カテゴリー : 講演記録

2007年 山下湘南夢クリニック講演「不妊と鍼灸治療」

不妊治療に鍼灸は効くのか?

「鍼灸は効くのか?」というご質問を頂くことがあります。

この質問、鍼灸師に聞けば「効きます」と当然にいいますね。私も同じです。結局目の前で成功体験を見せられるわけですから、「効くなあ」と思わざる終えないんですけどねえ。でも、私は、鍼灸は効くの? のまえに、不妊治療(身体治療)には何が必要かを考えることが大切だと思います。

つまり不妊治療を考える身体には、どういったことが「必要」なのかを考えることが大切なんですね。その「必要なこと」に鍼灸がどのような答えをもっているかということが重要です。

また、もう一点考えて頂きたいのですが、不妊治療を考える方は「何がいい」という情報は沢山お持ちだと思うのですよ。でもね、本当に必要なのは「自分の身体には何がいい?」ということなんだと思います。

鍼灸治療というと、鍼灸という道具立てを使って身体を整えてもらえるもんだと思っている方が多いと思います。でも、私はその鍼灸治療の前には当たり前のように「東洋医学的なお身体のみたて」があり、これが「自分の身体にはなにが必要か」を答えてくれる鍵になります。

つまり、鍼灸という道具立ての前の「四診」がポイントなのです。

四診でお身体を把握するということが東洋医学の醍醐味なんです。

これが
 「あなたの不妊治療には何が必要か?」
の答えにつながっていきます。

鍼灸治療はどこで受けたらいいですか?という質問もよくいただくのですが、この「四診」が出来る治療院をお勧めしますと私はよくお返事しています。(これが案外むずかしいんですけどね)

私と不妊との出会い

私が「不妊」という言葉と初めてであったのは、23年ほど前の自分自身の妊娠出産体験のときです。

マタニティースイミングで出会った妊婦友達(のちにママ友達)が、長らく不妊治療をしていて35才のときに病院の先生が「治療をおしまいにしましょう」といわれたのよなんてお話をしてくださいました。そして彼女はコタツでなきにないたら、ぽこっと妊娠。そして翌年もぽこっと妊娠。20代の私には30代後半の彼女も年子のママで沢山一緒に遊びました。

私は内心「大学病院の先生が治療終了宣言をするほどの状況だったのに、年子がポンポンと生まれるのだから不妊って不思議だなあ」と思っていました。そしていま不妊治療を皆さんにさせて頂く立場になると、このエピソードからいろいろ考えることがあります。大きくは3つのキーワードとして考えてみました。

「三つのキーワード」

それは、(1)ひとつには35才というキーワード。(2)お医者さんがおしまいを宣言してくれたこと。(3)泣きに泣いたらぽこっと妊娠、連続して妊娠ということです。

(1)35才というキーワードは自然妊娠を狙う限界なんだと思います。

いままで一度も妊娠したことがない人の自然妊娠を狙っての人工授精までの治療の限界。

IVF-ETがなかったときは、ここが限界点だったんですね。そしていま私たちにこの限界を超えさせてくれたのがIVF-ET(体外受精―胚移植)ですね。

(2)お医者さんがおしまい宣言をしてくれたこと
IVF-ET(体外受精―胚移植)は大きな朗報ですが、お医者さんからのおしまい宣言がなくなったように思います。ここで悩む方も多いですよね。このお仕舞いの仕方のご相談。実はとても多いです。一緒に一生懸命考えます、考えます。いつも考えています。

(2)-1 決めると言うことの難しさ   
おしまいを決めるのも大変ですが、不妊治療をするのかどうかということも決めるのが難しいです。つまり、妊娠なんて出来れば神様が決めてほしいですよね。この部分の相談も多いです。IVF-ETしようか迷っていると。こんな方の背中を今まで何人ボーンと押したことか。そして皆さん、よかった!とおっしゃってくださいます。

(3)泣いたらぽこ、一人産んだらぽこ
これは、この方の妊娠がいかにストレス状態によって身体が妊娠するための一連のシステムをスムーズに動かすことができずに阻まれていたのかという事実を物語っています。このあたり、鍼灸の得意とするところなんですよ。おいおいお話をしていきましょうね。