カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代前半 不妊 冷え・のぼせ

体外受精しかないと思ったときの自然妊娠(34歳出産)

概要

体調が悪化すると生理周期ものびてしまい、生理の量も減ってしまう状況で体調を地道にあげる努力が功を奏し自然な妊娠につながった症例です。

(この症例の弁証論治→0040:3年にわたる鍼灸治療。PCO排卵障害、体外受精直前の自然妊娠34才出産弁証論治
【case:0040】

ご相談内容

30才になります。妊娠を希望していますが、生理が3ヶ月に1度ぐらいしか来ていない状況です。

20代の前半に一人暮らしをして、食生活の乱れからか体調が悪化し、生理周期も長くなってしまいました。また花粉症も強くなりなんだか体調が悪いという感じでした。

20代の半ばに実家に戻り少し身体に負担の少ない生活になり、生理周期も少し戻りましたが、結婚して再度生活に負担がかかると3ヶ月以上生理が来ない状況になってしまいました。

妊娠をしたいという気持ちはあるのですが、なんとも体調が悪いことが気になり、早く妊娠をと思うものの、なかなか病院へ行く勇気もでません。

どうしたらいいでしょうか?

東洋医学的診立て

妊娠をしたいというご希望ですね。また体調そのものが悪いことも気になって、病院へ行っての治療も勇気が出ないというお気持ちよくわかります。

女性には二つのタイプがあります。全身の体調が悪化すると生理周期がおくれ子宮を中心とする女子胞力がおちてしまい、生理周期がのびたり、妊娠しにくくなったりするタイプと、逆に全身の体調がわるいからこそ、次世代へという力が強く働き体調が悪いのに生理がしっかりと来るタイプです。

Yさんは、体調悪化にともない、生理周期も伸びてしまうタイプですね。

食事や生活の不規則さが女子胞(子宮)力に直結してしまい、体調も悪化、そして生理周期がのび、生理の量も減り妊娠しにくくなっているのではないかと思います。

これは、生命力の土台の力(腎気)が落ちると、腎気を支えにしている女子胞(子宮)の力も落ち、排卵がこない。妊娠しにくくなりますし、土台の力(腎気)がないため、気が昇りやすくなり、上焦を中心とした気の鬱滞(身体のストレス状態)が強くなり、気の巡りが悪いためにより妊娠しにくくなっているのではないかと思われます。

20代の一人暮らしでの不調は、生理周期が伸びてしまうことだけで終わり、その後、実家暮らしによって体調が回復すると生理周期も戻っていますが、結婚後の負担のある生活は生理周期が大きく伸び、生理の量が減ってしまうという女子胞(子宮)の力を一段と落としてしまっているのではないかと思われます。

また、お身体を拝見すると、30才という若さながら、お腹の生命力をあらわすツボ(気海(CV6)関元(CV4)、大巨(ST27)など)の反応が非常に弱っていて、また足の経穴である湧泉(KI1)、復溜(KI7)、築濱なども冷えています。

足腰の冷えに反し、身体の上部は熱感を持ちやすく花粉症や頭痛となりやすく、口も渇き舌もあかくなっています。また全身をしっかりと包みまもっているはずの胚の経穴が弱りをみせています(肺兪(BL13)、列缺(LU7))また気の鬱滞をしめしています。

全身の状態は、生命力の土台の力(腎気)が弱り足腰を中心として冷えをあらわしているものの、土台との力が弱いために気は昇りやすく、身体の上部である上焦では熱感が籠もりやすい状態をしめし、全身のくくりである肺気は弱りを見せているという悪循環を引き起こしているようにおもわれます。

ご自身で、体調悪化の原因が、食生活の乱れや生活の乱れがきっかけになっているというご自覚もあるようですね。まだまだ年齢が若いです。まず体調管理し、自分の身体を信頼出来る状態にしていきましょう。その上である程度の期間がたちましたら、妊娠に向けてのステップアップも考えた方がよいかと思います。

不妊治療へのアドバイス

いまは、生理周期も非常に長くなってしまい、妊娠をしたいけれど、妊娠しても大丈夫だろうかという怖さもあるということですね。確かにそのお気持ちもよくわかります。ある程度までは体調をあげることを中心にしてもよいかと思います。

しかしながら妊娠は体調だけが連動しているのではなく、ちょっとした歯車の掛け違いでもおこります。半年から1年程度の期間をすぎても妊娠しない場合は、おそれずに病院を受診し、不妊治療を前に進めましょう。

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚を中心とする全身の気虚肝鬱
論治:益気補腎
治療方針:腎気をたて下焦の充実をはかる。肝鬱も症状としてはきつくあらわれているが、もともとの腎気の弱りから生じているので、腎気を中心にそこあげし、体調のupをはかる。

治療経過

列缺(LU7)、復溜(KI7)、三陰交(SP6) 鍼してお灸
肺兪(BL13)、気海(CV6)、関元(CV4)、大巨(ST27) 温灸
脾兪(BL20)、三焦兪(BL22) 腎兪(BL23) 次髎(BL32) 鍼して温灸

セルフケア:列缺(LU7)、三陰交(SP6)、気海(CV6)、関元(CV4)、脾兪(BL20)、三焦兪(BL22)、次髎(BL32)などのお灸

ご本人の希望もあり、2年ほど鍼灸治療を継続。その後病院でのタイミングを少し誘発をしながらおこなう。半年ほど薬を使い続けたので、生理周期が再び伸びてしまったので、少し病院をお休み。

タイミングをとり、フーナー検査も良好だったので、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療しか妊娠につながらないのではということで、体調を整え、再度の病院受診を考えていたところ、自然妊娠。

無事に元気な男の子を出産(34才)

あとがき

妊娠したいというお気持ちと、このままの体調で妊娠したらという不安があり、なかなか前に妊活を踏み出すことが出来ない状態でした。

2年後から病院を受診され、薬を使ってのタイミングを半年ほどしたことで生理周期がのびてしまったのでお休みしているときにの自然妊娠。結局、体調を整え、自然な妊娠がやってきたと言うことだと思います。

30才の時に鍼灸治療をスタートし、2年。32才病院受診、半年休んでの33才自然妊娠、34才出産となりました。

妊娠は、年齢要因などもあるので、ある程度のところでの病院受診も必要だと思います。
それでも、ぴょこんとやってくるのが妊娠。よかったですねえ。