カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 不妊

体外受精をすすめるべきか、病院での方針に迷います(38歳出産)


[2023/05/11:更新]

概要

人工授精で一度妊娠するも化学流産。その後、体外受精し移植するも妊娠せず。色々な事で迷ってしまう中、不妊カウンセリングを活かし、無事に妊娠ー出産された症例です。

(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」4-5
【case:0305】【神奈川/小田原】

ご相談内容

AIHで妊娠、化学流産。その後IVFをしましたが妊娠しません。潜在性高プロラクチン血症と診断され薬を飲んでいましたが、転院した病院では不要な薬だと言われてしまいました。

病院によって診断が違うのにとても迷います。クロミッドとhCGの注射をしたあとに卵巣が腫れてしまい治療が中断してしまったことがあります。色々な薬を飲んで治療を進めてから、治療周期が28日ぐらいから26日と短くなってきてしまっています。

タイミングの初回で妊娠したものの、化学流産となっています。その後1年ほどタイミングをし、クロミッドやセキソビッド、hCGの注射、テルロンなどを組み合わせて治療を進めていましたが一度も妊娠していません。

漢方薬もすすめられ、体外受精もやってみました。1回目は夫の精子の状態が悪く顕微授精となり上手く行かず終了、2回目はフェマーラとHMGの注射を使い2個採卵できグレードのよい卵を移植しましたが、妊娠しませんでした。

なにもしなかったときは、すんなり妊娠したのに、治療をすればするほど混迷するばかりです。どうしたらいいのでしょうか?

東洋医学的診立て

治療をどんどん進めているのに、かえって結果には繋がらず、生理周期も短く体調全体も悪くなってしまっているということでどうしたらいいのかわからなくなってしまったということですね。本当にお辛いですね。

不妊治療というのは不思議なもので、沢山介入すれば結果がでるというものでもなく、かえって混迷してしまうということはよくあります

これは妊娠だけに注目して治療を進めるために、
排卵させること
受精させること
胚移植すること
こういったことだけをみているために、かえってご自身が自分で妊娠する力を落としてしまっているということはよくあることなんです。

四診情報:
手足がよく冷え、冬が辛い。頭痛(目の奥)や肩こりも辛く精神的に不調ということですね。
舌が歯痕ありはんどん 両列厥ややこそげ、右の内関陥凹
心下つまりあり、左の肝の相火きつい 
中カン動悸、冷えあり、左外関陽池冷え
下腿胆経突っ張りが強い、陰陵泉曲泉のラインがゆるい

アドバイス:
妊娠しないと言うことでいろいろ治療をすすめていますが、そのことがかえって全身の体力に負担となっています。その負担になんとか頑張って耐えるために気を張って身体の枠に力が入っているため、かえって妊娠に一番大切な気の昇降出入が滞ってしまっています。

36才という年齢を考えると、西洋医学的な治療を進めていくことそのものは前に進めていきたいところですが、それだけでは返って悪循環におちいってしまいます。身体の力を効率的につけて、治療を受け止められる身体作りをしていきましょう。

一度妊娠しているカップルです。必ず妊娠への道はあると私は思っています。一緒に前に進んでいきましょう。

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚肝鬱オケツ
論治:益気補腎 疏肝理気
治療方針:全身の器が小さいために上焦の気滞が強くなったり、フレームである胆経が突っ張りとなり、全身の気血の巡りを悪くしまっている。腎気をあげることで全体の余裕をつけ、気の昇降出入が無理なくおこなわれるようにする。肝欝気滞については基本的に手をつけない。

治療経過

週に1-2回のペースで鍼灸治療開始、毎日の養生お灸手入れスタート
3回目の採卵ー空砲
4回目の採卵ー2個取れた
移植ー1個をフレッシュ胚盤胞で同じ周期に移植ー妊娠せず。残りの卵は胚盤胞にて凍結
移植ー凍結胚盤胞を移植
妊娠ー出産

あとがき

一度、自然妊娠をされています。体外受精をすれば妊娠できるはずという強い思いは、わたしもとても納得できるものでした。西洋医学的な治療にご自身の身体がしっかりとついていけるようにという後押しが、無事な妊娠を支えたのかなと思います。よかったなあと思います。