弁証論治:

0005:肩の痛み、痺症 弁証論治

56歳 女性 主婦

仕事:たばこ売店

家族構成:夫、(子供3人独立)

身長:160cm、体重:50kg

主訴・・・肩の凝り、痛み

【主訴について】

(左肩)

1年くらい前に左小指が痛み、それが治ったら左肩が痛み出した。

痛い場所は左肩貞辺りから腕に掛けて

で、挙上と結帯動作で痛む。

お風呂に入ると、痛みはましだが、すぐ痛みは戻る。

(右肩)

11月18日から痛み始めた。同時に、膝の痛み、臀部から下肢にかけての痛み出現

右鎖骨辺りから腕の付け根の前面が痛い。

朝、起きぬけが痛い。痛い時期は一定しない。

関節が痛くて、痛みは移動する。

両肩とも日常動作に問題は無いが、ちょっとしたことで痛みが出る。

【ふだんの状態について】

(食事)

食欲は普通で、朝食7時、昼食12時、夕食は19時、食事時間は15分。

食事前の空腹感は時々、おいしく食べれる。

食後にお腹が張ったり、胸焼けがすることはめったにない。

よく食べるのは白米、魚(干物)、キャベツ、大根、果物。

好きな食べ物は柿、すし、嫌いなのは貝類。

間食は1日2回以上で、果物を食べる。

(飲み物)

1日700cc以上、お茶または紅茶を飲む。

喉はめったに渇かない。口舌喉の違和感も無い。

(飲酒)

月4~5回。

(大便)

閉経後、便秘がちで週1くらいだった。出ないと気分が悪くなり、嘔吐したりしたこともある。病院に行ったこともある。

去年11月から1日1回出るようになる。柿や山菜を食べるようになって出るようになった気がする。

(いままでも、山菜や柿の季節に便通がよくなる)。柿を食べなくなったら又で

なくなっている。

便秘薬を時々服用していて、服用していない時はコロコロの便。

(11月まで)

時々便が出きらない感じがする。

便が便器に付着して取れにくいことはめったにない。

時々臭う。

(小便)

夜間排尿はめったにない。

残尿感、尿の切れが悪いことは無い。

(睡眠)

就寝22時、起床5時40分。

寝付き良く、眠りは深く、寝起きは普通。

翌日に疲れが残ることは無い。

(風邪)

くしゃみ、喉痛。

【婦人科系】

初経13歳。

閉経51歳。

正常出産3回。

母乳はよく出なかった。

【その他】

右臀部から足にかけて痛む。

右膝がカクカクすることがあるが、自然と良くなる。

..時系列

若い頃・・・肩凝りを自覚。

45歳頃・・・こむら返りが起こるようになる。

52歳・・・閉経。

便通が週に1回くらいになる。

(柿や山菜の季節にはよくなる)

53歳ごろから

胃が弱くなり、ストレスですぐに潰瘍になる(現在まで)。

55歳・・・左小指が痛み始めて、それが治ったら左肩が痛み始める(現在まで)。

便秘、目の疲れも起こる。

身体全体がだるく、やるきがでない。出かけるのも非常におっくううに

なる。

 

 

56歳11月・・・右肩が痛み始める。

肩の痛みと同時に、右の膝が痛みがあったり少しかくかくする(自然となおる)

右の臀部からの痛みがある(自然となおる、両方とも痛みがでたりなおったりする)

柿や山菜を食べると便通が良くなる。柿は大好きで沢山食べる。

..切診

<切診>

(脈診)

全体に沈んでる

右尺 特に沈んでる

(舌診)

やや白膩苔

舌裏怒張無し

(腹診)

右鎖骨下動きが悪い感じ

心下 少しつまり

左期門あたり 少しつまり

関元 冷え、抜け

両大巨 冷え、抜け

(経穴診)

左列缺 陥凹、冷え

左神門 少し硬結

右神門 大きく硬結

左内関 弛み

左合谷 陥凹、冷え

左後谿 陥凹、冷え

左足三里 大きく陥凹

右足三里 陥凹

右臨泣 硬結

右公孫 冷え

左承山 弛み

(背候診)

大椎 冷えすごくきつい

身柱 発汗

右肺兪 陥凹

左心兪 陥凹

両脾兪(左<右) 抜け

両三焦兪(左<右) 抜け

..五臟の弁別

【肝】

閉経後、便秘がちで週1くらいだった。出ないと気分が悪くなり、嘔吐したりしたこともある。病院に行ったこともある。

(肝鬱、腎虚の可能性)

便秘薬を時々服用していて、服用していない時はコロコロの便。(肝鬱の可能性)

心下 少しつまり(肝鬱の可能性)

左期門あたり 少しつまり(肝鬱、湿痰の可能性)

右臨泣 硬結

45歳頃・・・こむら返りが起こるようになる(肝の陰虚の可能性)

51歳・・・閉経。便通が週に1回くらいになる(肝鬱、腎虚の可能性)

胃が弱くなり、ストレスですぐに潰瘍になる(現在まで)。

【心】

左神門 少し硬結

右神門 大きく硬結

左内関 弛み

左後谿 陥凹、冷え

左心兪 陥凹

54歳・・・左小指が痛み始めて、それが治ったら左肩が痛み始める(現在まで)

(心の経筋の問題である可能性)。

左肩の痛みがはじまったころから、全身がやる気がでずだるい。

【脾】

柿が好き 間食は1日2回以上で、果物を食べる。

(脾気をいためる可能性、冷える可能性)

時々便が出きらない感じがする。(脾虚の可能性)

やや白膩苔(脾虚、湿痰の可能性)

左期門あたり 少しつまり(肝鬱、湿痰の可能性)

左肩の痛みがはじまったころから、全身がやる気がでずだるい。

左足三里 大きく陥凹

右足三里 陥凹

右公孫 冷え

両脾兪(左<右) 抜け

胃が弱くなり、ストレスですぐに潰瘍になる(現在まで)。

【肺】

右鎖骨辺りから腕の付け根の前面が痛い。

左列缺 陥凹、冷え

左合谷 陥凹、冷え

身柱 発汗

右肺兪 陥凹

【腎】

閉経後、便秘がちで週1くらいだった。出ないと気分が悪くなり、嘔吐したりしたこともある。病院に行ったこともある。

(肝鬱、腎虚の可能性)

脉、全体に沈んでる 右尺 特に沈んでる(腎虚の可能性)

関元 冷え、抜け 両大巨 冷え、抜け(腎虚、陽虚の可能性)

51歳・・・閉経。便通が週に1回くらいになる(肝鬱、腎虚の可能性)

左承山 弛み

両三焦兪(左<右) 抜け

【風邪】

関節が痛くて、痛みは移動する

大椎 冷えすごくきつい

身柱 発汗

右肺兪 陥凹

左列缺 陥凹、冷え

【陽虚】

朝、起きぬけが痛い。痛い時期は一定しない。

関元 冷え、抜け 両大巨 冷え、抜け(腎虚、陽虚の可能性)

..病因病理

主訴の肩の痛みは、1年前に左の小指からはじまり左肩が痛み、今年の11月よ

り右の肩前面が痛み、同時に膝、腰などが痛みが出現しています。肩以外の痛み

は、自然と治るものの、再び痛み、痛む場所があれこれ移動します。また、全て

の痛みは、朝おきぬけが辛いとのこと。

40代の後半から、こむらがえりがおこるなど、肝の陰陽のバランスの悪さが伺

われます。

生理があると、きつい肝鬱状態があっても下に通じることによりある程度肝鬱が

解消される可能性となります。

しかしながら閉経により肝鬱が下に解消されることがなくなり、肝気の鬱滞がより強く

なったこと。また年齢的に腎虚傾向も加わったため便通が非常に悪くなったと思

われます。週に1度で、出ないと嘔吐したり気分が悪くなるなどきつい気

逆状態を思わせるものであります。またここまで便通が悪くなるのも、もともと

の脾気の弱さもあるのでしょう。

このきつい脾虚肝鬱状態が続く中、精神的なストレスがくわわったため、

胃に潰瘍ができるという状態になっています。つまり脾虚肝鬱状態から、一歩進

んで肝気が脾胃を犯してしまう状態にすすんでしまったということです。

このように、肝気の鬱滞、脾胃をいためる状態、そして腎気の年齢的な落ち込み、

が続く中、1年前の柿の季節に左の小指の痛みに始まる、左肩の痛みと、全身の

だるさ、やるきのなさが出現しています。

これは、いままでの脾胃の弱さ、肝鬱状態が柿の多食という飲食不節により、脾

の陽気が奪われ、一段と器を小さくしてしまったのではと考えられます。脾の陽

気不足により、肩関節を温陽できないために肩の痛みとなり、また同様に、脾気

が心気を養えないために、だるい、やる気がでないなどの心痺両虚の状態となっ

てしまったのではないかと考えられます。

身体を補うことがなかったため、この状態で1年経過し、ふたたび柿の多食の季

節になり、飲食不摂により、また脾の陽気をいためる状態となり、冷えで便通が

つくようになっています。

便通が柿で付くということは、かなり柿でおなかが寒え、冷え降しをしていると

思われます。身体の状態がよいときであれば、下に通じることのほうが身体にとっ

てメリットとなり便通がつくだけで済んでいたのでしょう。しかし、閉経から続

いている肝鬱状態と、一年前から続く、心痺両虚の状態の上に、身体がよ

り冷えにさらされ陽気不足となり、これに、11月18日というはっきりとした日

付の記憶があるとおり風邪を引き込んだのと思われ、肺気の弱りとなり右の肺経の

始まりである部位からの肩の痛みとなっていると思われる。

今回は、肩の痛みだけに停まらず、全身の関節の問題へと波及し、右の膝、右の

臀部の痛みと広がりをみせ、朝の関節の痛み、痛みの移動をともなう状態となっ

ています。

ご本人には風邪の自覚がないものの、大椎の寒えや身柱の発汗、右の肺兪の陥凹、

左の列缺の寒え陥凹から風邪の引き込み、内陥が明瞭です。

また、大巨から関元にかけての下腹の寒えや脾兪、三焦兪の弱りや抜けは、

脾腎の陽気不足や支えのなさを物語っています。

年齢的な腎気の弱り、

風邪の内陥、

肝気犯胃による脾胃の弱り。

ストレスによる、心気への負担

柿の多食による冷え、

上記により発症した痺症であると考えられます。

大巨、関元の寒えが明瞭であるものの、睡眠、小便などの状態がよいため、

腎気の落ち込みは年齢相当のものと思われる。この経穴の冷えは柿の多食のため

かもしれないと考えられます。

脾胃の問題は、ここ数年のストレスで潰瘍を起こしてしまうほどであり、

また、肝気の鬱滞も一番の症状としては便通異常としてあらわれるように、脾胃

に負担がかかりやすいタイプであると考えられます。

..弁証:痺症(風邪、脾虚)

..論治:風邪を払い、脾気をたてる。

..【治療方針】

まず第一に風邪を払うことを目標とします。

目標は大椎の冷え、肺兪など。

風邪の治療と同時に、脾胃をたてることをします

これは、風邪を払うために脾気をたてることが必要という側面もあります。

神門、内関などをみながらストレスとのかねあいで調整していきます。

足三里の大きな陥凹、脾兪、三焦兪も施術観察していきます。

この二点でどの程度、やる気の改善、肩関節などの関節の痛みの改善が

みられるのか観察していきます。

また、きっかけがご本人の無自覚な飲食不節が原因なので(便通がつくという

理由で冷えるものを多食)自覚をおながすことも同時に必要です。

..【生活提言】

1年前からだいぶ体調が悪く、辛い状態が続いていますね。

肩やいろいろな関節の痛みと、やる気のなさ強いだるさなどは、身体の中の

ひとつの出来事として根本原因は同じです。

もともと胃腸の弱さがあり、便通などの状態がよくないですね。

この上に、ストレスで胃をいためたり、冷える柿などの食べ物で

より胃腸をいためたために、冷えが身体の中に入り込んだため、関節の痛みや

やる気のなさ、だるさとなっています。

柿などの便通のつく食べ物は身体を強く冷やしている場合が多くあります。

今回、便通がついているのに、どんどん関節の痛みや辛い症状が強くなってしまっ

たのはこのためです。食べ物に注意して体をあたためるように心がけましょう。

また胃腸の弱さがありますね。お灸の指示をいたしましたので、できる範囲で結

構ですから、毎日かかさず施灸をするように心がけてください。

がんばっていきましょう。

飲食不節の要因となっている柿の多食を注意し(ただし、季節が終わり、すでに

便秘がはじまっていますので、今後の問題として)、

い、脾気をたてることを治療目標とします。

御自身の養生としては、ストレスと上手につきあうこと。冷える食べ物を

控えることを気をつけて

たいと思います。

..治療経過

左後谿 左神門(鍼、ミニ灸)

左中府、ダンチュウ(ミニ灸)

足三里(灸頭鍼)

身柱(7)、大椎温灸、

左脾兪(鍼、温灸、10)

左右三焦兪(鍼、温灸、ミニ灸)。

4診まで(週に1度程度の間隔で)

柿をやめたらまた悪くなっていた便通が非常によくなった。

左肩は暖かい日にはあまり痛みがきにならなくなった。

右肩は忘れる日もでてきた。

7診で、肩の痛みはほぼ消失。