体外受精ー胚移植(IVF-ET)の周期に入っている方も、基本的には、不妊治療を御希望の方への身体のフォローということと同様のことをしていきます。ただ、はっきりと受精卵を戻したタイミングなどがわかっているので、時期をピンポイントで狙い、身体を整え、着床を助け、妊娠へと導くという治療方針で、鍼灸治療をしていきます。
ホルモン剤の投与と、からだへの影響
AIH(人工授精)のため、タイミング治療のため、体外受精の採卵のために、かなり長期、大量のホルモン剤の投与を受けていたり、それを何度も繰り返している方もいらっしゃいますね。そういった身体は、腎気(身体の土台の力)が衰えがちになっています。
排卵を促す治療は、確かに腎気(身体の土台の力)を一時的に落としてしまうことは事実だと私は思います。それでも、大量のホルモン剤を使う治療が1、2回で妊娠に結びついてしまえば、それは一時的な問題として、あまりこだわる必要もないと思います。
問題となるのは、何度も身体の力を損なう治療を繰り返している方、1回の周期でも強い治療を受けている方の場合です。身体の土台の力(腎気)の落ちる治療での悪影響のため、身体の力が弱り、卵を作る力、育てる力が弱くなり、結果として『薬に対する反応が悪い』『体調が悪い、疲労感が強い』『採卵できない』『次の周期に入れない』などということになってしまいます。
体外受精のためのホルモン治療で身体が悪循環に陥らないよう、少しでもバックアップ(腎気をあげる)をする必要のため、鍼灸での生命力をあげ、土台の力をつける治療を積極的にしていきます。
ホルモン剤が投与される治療を、必要以上におそれることは、貴方の妊娠への道を時間的に遅らせてしまう可能性があります、必要以上に恐れる必要はありません。
しかしながら、いまの治療方法を鵜呑みにして受身に繰り返すことは、身体に対するダメージ、そして妊娠を考えるときに非常に貴重な時間がどんどん経過してしまう可能性もあります。
身体に対する直接的なダメージと、年齢があがってしまうというダブルのデメリットがでてきます。
最小限の投与で、最大限の効果を出せるように、しっかりと医師と話し合い、そのうえで、その治療を受けるために出来る御自身の身体の土台作りを行っていきましょう。
薬の効き易いからだに
体外受精の方への鍼灸治療は、全周期を通して、まず土台となる腎気を養うことを中心として行なっていきます。そして土台の力がでてくることで、体外受精に使われる薬などの反応がよくなる方が多いようです。少ない薬で大丈夫だった、同じ薬で採卵数が多かったなどのお声をよくききます。土台作りはなんにせよ、とっても大事です。
採卵、戻しをしたら
採卵のあとはまず、身体の疲れをとることをメインにします。とくに、採卵は、下焦の気が抜ける感じがする方が多いです。つまり、下腹の臍下丹田の力が弱くなっているのです。これを補い、十分に腎気(生命力の土台、妊娠にとても大切な力)を養っていきます。また、ご自宅で棒灸を使っての手入れもお勧めします。
着床を助ける
受精卵をもどしたあとの着床前後の時期には、身体の欝滞を取り去り、ストレスの無い暢びやかな身体にする治療をおこなっていきます。これにより、受精卵(胚)をすんなりと受け入れられるような身体作りをします。
身体に緊張、すなわちストレスバリアがあると、受精卵が着床できないようです。身体の力をつけ、下腹を充分暖めた上で、身体をすっきりさせることに重点をおいていきます。
この治療は、自然妊娠を狙うケースでも同じです。
着床というのは、不思議ですね。
ここまでは、受精卵という生命と、母体という生命は別のものです。
受精卵が子宮内膜にふんわり降り生命の手を伸ばします。
母体側がそれを受け入れ、受精卵と母体がひとつになって交流する。
ここで初めて妊娠が成立します。
受け入れること、溶け込むこと。二つの生命がひとつになってこれから10ヶ月の旅をはじめます。
子宮内膜が、優しく受精卵(胚)を受け入れられるように、すっきりとした身体を作りをします。
妊娠反応プラスが出たら
妊娠反応をみた時点から、安胎の治療に切り替えます。いままでは、土台の力をつけ身体をすっきりとさせることで、受精卵(胚)を受け入れられる身体作りを中心に考えていきましたが、今度は、受け入れた受精卵(胚)をしっかりと守り育む治療に切り替えていきます。
この時期の流産は、赤ちゃんの生命力によるものが大半といわれています。確かに、淘汰のなかで、自然に帰っていく卵ちゃんもいるでしょう。
そういったなかでも、お母さんのしっかりとした腎気の土台をはぐくむことで、受け止められることもあります。できる限りのことをして、あとはコウノトリの神様に任せる。私たちにできるのは、受け入れ態勢を充分に気持ちよいものにしてあげることだけです。赤ちゃんの生命力を応援してあげましょう。