カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 40代 不妊

16回の人工授精(AIH)、顕微授精(ICSI)を経ての自然妊娠(36歳、40歳出産)

概要

30歳から長らく人工授精(AIH)や状況によって選択した顕微授精(ICSI)を経ても妊娠に至らず。鍼灸治療後スムーズに自然妊娠出産。第二子も40歳にて自然妊娠出産した症例です。

(この症例の弁証論治→4年のAIHやICSIを経ての自然妊娠
【case:0023】

ご相談内容

現在35歳です。妊娠を希望し、30歳からタイミングにて1年過ごしました。その後16回あまりの人工授精(AIH)、そして体外受精ー胚移植(IVF-ET)をし、顕微授精(ICSI)も行いました、良好胚がとれ、無事移植までは問題なく進みますが、妊娠にいたりません。

ドクターからは「これだけ良い卵が採れているのに、不思議」と言われてしまっています。今後は、内視鏡手術により自然妊娠を狙うか、再度の体外受精にて妊娠に挑戦するかという提案をされています。

良い卵をこれだけ移植しても上手く行かなければ、なんだか何をやっても上手く行くという気がしません。どうしたらいいでしょうか?

東洋医学的診立て

よい卵を移植しても上手く行かないということで、今後についてどう考えたら良いのかわからなくなってしまっていらっしゃるのですね。

お体を拝見しますと、おっしゃるとおり手足末端の冷えはきつそうですね。しかしながら、逆に顏は上気したように赤めですし、口や喉の渇きがあります。また、手足のツボをみると、神門の硬結、左肺兪から心兪の抜け、後谿の冷えなどがあります。このことは、東洋医学でいうところの心の熱を中心とした上焦(身体の上部)の熱と気の滞りが常にあり、お身体に負担となっていると思われます。

この常に負担をかけている状況が長く続いていることがより腎気という妊娠に大切な生命の土台への負担となり、妊娠が成立しにくくなっていると思われます。また、身体にある強いストレス状態も、良い卵を移植しても妊娠しないという状況につながる要因です。

1回目の体外受精のあとの化学流産後から排卵期~生理前にイライラ、むくみ、食欲増、肌荒れが強くなっていますね。これは流産によりもともとあった腎気の弱りがいっそう強くなり、腎気の弱りに乗じて気の滞りもより強くなっていったと思われます。

まず、流産の後の体調悪化に対して手当てをし、その後、素体のストレス状態と腎気の弱りに対して対応していきましょう。年齢も若いです。また化学流産がある方は妊娠し出産までたどり着くケースを多く経験しています。一緒にがんばりましょう。

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚、肝鬱
論治:益気補腎、疏肝理気
治療方針:化学流産後より落ちてしまった腎気をたてたのちに、もともとある強い肝鬱をゆるめて、妊娠できる身体作りをおこないたい。

治療経過

初診より週に2回のペースで施術。
1ヶ月半後の16診にて自然妊娠。

あとがき

沢山の治療を受けた後、少し養生をしましょうと始めた鍼灸治療で思いがけぬ自然妊娠となりました。第一子出産後も「もう、病院での治療はしたくないんです」とおっしゃり、淡々と身体の手入れを積み重ね、1度の化学流産を経たものの無事に自然妊娠をされ、40歳にて第二子のご出産となりました。

ご本人のお身体と向き合う姿勢は、私自身もとても学ばせていただくものがありました。淡々と日常を重ねることの美しさ。あせらず自分自身が決めた枠の中でしっかりと努力し歩んでいくこと、素朴な努力は結果に結びついてもつかなくても、ご本人にとっては納得できる日常であると思います。

お二人のお子さんのお母さんとなり、きっと賑やかで楽しい日々を、また淡々と過ごされているのかなと思います。よかったですね。