弁証論治:

0157:流産せずに産みたい弁証論治

症例集→心拍見えずに4回の流産。親族も流産が多い(38歳出産)【case:0157】

・問診

4回の流産、12週までを乗り切り出産にこぎつけたい、38才出産

身長158センチ、体重56キロ

自然妊娠2回、心拍見えずに流産、体外受精で2回胚移植しすべて
妊娠するものの化学流産になってしまっている。流産せずに産みたい。
母や姉妹も、20才代で出産するも前後に流産の回数は多く、また
30代では妊娠が継続できていない。

風邪は余り引かない、全体にいつも調子が悪い

食欲は普通、規則的、空腹感はあり、美味しい、腹脹胸焼けはない。

間食はスナック、チョコ、クッキーなどをよくとる。

飲水は水を1リットル程度

口の渇き、喉の渇きはない

飲酒、タバコはない。

大便は1日1回、量は多い、形状は不安定だったが納豆と水を意識して とるようにしたら少し改善した。

小便は1日10回、残尿感、尿切れなど問題ない、夜間尿は時々

睡眠、寝つきは普通、眠りは浅い、寝起きは普通、疲れは時々残る

初経は11才、28-30日周期4日間、小さい塊が混じる

生理周期に伴う体調不良はない.生理前に胸の張り、腰の痛み、下腹の痛みが

たまにある、生理痛は初日に少しある。

一般不妊検査では問題はない、

タイミング、体外受精で妊娠はするものの継続できない。

・時系列の問診

中学時代ーバセドー病になり(姉妹も同じ)、手術はしないが成人まで服薬

18才ー夜勤のある仕事につく(3年間)

20才体重50キロ

30才で結婚、体重を49キロまでダウンさせる(53キロから49キロ)

33才ー子宮ポリープ手術

33-35才タイミングで妊娠2回 心拍は見えず自然に流産

35才の流産後生理の量が減り期間も5日ぐらいから4日へ

36才から体外受精を行う
 採卵2回、移植2回 すべて化学流産

・体表観察

・・脉診
右の関尺の輪郭が甘い

・・舌診
右に歪舌 
淡白 
やや膩苔、
歯痕きつい 
舌裏怒脹あり

・・腹診
肝の相火 右がきつい

・・経穴診
右の内関陥凹
列缺こそげ
右の外関陥凹大きい
右の後谿陥凹
神門、腫れが大きい
霊道 右>左 こそげ
大都割れ
公孫きついこそげ
足三里 右>左 こそげ
左三陰交 冷え
左湧泉冷え
復溜冷え
左太衝 はれ
陽陵泉 こそげ
下腿胆経 こそげ

・・背候診
大椎冷え
風門 発汗陥凹
右厥陰兪 こそげ
左脾兪陥凹
左胃兪陥凹大きい(トップ)
腎兪やや陥凹
次髎ややつまり

・五臓の弁別

・・肝

流産4回
生理に小さな塊がまじる
右に歪舌
舌裏怒脹あり
右の肝の相火あり
左太衝 はれ
陽陵泉 こそげ
下腿胆経 こそげ

・・心

中学時代からバセドー病
右の後谿陥凹
神門、腫れが大きい
霊道 右>左 こそげ
右厥陰兪 こそげ

・・脾

間食はよくある
便の形が納豆と水を取ることで改善
右の関上輪郭があまい
舌やや膩苔
大都割れ
公孫きついこそげ
足三里 右>左 こそげ
左三陰交 冷え
左脾兪陥凹
左胃兪陥凹大きい(トップ)

・・肺

列缺こそげ
大椎冷え
風門 発汗陥凹
皮膚:皮膚の色味が暗い 

・・腎

中学時代からバセドー病
流産4回
35才の流産後から生理の量、期間が減る
夜間尿は時々
眠りが浅い、疲れが時々残る
右の尺位輪郭があまい
舌淡白
右の外関陥凹大きい
左湧泉冷え
復溜冷え
腎兪やや陥凹
次髎ややつまり

・・気虚

舌の歯痕がきつい
列缺こそげ

・病因病理

主訴は流産せずに産みたいということである。

タイミングなどでの自然妊娠が2回、そして体外受精での妊娠も2回あるものの 心拍が見えずに流産が2回、化学流産が2回と妊娠が継続できていない。

中学時代にはバセドー病になり、服薬で落ち着いている。

もともと少し腎気に不安定さがあったのではないかと思われる。

問診上はとりたてて大きな違和感のある項目はない。

しかしながら、体表観察をしてみると、変化が大きいものが多い。

とくに、舌の明瞭な淡白舌、右に歪舌 やや膩苔、歯痕のきつさ、舌裏の怒脹は 目を引く。歯痕がきつく列缺のこそげもあり、全身の気虚が伺える中、上背部には、風門の発汗陥凹、大椎の冷えなど、風邪の内陥の可能性がうかがわれ、舌の明瞭な淡白舌とあわせ陽気の建ち昇りの悪さが伺える。

また、切診で右の外関、後谿、内関、右の肝の相火、右の霊道のこそげの大きさなど、右の歪舌とあわせ、右への気の偏在がみてとれる。

全体としての気虚気味のなか、上焦での風邪の内陥による気の偏在が問診上にはあまりでていないのに、切診状では明瞭なのである。

その上、やや膩苔気味であり、内湿をためがちな脾気の状態が伺える。

これら上焦、中焦の問題を支える下焦の腎気は、もともとの不安定さ、夜勤のある仕事などでより不安定ぎみであったと思われ、切診でも外関の陥凹、湧泉復溜の冷え、腎兪の陥凹など明瞭であり、上焦中焦への支えやバックアップが不足していたのではないかと思われる。

35才の流産後から生理の量が減り期間も短くなっている。 流産により腎気がおち子宮への養いがより減ってしまった可能性が伺える。

腎気の弱さがあるため、子宮を温煦し下支えする力が弱い。陽気の建ち昇りがわるいことから、衝任脈が健やかに建ち上れず子宮への温養が不足することが伺える。この腎気の弱さと衝任脈の温養不足は、風邪の内陥による腎気への負担、内湿をためがちな脾気が加速させている可能性もあろう。

過去の妊娠が心拍確認後の流産2回、化学流産が2回と、子宮を中心とする下焦の伸びやかな充実が望まれる。

・弁証論治

弁証: 腎虚を中心とした気虚 風邪の内陥 子宮への温養不足

論治: 益気補腎 疎風散寒 温養子宮

・治療経過

初診後2ヶ月、鍼灸をはじめて体重が自然と1.2キロダウンし、なんだかすっきりした。
       妊娠、治療頻度を週に2,3回にあげる。

妊娠6週 心拍見えるものの、黄体ホルモンが下がってきた 

妊娠8週 黄体ホルモンの数字があがり、充分と言われる様にやっとなってきた。

妊娠12週 出血あり、安静

妊娠17週 手足の冷えがきつくなる。

妊娠19週 朝の手のパツパツが30分ぐらい続く

妊娠30週 足がつる

妊娠34週 とても張りやすく張り止めの薬はでるものの、頚管の長さは充分といわれ 経過観察。

無事に39週で出産、3500グラムオーバーのベビちゃん。

おめでとうございます(^^)