カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 不妊 ストレス・精神症状

身体作りと不妊治療 二人三脚での妊娠出産(39歳出産)

概要

強い疲労感、ストレス、首の痛みなど体調そのものが悪い中、頑張っての不妊治療をされ、体調がだんだんよくなり、卵の状態がよくなり、長く年月はかかりましたが、無事に妊娠されご出産までたどりついた症例です。

(この症例の弁証論治→身体作りと不妊治療 二人三脚での妊娠出産
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」2-3
【case:0147】

ご相談内容

主訴・・・1.不妊、2.精神的な落ち込み、イライラ、不安定

  1. 不妊について

    生理不順で病院に掛かったときに、妊娠を希望するならば将来的には治療が必要だろうと言われています。ですので、30歳で妊娠を希望してからはすぐに治療を始めましたが、もう6年もたち、高度生殖医療にも取り組んでいますが、なかなか結果につながりません。どうしたらいいでしょうか?

  2. 精神的な落ち込みなどについて

    30歳で不妊治療を始めてから、精神的に落ち込んだり、自己嫌悪でイライラしたり不安定になることがあります、不妊治療を続けることへの不安が強いためかなと自分では思っています。

    体調が不安定なときは、体がこわばっている感じで首肩が凝り、頭痛もすることが多い。頭痛がするときはキーンという耳鳴りしたり、高所にいるときのような耳が閉塞したような感じがすることがある。また気分の落ち込みがひどい時は寝起きも悪くつらいです。

  3. 肩こりについて

    不妊治療を始めてひどくなりました、中学生の頃から辛く、親にもんでもらったりしていました。体がいつも緊張している様に思います。

  4. 頭痛について

    不妊治療を始めてひどくなっています。頭痛は夕方に出ることが多く、数日間続きます。
    側頭部と後頭部が痛くなる。扁桃炎と共に疲れるといろんな症状が身体にでます。

  5. 扁桃腺の腫れについて

    もともと耳鼻咽喉系が弱いです。外耳炎や中耳炎、扁桃炎によくなっていいて、飛行機や登山で中耳炎にもなっています。扁桃炎は疲れとともにおきます。

  6. 寝違えについて

    寝違えをよくおこします。朝起きた時に寝違えなのか首が痛いことが多く、朝だけでなく日中でもちょっとした拍子に首を痛めることも時々あります。寒さのせいなのか、冬の時が多く、子供の時から頻繁でしたが、25歳くらいの仕事のストレスがひどかった時には2~3日おきに寝違えが起こっていた。整形外科では首が長いのでダメージを受けやすいと言われました。不妊治療で特段悪化したとは思いませんがもともと首のトラブルは多いです。

東洋医学的診立て

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚、肝鬱
論治:補腎、疏肝理気

治療方針:まずは不妊治療で弱ってしまった腎気をしっかりと補い、今後の不妊治療に繋げていきたい。

また同時に肺気も補うことで蓋としての機能をしっかりさせて、肝気に侵されにくくし、上焦を強化することで、引いては扁桃腺炎や寝違えなどを起こりにくくなるようにしたい。

きつい肝鬱に関しては、治療に必要な時は適宜理気するも、生活の見直しや不妊治療のアドバイスなどにより、肝気の安定を図る。

ご本人へのアドバイス
20代の頃は朝から夜遅くまでお仕事をされてかなり体力的には無理をされていたようですが、やりがいのある仕事でもあり精神的には充実されていたようですね。気力で頑張って物事をやり遂げたり、生真面目に物事に取り組まれる姿勢は、お話を伺うと、きっと子供の頃から現在に至るまでずっと○○さんの日常的な習慣になっているのではないかと感じました。その頑張りが知らず知らずのうちに少しずつお体を傷め、気付いた時にはきつい症状として現れてしまうのではなかいと思われます。

子供の頃から体に力が入っていたのではないかと自覚されているように、休息がうまく取れずに頑張り続けたり、ストレスを多く受けると身体の気血の巡りが悪くなり、身体の上部に気血が鬱滞しやすくなって扁桃腺炎や頭痛などさまざまな症状が出たり、末端である手足は冷えたりします。そしてご自身でも感じていらっしゃる30歳以降の不調は、不妊治療で生命力が損なわれ、更に気血の巡りが悪くなり、また生命力が損なわれるという悪循環になっていると考えられます。

まずは鍼灸治療でこの悪循環を脱し、生命力を上げながら気血の巡りも良くすることが体調の建て直しのみならず、引いては不妊治療に繋がっていくと考えます。

そのためにご自身でできることは疲れを溜めないことです。夜はせめて日付を越さないうちに就寝しましょう。昼間の活動量と睡眠のバランスが取れて、翌日に疲れを持ち越さないようにすることが目標です。せっかく不妊治療に専念するためにパートの仕事に転職したにもかかわらず、疲れがあまり改善していないことを考えると、体をしっかりと休めてあげられていないように思いますので、今一度生活習慣を見直してみましょう。

またストレスのせいもあるかと思いますが、昔から気血の巡りがかなり良くないことが体にとっては疲れに繋がってきます。毎日少しずつでも時間を作って手足をしっかり動かしながら歩くなど運動することをお薦めします。まずは休みの日に散歩するとか、職場まで歩いて通勤するなど、○○さんにとって全身を動かしてあげることはとても効果が高い養生になると思います。散歩は景色を見ながら歩けばストレスを解消して気分的にリラックスでき、気血の巡りを良くして手足の冷えも改善してくれるでしょう。ストレスを引きずらず、体がリラックスできるようになるといいですね。

治療経過

30才 妊娠を希望する、不妊治療をするもなかなか妊娠せず。
 精神的に落ち込んだり、イライラしたりする。
 生理痛がきつくなり、肩こり頭痛も益している
33才 人工授精をする。6回試すものの、なかなか上手く行かない。
35才 体外受精をし、4つ卵もとれたが、未成熟欄しか取れず移植できなかった。
 卵巣刺激のため腹水がたまってい体調が悪い

36才 ビッグママ治療室受診

初診時鍼灸治療
左内関、左公孫 三陰交 右足三里
心兪、三焦兪、次髎(BL32)

3ヶ月後 便通がよくなってきた。
1年後 8個採卵 今回は3つ凍結することができた-3ヶ月後移植-着床-初期流産
1年3ヶ月後 凍結胚移植-着床-初期流産
1年7ヶ月後 採卵-グレードのよい凍結胚が出来た
2年後妊娠-無事な出産

あとがき

20代で病院の先生から「将来の不妊」を予言されてしまったことは、辛い重荷になったと思います。

しかしながら、そのおかげで、不妊治療のスタートが若い年齢であったことはよかったなと思います。卵巣の要因、そして体調そのものから来る卵の質の問題は、やはり解決に年月がかかることがあります。

多嚢胞性卵巣症候群の卵巣の問題、子宮筋腫などの子宮の問題、首や肩のこり、頭痛、精神的な不安定さ、緊張感の強さなど、乗り越えていかなければならない課題は多くありましたが、少しずつ前に進むことができ、無事に出産までたどり着けた症例です。