[2023/5/13:更新]
概要
32歳からの妊娠希望、子宮内膜症やチョコレート嚢胞などが辛い中、体外受精に何度か挑戦するも妊娠せず。身体の土台の力をあげ、一点突破で乗り切り妊娠出産なさった症例です。
(この症例の弁証論治→側弯、不妊、イボの弁証論治)【case:0224】
ご相談内容
39歳です。早く妊娠したいと思っています。
10代の頃からハウスダストで鼻炎があり、現在も継続しています。高校ぐらいから腰痛がはじまり、側湾も指摘されています。
湿疹は1年ぐらい前からで病院では脂漏性皮膚炎といわれています。薬をもらったけど、食生活が変えられないせいか、あまり効果がありません。
初経は16歳、生理周期は28−34日ぐらい、20代は30−40日ぐらいの周期で生理が来ていた。
32歳から妊娠希望で、タイミング、人工授精などを受けた。
35才 生理痛 子宮内膜症、チョコレート嚢胞と診断される
38才子宮内膜症のためにリング装着、片側の膿疱処置→生理痛軽減
生理前の2-3日から胸が張り、イライラする。
高温期に出ていた症状は生理がくるとおさまる。
生理初日と2日目に鈍痛、色は濃く、固まり、粘った膜。
(チョコレート嚢胞の処置前は2日ぐらい前からうずくまるほど痛かった)
38才 採卵 4つ凍結
3月から7月にかけて 3回の移植 すべて妊娠出来ず。
頭から皮膚炎が始まる、唇の皮がむける、顎関節症になった
重いものを持ってから腰痛発症→継続(いろいろな治療を受けて現在は少しよい)
38才 リング装着、膿疱処置 →生理痛の軽減
11月 移植ー妊娠出来ず
12月 採卵ー2段階移植 妊娠出来ず。
気持ちを切り替えるために、体外受精の治療を休む
39才 ビッグママ治療室受診
東洋医学的診立て
ご相談にお答えして
32歳からの妊娠希望、38歳から体外受精をし、すでに6回も移植しているのに、妊娠出来ないという結果。子宮内膜症の事も頑張っていらっしゃる中での不妊治療はとても大変だと思います。そしてこれだけ頑張っているのに、とてもお辛いですね。
お身体を拝見して
もともと側湾や腰痛、鼻炎など、生命力の土台の力(腎気)が不足気味である素体の状態がうかがえます。この土台の力(腎気)が弱いと、なにか身体に負荷がかかったときに、ストレスとして強めになり、気が立ちやすくなります。これが体外受精という身体の負担のかかる治療を始めてから、頭の皮膚炎や顎関節症などの身体上部の症状がさまざま出現してくる遠因になっていると思います。
皮膚全体が薄く少し荒れており、また背部の胃腸のツボである脾兪、胃兪、土台の力をあらわす腎兪が大きく陥凹しています。また中央にある背骨が側湾(だけではなくねじれているような不安定さがある)している状態ですね。
上背部は少し腠理の疎(皮膚の粗さ)があり肺兪風門などの肺や冷えの入り込みをあらわす経穴は陥凹しています。骨盤部の皮膚は冷え、薄く固い。
手足末端にある経穴反応はあまり明瞭ではなく、脉状も甘くぼんやりとしています。舌は淡白歯痕胖大、脾腎を中心にした弱さのなか、皮膚、末端の養いが不足していると思われます。
素体としての脾腎の器が非常に小さいので、甘いものを少し食べると脾気(胃腸)への負担となり内湿(不要な湿気)を生じ、腎気(生命の土台の力)への負担ともなり肝気が立ちやすくなり上焦(身体の上背部)への熱感となりやすいと思われます。
この状態で他に大きな愁訴がないのは、ご自身ががそれなりに、睡眠、食事、無理のない範囲での生活と心がけているからだと思われます、とてもがんばっていますね。
不妊治療について
今のお身体の現状は、元々の素体の弱さがあるなか、ムリをして妊娠をしようという治療を行っている状態です。
しかしながら、ちゃんと採卵ができ、複数胚の凍結ができ、移植も出来、多少なりとも着床の反応がでています。これはあと一息、妊娠の初期の状態を乗り切りながら、全身状態を好転させ、出産にもっていくこと。
そして妊娠中の期間を利用して、しっかりと身体の土台作りをして、その後の出産、産後、子育ての生活にそなえていくようにと思っています。
この状態ならば、妊娠出来ます。あせらず、気負わず、するべき事をして、一点突破でがんばっていきましょう。
東洋医学的弁証論治
弁証:脾腎を中心とした気虚
論治:益気補脾 補腎温養 温養子宮
治療方針:器が小さく色々な愁訴をもちやすいが、脾気を養い気虚をすくうこと、腎気を温養し下焦を養い妊娠出産出来る身体作りをしていく。
妊娠に関しては、採卵して受精卵そのものは良好の状態で出来ているが、移植しても妊娠しないということである。現時点の体表観察からは背部腧穴にうかがわれる弱りが非常にきつい。脾腎を中心に子宮への生命力をあつめていき、妊娠、妊娠の継続をはかりたい。
治療経過
39才
初診 ビッグママ治療室初診 週に一度の鍼灸治療、自宅施灸
(1)左外関、足三里、左公孫(鍼してミニ灸)、左三陰交灸頭鍼
ミニ灸左復溜、左湧泉 温灸気海、関元
(2)左肺兪 右心兪 ジオン
(3)脾兪、胃兪、右腎兪 鍼して温灸
右の腎兪はこそげて筋腹が極端にない感じ。10番で鍼して温灸を充分にいれる。
☆側湾部の背部腧穴に対しては、ゆるみの大きい方を取ることが多い。
△+3月 少しづつタンパク質を増やすように、ウオーキングをするように指導
△+4月 朝食を食べるように指導
△+5月 皮膚の弾力がアップしてきている、白膩苔が薄くなる
△+8月 採卵→2つ胚盤胞へ凍結できず
△+9月 イボが出来てウオーキングが出来ないと白膩苔が出てくる
△+10月 採卵→ひとつ胚盤胞に凍結出来た
背中辛い
△+11月 移植 着床、妊娠出来ず。ただ、いままでで一番妊娠判定時のホルモン数値はよかった。
△+13月 採卵→空砲
△+14月 採卵 成熟卵が3つ 未熟が1つ 胚盤胞2つ凍結
△+15月 移植→妊娠→継続
妊娠後
9w つわりがひどい
11w 耳がぼーっとする
13w はきすぎてけいれんするほどだ
背骨の側湾がきつくなっていっている。皮膚の薄さもます
15w 妊娠糖尿病と診断され食事指導を受ける
21w おっぱいマッサージをしたら、お腹が痛くなってしまい動けなくなった。
背骨の不安定さ↑
29w 右足のふくらはぎがつる、息があがっている
治療院への通院は遠方(2時間ほどかかる)ので終了とする。
なるべく安静をこころがけるように指示
35w 血圧が高くなり入院→退院後自宅安静指示が出る
38w 出産直前まで自宅施灸を継続し、順調な経過で自然分娩にて2800gオーバーの
赤ちゃんを出産。おめでとうございます。
あとがき
32歳という比較的若い年齢から妊娠希望をなさっていましたが、子宮内膜症やチョコレート嚢胞、そしてもともとの素体の弱さなどがあり、少し長い不妊治療となっていました。ビッグママ治療室受信後は、一点突破をするため、しっかりと身体の土台の力をつけ、体外受精をみすえ応援していきました。
無事に妊娠でき、本当によかったなと思います。妊娠中も土台の力が弱いためにかなり負担がかかったような状況でしたが、なんとか乗り切り、元気な赤ちゃんの出産となり、本当によかったなと思います。
出産直前までご自宅でのセルフケアをしていただき、自然分娩での出産となったとのこと。嬉しい限りです。