腎気というのは、身体の力の余力です。そして女子胞(子宮)を支える力ともなります。全身の生命を支え、とくに女子胞(子宮)を支えていくわけです。妊娠は身体に余力があって初めて成立します。まず余力をつけていきましょう。

また、精神的なストレスというよりも、不妊治療のいろいろな事が肉体的なストレスにつながり、気の巡りを悪くしているようにも思います。

東洋医学的弁証論治
弁証論治:腎虚肝鬱 
治療方針:腎気を流産前の状態まで戻していく。血流の悪さを腎気の回復と肝鬱の解消で狙っていく。

≪妊娠へ向けて≫
【現状の認識】
・過去に自然妊娠しているということは、妊娠に必要なキャッチup、受精、着床などに対する大きな問題はないということなので、自身をもって前向きに進みましょう。

【現在の問題点】
・自然妊娠をしているのにもかかわらず、人工授精、体外受精などで妊娠が成立しないと言うことは西洋医学的な課題が、ご自身にとっての一番の課題ではないという事です。東洋医学でいうところの、女子胞(子宮)を支える全身の生命力の支えとなる腎気の低下によって、生命力が落ちたために妊娠が成立しなくなっている可能性が高いです。

・腎気の低下が問題であるとすれば、一番の課題は、西洋医学的な費用のかかる治療を繰り返すことではなく、自分の生命力をあげることです。

・年齢要因が、かなり不妊治療には不利な年齢になってきています。“治療を急ぎ”ましょう

【不妊治療について】
・基本的に自然妊娠が狙える方ですが、年齢要因が厳しくなっていっているので、“より妊娠の確率をあげるため”に西洋医学的な治療も、自然妊娠を狙うことと並行して積極的におこなう時期と思います。

・時間的に急いだ方がよい現時点では、大学病院での不妊治療は不向きと思います。転院を考えましょう

・大学病院にて不育症の検査は済んでいるということですが、もう少し踏み込んだ詳細な検査を行った方が良いかと思います。

・凍結胚があと1個あるといことは、大事なお宝があるということです。自身をもって前に進みましょう。

治療経過

週に1,2回の鍼灸治療。
自宅施灸;陰陵泉、三陰交、大巨(ST27)、関元(CV4)、腎兪(BL23)、次髎(BL32)

4ヶ月後:めまいなどの症状の回数が減ってきた。凍結胚を移植するー妊娠せず
5ヶ月後:転院 採卵するも移植できず。凍結胚する
6ヶ月後:再度採卵する、新鮮胚での移植。新鮮胚盤胞を移植できた。
7ヶ月後:無事の妊娠、鍼灸治療の頻度を1日おきにする。
9ヶ月後:体調不良、仕事に休みをもらってとにかく安静にする。鍼灸治療継続。
14ヶ月後:出血があり安静入院
16ヶ月後:出産 3000グラム弱のかわいいベビーの誕生

あとがき

病院での検査は、充分に行ってくれてはいたと思いますが、西洋医学的な観点からのコメントなります。いまの不妊が、西洋医学的な観点からのアプローチで解決できない場合は、無限ループに陥るようなことになってしまいます。

『目の前の患者さんの不妊をどう解決していくか』という総合的な視点でのアプローチが不妊治療ではとても大切なのです。

ドクターの仰るように、
“不育症でも原因はない、AMHが低い、採卵しても卵がとれない、移植しても着床しないのは、『年齢や卵の質の問題』”

というお言葉は、正しい言葉ではあると思います。でも、目の前のあなた自身の不妊を解決するためには、それだけでは不足しているかなと私は思います。

過去に妊娠歴があり、着床だってしている人の不妊をどう前に進めていくかということが、とても大切なポイントになるわけです。『妊娠できない理由』を探すのではなく、『妊娠するための方法』を探していくことが大切だと私は表いるのです。

一緒にがんばってこれて、本当にうれしいです。ご主人、御母様とも赤ちゃんとの時間を楽しんでいるようですね。なによりです!