概要
4歳のお子さんとフルタイムでの仕事をしながら、体調管理を上手に優先し、不妊治療を上手に乗り切っていき無事な出産。
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」12-3)
【case:0334】
ご相談内容
39歳女性 155㎝ 48kg。36才の時に第一子を妊娠出産しました。産後、体調が悪く体重が6キロ減少しなんとか甲状腺の課題と指摘され回復出来ました。
第一子は妊活してすぐ恵まれましたが、今回は半年ほど経ちますがなかなか妊娠出来ません。
また、フルタイム勤務で身体が疲れていることや頭痛などが気になります。体調をよくしながら、妊娠そして出産したいと思っています。
東洋医学的診立て
子育てをしながらも妊活、なかなかハードですね。
甲状腺の課題は、妊娠、出産にはとてもポイントとなりますので、しっかりと病院でのフォローを受けながら妊活なさってください。
- もともとの強い肩こりや頭痛が産後からより悪化していること
- 梅雨時に体調悪化すること、秋冬に頭痛や肩こりなどが悪化していること
- 頭痛、肩こりは20代前半から非常にきつく、眼も疲れやすいこと
- 食事は、空腹感があり、お腹が張ったりすることはないこと
- 二便に問題はなく、睡眠も良好。しかしながら疲労感があることはよくあること
- 生理は、20代よりも経血量は減少、高温期に腰や下腹、胸の張りなどがつよいこと
東洋医学的な体表観察から:
右の尺位から寸口の輪郭が甘い。
舌やや色褪、脾募薄くあり、中脘(CV12)動機、臍が抜け、気海(CV6)抜け、左大巨(ST27)奥が冷え手の皮膚が薄い、内関(PC6)やや陥凹、外列缺(LU7)陰りあり、右合谷(LI4)発汗、右神門(HT7)はれ。
大椎発汗。右胃兪(BL21)、両三焦兪(BL22)陥凹、抜け。次髎(BL32)つまり。頭部やや熱感あり。
下肢に静脈瘤少しあり、左右大都(SP2)冷え、左公孫(SP4)陥凹冷え、右湧泉(KI1)冷え、三陰交(SP6)冷え、復溜(KI7)つまり右>左、陰陵泉(SP9)やや緩み。
足の冷え:三陰交(SP6)から下、腎経Lineつまり。
皮膚の下の内湿を思わせるような重さがある。
お身体を拝見していると、確かに体幹に比べて強い冷えが下肢中心に感じられます。足首から下の三陰交(SP6)、腎経Line、公孫(SP4)大都(SP2)などの冷え感と、上背部、頭部の熱感などをみると、全体の気血の巡りの悪さを感じさせます。そして皮膚の薄さと脾募ののりかた、皮膚の内湿を思わせる動きの悪さなど、この冷えに体内にある湿気がかさなり、気血の巡りにより重さを加え、巡りにくくなっているために、肩こりや頭痛などが重くなっていると思われます。
臍、大巨(ST27)、三焦兪(BL22)、腎兪(BL23)などという身体の土台となるべき部位の経穴も抜けているのは子育ての疲労や、産後の体調悪化の可能性もあります。土台の力を回復させつつ、気血の巡りをよくし、妊娠、出産をのりきっていける身体にしていきましょう。
妊活へのアドバイス
全体に気血の巡りが悪いことが、頭痛や肩こりの大きな原因となっています。
また気血の巡りが悪いことに加えて、内湿という東洋医学でいうところの湿気が身体にあり、これがより巡りを悪化させ、肩や頭などよく使うところに負担をかけています。巡りをよくすると言うことの前に、脾気という胃腸の力をアップさせるという前提をしっかりとさせることが、気血の巡りに大切ですし、この脾気をしっかりしていくことは、妊活の子宮卵巣血流をあげていくことに直結します。しっかりと体調アップしていきましょう。
また、非常に物静かで、冷静な方ですが、ご自身の内に秘めた我慢強さは、気血の巡りを悪くする要因でもあります。時にストレス解消で身体を動かしたり、気持ちをゆったりとさせることも大事です。我慢強い方はしらずしらずに身体に力が入り、巡りが悪くなっていることがあります。肩の力を抜いての生活も大事ですよ。
食事はもともと気を使ってバランスのよい食事となっていますが、主菜でのタンパク質摂取に加えて、ビタミンACEを意識して血流のよいお身体であるように意識していただければと思います。
不妊治療に関しては、年齢要因もありますので、病院の指示同理にステップアップなさっていくのがよいかと思います。
東洋医学的弁証論治
弁証:脾虚内湿 腎虚肝鬱
論治:益気補脾補腎、疏肝理気。
治療方針:補脾を中心とし、気血の巡りをよくしていく。内湿に関しては、補脾と全体の理気により、自然の流れで排出していくようにしていく。
治療経過
ビッグママ治療室 初診
1)大巨(ST27)、関元(CV4) 臍の温灸
右神門(HT7)、右外関(TE5)、右陽池(TE4)、右足三里(ST36)、三陰交(SP6) 鍼してお灸
2)肺兪(BL13)温灸
3)右胃兪(BL21)、 三焦兪(BL22)、左腎兪(BL23) 次髎(BL32) 鍼して温灸
セルフケア:大巨(ST27)、関元(CV4) 三陰交(SP6)、右の足三里(ST36)外関(TE5)陽池(TE4)
初診治療後、一度も目覚めずに起きることができた。
その後、週に1度ぐらいのペースで鍼灸治療。
3ヶ月後採卵し凍結。
足の血流がよくなく、とくに三陰交(SP6)から下の冷えがきついので、しっかりと血流を出るようにセルフケア指導。
6ヶ月後移植ー妊娠ー無事に出産
あとがき
仕事、子育てと色々な課題があると、なかなかご自身の体調管理までは手が回らないというのも現実だと思います。そのなか年齢要因を意識しながら、ご自身のために時間をつくり、上手に第二子の妊娠、出産とつながっていけたことは、ご本人の地道な努力のたまものだと思います。
もともとの気血の巡りの悪さは、ご自身の人生の課題でもあるかと思います。疲労を溜め込みすぎないこと、意識しない我慢を重ねないこと、食事でのビタミンACEなど意識しながら楽しく日々を送ってくださいね。