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第29回 山下湘南夢クリニック不妊治療説明会 講演記録『不妊と鍼灸、東洋医学』

女性の身体、東洋医学が得意なところ、西洋医学が得意なところ

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先ほどは、人間の身体を一本の木に見立て、肝心脾肺腎の五臓という概念を使って 考えてみました。

さて、この図は、その中で、妊娠を主る骨盤内臓器、子宮や卵巣、卵管を中心に考えた図です。

全体の機能をスムーズに運ぶように暢びやかさを主っているのは、肝でこの図では一番上に描かれています。卵巣、子宮、精子卵子の出会いと一連の出来事がス ムーズに行われることが妊娠にはとても大切です。この暢びやかな心身をサポートする力が強いのが鍼灸です。『鍼灸が妊娠に効果的』といわれるのは、人間の 身体を暢びやかにし、気血の巡りをよくする作用が強いからです。

子宮は腎の主るところで、生命の土台です。卵管の旅を終えた胚盤胞にまで成長した卵は殻を飛び出し、ふんわりと子宮に着床します。この腎の力を強くするのも、鍼灸、漢方、そして自宅でのお灸などがとても効果的です。東洋医学でのお手伝いが期待できる分野です。

真ん中の管は卵管のつもりです。精子の旅を応援し、卵管采では精子と卵子が出会い、受精卵の旅をむかえ、受精卵の成長をはぐくみます。

この部分が一番、物理的な問題をおこしがちなところであり、西洋医学、高度生殖医療の得意とする部分です。出会いのチャンスをあげてあげる(排卵誘発)、ことから、出会いそのものをサポートする(体外受精、顕微授精)卵管の機能を補ってあげる(胚培養)など、本当に、この技術の応援なしではいまの不妊治療は考えられないのではないかといえるぐらいの力強さがあります。

『不妊』の状態は、ひとそれぞれです。何が一番の問題かということは個人の状況によって様々なのです。

ご自身でご自分にとって何が必要であるのかを見極めるのは案外難しいです。『自分で自分はみえない』ものかもしれません。また、一生懸命になるあまり、優先順位がつけられなくなったり、どうしたらいいのか、何をしたら良いのかがわからなくなることもあります。ぜひ、不妊カウンセラーなどにご相談頂き、ご自身にとって何が一番必要なのかということを考えてみて頂ければと思います。

時間はとても大切、これは不妊治療においては、なによりのポイントです。

そのうえで、この三つの観点のどこにウイークポイントがあるのかということも考えてみることが、『急がば回れ』になるのではないかと思います。