カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 40代 不妊 不育 流産

不育要因なしで繋留流産3回、鍼灸で土台作り自然妊娠で出産(42歳出産)

概要

38才での結婚後、3回の妊娠をするものの8週前後で流産、手術を繰り返す。夜の咳がひどく咳喘息や頭痛も引き起こす。体外受精に挑戦するものの上手くいかず、身体を整えて自然妊娠、無事の出産。

(この症例の弁証論治→41才 不育症 咳 肩こり 吐き気 体外受精するものの自然妊娠 出産
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」7-3
【case:0192】【神奈川県/横浜】

ご相談内容

41才です、39歳で妊娠を希望してすぐに自然妊娠するも7週で流産、手術となってしまいました。その後も自然妊娠するも8週で流産、手術をしました。

2回の流産のあと、体重が増えて、生理周期も長くなってしまいました。なかなか妊娠しないので、人工授精をしてみたところ、妊娠。しかしながらやはり8週で赤ちゃんが育たず繋留流産となり手術をしました。病院で検査をしましたが、特に不妊要因、不育要因は無いと言われました。

また、夜中に咳が出るのが気になります。特に花粉症のシーズンには寝つきに咳がでて、時には咳喘息にまでなってしまいます。肩こりもひどく、肩こりから頭痛になることも多いです。寒いところに長時間いたり、目の使いすぎで肩こりが起きます。頭痛は締め付けられるように痛くてズキズキします。時にひどいときには吐き気がするほどです。

東洋医学的診立て

流産、大変でしたね。何度も繰り返しているとのこと本当にお辛かったと思います。

病院での不育症の検査の結果が問題ないということですので、西洋医学的に決定的となる不育症の要因はないと思われます。しかしながら8週での流産が続くこと、また自然なリセットとならずに手術になってしまっているということは、ご自身にも、そして子宮内膜にも大きなダメージとなっていると思います。

花粉症という外的な要因に誘発されている咳ですが、夜の寝つきに起こることや、ひどくなると頭痛や吐き気などに伴う肩こりという症状と東洋医学的に合わせて考えることが大事であると思います。

夜というのは、身体の中の気が納まる時間帯です。気のベクトルが内側に向かうわけです。気が内側に向きますので、表面の防衛力(肺の力)が弱まります。だからお布団をかけて肺の力を補って寝るわけです。

もともとの肺の力が弱かったため、夜という表面の防衛力が弱くなる時間になると外邪である花粉との戦いに負け、症状が出ているものと思います。

この肺の力が弱いということは、昼間であれば肺の力を補うために肝の力が立ち上がりやすくなります。このベクトルは下から上に衝き上げる方向です。このベクトルによって気の滞りが起きやすく、肩こり頭痛となっています。(肺気の弱さ、肝鬱気逆)、そして常に下から上へのベクトルが強いことで、身体の土台となる力(腎気)も負担がかかり弱ってしまいます。

お身体を拝見すると、冷えの入り込みもあるようです。この冷えの入り込み(風邪の内陥)は、気の上逆ベクトルをより強くし、土台の力をよりそこないます。

下から上へ衝き上げるベクトルが強いことと、気の巡りが悪くなり停滞しがちになること、冷えの入り込みが身体への負担となっていることよって、全身の健やかな気の昇降出入が妨げられ、肝気の上逆鬱滞を引き起こし、土台である腎気への負担となることが、妊娠はするものの継続出来ないという原因にもなっているかと思われます。つまり下焦である子宮周辺に安定的な気血の流入がおこりにくくなってしまうということです。

鍼灸でお身体の手入れをし、妊娠する力を取り戻しましょう。そして妊娠が成立したら治療頻度をあげ、しっかりと胎が子宮内膜に根を下ろし、安定した胎盤ができるようにし、妊娠の継続、出産を目指しましょう。

ご自身として出来ることは
・睡眠時間の確保:現在は5時間の睡眠で翌日に疲れが残っているようです。まず睡眠時間の確保はとても大切です。
・毎日の養生お灸:養生お灸をすることで、弱りをカバーし、身体作りを一層前にすすめます。

<治療指針>

東洋医学的弁証論治
弁証:腎陽虚、風邪の内陥
論治:温補腎陽、去風散寒
治療方針:まずは風邪を追い出して、肺気、腎気への負担を取りたい。それと並行して腎気を立てていき、妊娠しやすくかつ妊娠が継続するようにしたい。

肩こり頭痛も治したいとのことだが、仕事を辞めてかなり肝鬱はましなのではないかと思われるので、腎気を立てながら風邪を追い出した後にもきつい肝鬱があるようなら適宜払いたいと考える。腎気を立てることで肝鬱気逆は起こりにくくなるとは考える。

また腎気を立てることで肺気へのバックアップとなるとは思うが、喉の痒みや咳があまりにひどく、悪循環を生むようなら、肺気も補っていくことも考えておく。

治療経過

ビッグママ治療室初診
1)左外関、左三陰交、右足三里 右臨泣。大巨関元
2)大椎 三焦兪、腎兪、次髎

1ヶ月後 体調がよくなってきたよく眠れる。
2ヶ月後 体外受精に挑戦、採卵ー移植、hCG5,妊娠出来ず。不育症の検査はNK活性も含めなにも出ない。
3ヶ月後 人工授精ー妊娠せず。
4ヶ月後 抗核抗体の数字が下がってきた
5ヶ月後 医療介入無しで自然妊娠。(治療頻度を週に4〜5回にする)
7ヶ月後12週超え(治療頻度を週に3回程度にする)
妊娠20週すぎから突き上げる感じがきつくなってくるー治療
妊娠28週過ぎからむくみかんが強い
妊娠34週 むくみがある。手荒れが治らない感じがする。

鍼灸を始めてから咳はだいぶよくなってきた。無事に3000グラム越えの赤ちゃんを出産。
おめでとうございます。

あとがき

病院での不育症の検査には引っかかっていないと言うことでしたが、8週での3回にわたる繋留流産は妊娠初期をしっかりと乗り越える必要のある状態です。

41才をこえ、妊娠しにくくもなってしまったため、体外受精をされていますが上手く妊娠できず、結局、医療介入無しの自然妊娠をされ、鍼灸の治療頻度を週に4−5回にしたことで妊娠初期を乗り越え無事の出産までたどり着かれました。

少し遠方で通ってこられるのも大変だったと思いますが、頑張って二人三脚をし、無事に赤ちゃんが出産できたこと、私もほっとしています。