妊娠したいというご希望の方とお話していると、排卵誘発などの治療を非常に長く受けていらっしゃる方がいて、驚くことがあります。
タイミングや人工授精はある程度(6回ぐらい)トライしてみたら、それ以上同じことを繰り返すのはあまり意味がありません。
このときに、どういった方向性で考えるのか、中心になるのは目の前のドクターではなくあなたです。
妊娠をどうやって成立させていくのか、またどの方法がいいのかということに関しては、ドクターの間でも考え方によってかわります、またその病院の設備状況等によってもかわります。
その病院では一番高度なステップであっても、不妊治療全体をみまわしての一番高度なステップではない場合があります。
あなたにとって最良の方法を最終的に決めるのは、病院のドクターではなく、あなた自身なのです。
不妊は病気ではありません。
だから、患者さんそれぞれも、ご夫婦の考え方に添った選択肢があり、どれも許されるものです。そしてそれは病院側でも同じなのです。ドクターによっても考え方が違います。妊娠に致る道は、ご夫婦の道です。『知らなかった』と後から後悔しないよう、治療に関する選択はご夫婦が中心になっておこなうべきだと私は思います。
治療歴を候うと、10回、20回の人工授精、毎月の排卵誘発剤を使ってのタイミング治療を行っている方が多くいらっしゃいます。私はいつも疑問に思うのですが、ただ漫然と、何度も、何度も過排卵を起こさせる治療で妊娠に致ることがどれぐらいの割合であるのでしょうか。
ときに、患者さんご自身が、妊娠に至らない投薬による治療が続くことで、体調が悪くなったり、治療に対する反応が悪くなっていることを実感しているケースがよくあります。
『不妊治療で体調は確かに悪くなっている、でも妊娠し ないのだから続けるしかないのかしら・・・?』
『病院の先生が、じゃあ来月もとおっしゃるので、毎月その流れで・・・』
と迷いながら、年月を重ねてしまっている方が多くいらっしゃいます。
こういった治療が長くなってしまう場合に見受けられるのは
1、受診している医療機関でできる生殖医療サービスが人工授精どまりの場合
通っている病院が、人工授精までしか出来ない場合、どうしても人工授精などの回数が多くなる傾向を感じます。よほど患者さんが強い希望を言わない限り、病院側から積極的に転院を進められることがない場合があるようです。この場合は、通っている病院の先生とよく話し合い、もっと高度な生殖医療が必要かどうかを見極め、病院選びをしていく必要があると思います。主役はあくまでもご自身です。またご自身で考え、転院を決めてもよい場合もあります。
2、一度妊娠している場合
二人目不妊や、妊娠(出産にいたらなくても)経験がある場合は、長くタイミングや人工授精を続ける傾向があると思います。
こういったケースは、二人目不妊の項目を参考にしていただき、妊娠にいたるにはどうしたらいいのかということを考えてみてくださいね。身体の力が落ちて妊娠に至らない場合もあります。そういったときは、まず東洋医学的な治療を考えてみてはいかがかと思います。
また、流産を繰り返す場合は、不育因子が影響している場合があります。これは専門的に診ている病院で検査してもらいましょう。妊娠と同時に投薬などを受けることが必要なケースもあるようです。これもドクターとよく相談して、しっかりと作戦を立てる必要があるケースだと思います。
3、体外受精などの治療には抵抗感があるから
薬剤などの治療を長時間継続することのデメリットは承知しながらも、「体外受精など高度生殖医療の治療に踏み切るのは、抵抗感がある」という理由で、排卵誘発剤などの薬を使いながら、タイミングや人工授精をし続けるとうケースです。
不妊の治療に対する選択は、基本的に、ご夫婦の考え方によりなされるものだと私は思っています。赤ちゃんが欲しいけど、「体外受精までは行わない」という選択も、その方々の生き方の選択肢としては、理解できます。
ただ、なんとなく『体外受精なんて大それたこと考えられない』と思っていらっしゃるようでしたら、それはもったいない考えだと私は思います。
今、体外受精などの高度生殖医療は当たり前の医療となっています。私に勧められて、重い腰を上げて、勇気を振り絞って体外受精をしている不妊専門病院にいかれた方が、今まで何人も
『なんでもないことだった、特別なことと思っていたけど普通のことだった』
『先生に勧められて、いやだなあと思いながらいってみたけど、 いってみて本当によかったと思います。』
体外受精はお金もかかりますし、精神的にも経済的にもハードルがかなり高いことはわかります。『体外なんて・・』とおっしゃるのはどなたも同じです。
それでも、いったん体外受精などを中心とする不妊専門病院にいかれた方は、『薦めてもらってよかった』『いってよかった』とおっしゃいます。
専門病院にいかれると、いままでわからなかった原因に対応してくれる場合もありますし、一回の周期も無駄にせず、一個の卵もおろそかにしないスムーズな対応に驚かれる場合もあります。餅は餅屋へといいます。専門に扱っているという意味は大きいなと思うケースが多くあります。気分だけで決めてしまわないでくださいと私はよくお願いしています。
4、自然妊娠を中心にという選択
体外受精は治療法の選択肢として考えないという場合は、薬剤を多く用いて、腎気(身体の土台の力)を落とし、より不妊状態が強くなるという悪循環をしないように、鍼灸など東洋医学の力を積極的に借りて、身体の状態をよくして、妊娠を狙うのが、現実的な選択肢ではないかと思います。
妊娠には、一個の排卵、一個の受精、一個の着床があればいいわけで、沢山排卵させる治療で結果が出ない場合は、沢山排卵させるデメリットの方が多いわけですから、不必要なことはせずに、身体の力をつけ、生命力をあげることを中心に考え、作戦を練っていただければと思います。