月経の二日から十日前になると、憂鬱になったりイライラしたりすることはありませんか?
カリカリしたり、八つ当たりしたりなど、気持の制御がきかなくなったり、頭痛やめまい、むくみ、肌荒れなど非常に広範にわたる症状がPMS(月経前症候群)と呼ばれるものです。
西洋医学的には『体液貯留説』や、『ビタミン欠乏説』、『ホルモン分泌異常説』などが挙げられていますが、これといった決めてがないようです。
東洋医学的に考えてみましょう
月経前の二日から十日というのは、どういう時期なのでしょうか?
月経ののち一四日目ごろに女性の身体では排卵があります。陰(卵子)を生じたために残された陽が全身をめぐり高温期をつくっていく時期です。そしてまた、衝脉、任脉は子宮を養い、着床にそなえる準備をする時期です。
平素のからだとの関係
月経前の高温期は、陽気が全身に立ち上り、衝任脉の気血が子宮に注がれるためときです。平素からの身体の状態がよければ、陽気が全身に立ち上り気が偏在しがちなことも、衝任脉が子宮に力をそそいだため不足がちになることも『生理的なリズムの範囲』として受け止められます。逆に、平素からの身体の状態がわるければ、これらの現象が身体への負担となり、結果として困った症状をさまざに生み出すこととなります。
もう少し具体的に考えてみましょう
平素の状態がイライラしがちで、緊張感が強いタイプの方
東洋医学的には、肝木の気が欝滞を起こしやすい人であると言うことができます。
肝の経脉は横隔膜を貫き、脇肋に分布し、乳頭を過ぎ、少腹を循り、生殖器をまといます。肝の気機が暢びやかでなくなるということは、その分布する経脉が滞り欝滞しますので、月経前に乳房が脹り痛みがあったり、脇肋が脹ったりします。
さらに肝気が強く欝滞して熱がでますと、身体の上部を侵しますので、頭暈頭痛し、いらいらして眠れないといった状態になります。
またさらに肝木がの気が胃腸の気を犯すと、おなかが痛くなったり、下痢、嘔吐などといったさまざまな症状を呈することになります。
胃腸の状態が悪い人
東洋医学的には脾胃の状態が悪い人であるということができます。胃腸は食物消化し体中に運びます。胃腸の力がおちますと、消化吸収し身体に運搬することがしにくくなります。
しっかりと栄養を受け取ることができないばかりか、水の捌きがわるくなり、湿濁を生じたり、胃腸の気が落ち込むことにしたがって、水のような下痢や、全身のむくみをおこすことになります。
腎気が衰えがちの人
高温期といのは、腎気を土台として立ち上がる陽気です。この土台である腎気が弱い人(腎の陰気、陽気の両方が虚している)の場合は、高温期というからだの負担のためより腎気の弱さが明確になります。
腎の暖める力である腎の陽気が虚すことにより、脾の陽気を温めることができなくなります。脾気は健やかに水を運化する性質がありますので、これが失われることにより、水湿が下に注ぎ下痢になったり、身体に満ち溢れたりしむくみとなったりします。
腎陰が虚している人の場合、水不涵木と〔水が木を養わなく〕なりますので、肝陽(肝木)の上亢が激しくなって、頭暈頭痛し、イライラして不眠におちいることになります。腎水の陰が虚して上部の心火を押さえることができなくなると、心火が上炎するようになるため、口内炎ができたりします。心火がさらに盛んになると、いっそうイライラします。
高温期の中に突発的な体温の高さがある場合がこのケースです。高温期は体温が高い時期ですが、高いなりに安定していることが大事なのです。腎陰が虚している場合は、虚火がでてくるため不安定に高い、突発的に高い体温となります。