カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 流産

心拍見えずに4回の流産。親族も流産が多い(38歳出産)

概要

流産を繰り返している症例。4回の妊娠ともすべて心拍が見える前の流産。母親や姉妹も流産歴が多く、母親と姉妹も30代での妊娠では挙児まで致っていません。

(この症例の弁証論治→流産せずに産みたい弁証論治)【case:0157】

ご相談内容

流産が多く、妊娠の継続が出来ません。現在38歳です。流産せずに産みたいと強く願っています。

今までに自然妊娠を2回していますが、いずれも心拍が見えない段階で流産してしまいました。2回目の流産以降生理の量も減り体調も悪かったので、36歳からは体外受精にステップアップし、2回胚移植をおこないましたが、どちらも化学流産になってしまいました。

私の母や姉妹も流産が多いですが、みな出産しています。ただ、30代での妊娠では母も姉妹達も妊娠が継続できていません。妊娠を継続させ、出産することは無理なのでしょうか。なんとか流産せずに出産したいです。

東洋医学的診立て

流産が重なり辛いですね。今までにタイミングなどでも自然妊娠なさり、体外受精でも採卵ー移植とスムーズに進み、着床までしているのですね。ポリープなどもとっていただき、大きな問題はないとのことなのですから、体調を整えてなんとか出産まで頑張りましょう。

中学時代にバセドー病になっているとのこと、東洋医学で言う土台の力(腎気)がもともと少し不安定なのかも知れません。ただ問診上では大きな違和感を感じる項目はありません。

しかしながら、お身体を拝見していると変化が大きいものが多いです。特に明瞭な淡白舌、右にワイ舌、やや膩苔、歯痕のきつさ、舌裏の怒張は目を引きます。歯痕とは舌についた歯形です。この歯痕に加え、列缺という肺経のツボにこそげもあり、全身の生命力不足がうかがえます(気虚)。

そして上背部には風門の発汗陥凹、大椎の冷えなど、風邪の内陥(風邪の冷え込みが身体の中に入り込んでいる状態)の可能性がうかがわれ、明瞭な淡白舌とあわせて考えると身体を温め養う力である陽気の建ち昇りの悪さがうかがえます。

また他の切診で右外関、後谿、内関、右肝の相火、右霊道のこそげの大きさなど、右のワイ舌と合わせて考えると、右への気の偏在がみてとれます。これは少し問題です。問診ではさほど問題は感じませんが、お身体を拝見していると、問題を多く感じます。

妊娠や流産しないということが治療の目標ですが、身体作りとしてはもう少し全体を眺めながら、しっかりと素体の調整をするべきではないかと思います。

妊娠出産というのは全身の中では余力の問題です。つまり全身に余裕がなければ、妊娠出産という状況まで手が回らないのです。だから35歳の流産後から、子宮への養いがより減ってしまったのではないかと思われます。しっかりとお身体の手入れをして、是非妊娠そして出産にこぎつけましょう。また一度不育症の検査を受けてみるのもよいかもしれません。

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚を中心とした気虚 風邪の内陥 子宮への温養不足
論治:益気補腎 疎風散寒 温養子宮
治療方針:風邪の内陥をとりさる。腎気をあげ、子宮を温養していく。