カテゴリー : 不妊・婦人科 コラム

不妊治療を終えるとき

不妊治療からの卒業、新たなる人生の扉を開けるとき

不妊治療は終わりの見えない治療だとよばれることがあります。人生の中で『子供が欲しい』というシンプルで、当たり前で、切なる願いに対する治療です。この願いに区切りをつけるということの大変さは、想像にあまりあります。

現代の治療は、『子供が欲しい』という願いに対して、卵子提供や代理出産まで含めると本当に終わりがありません。可能性を考えると、どこで終わりにすればいいのかものすごく難しい問題となりますね。

それでも、終わりを決めなければならない時がくることはあります。とても残念だけどあるのです。そして、不妊治療の終わりは終了ではなく、新たな人生への転換なのではないかと思うのです。

新たな人生のスタート。

このスタートを上手に舵取りして始められる様に、新しい人生の窓を気持ちよく開けられるようにと私は切に願っております。

このファイルは20年以上不妊治療をなさる方々と一緒に歩み続けた私が、不妊治療をやめるときにあたって思うことをまとめてみました。

悩み、迷う方のご参考になればと思います。

ファイルの構成は5つ。
ご意見やご感想、またご自身の思いなどありましたらメール頂ければ嬉しいです。

1)不妊治療をやめたくなったときに。『やるべきことはやりましたか?』
 1-1)治療法の選択について
 1-2)病院選びについて
 1-3)体外受精は答えにならないケース
 1-4)体外受精の進め方、やめどき
2)人生の中での選択
3)自分で決める人生の選択。不妊治療からの卒業の仕方
4)東洋医学の臨床家として、生老病死する人間の存在
5)すべてを終え、『不妊治療をやめるとき』

1)不妊治療をやめたくなったときに。『やるべきことはやりましたか?』

『不妊治療をやめようと思います』

こんなお話しがときに出ます。

このときに、まず少し冷静になって考えなければならないのは、

『やるべきこと、やれることはしたのか?』ということです。

どうしても、ご自身の視点、視線でみることになります。私がお話しを伺っていて、惜しいなと思うのは、チャンスがまだまだありそうなのに、それを見極められない段階で、混乱し『治療をやめる』選択をするケースです。この混乱や精神的な不安定さから『やめる』ことを選択するのは、惜しいと思ってしまいます。

少し整理をしてみますね。
 不妊治療は、基本的にステップアップで選択を重ねていきます。

しかしながら、人によって、やらなければならないことは違うことがあります。まずこの段階での抜け落ち、やり残しはチェックしたいですね。また女性側の問題は追及されがちですが、男性側の問題が強い場合もあります。身体作りというと、特に女性側の問題と把えられがちですが、男性側の体調がよくなることで特に自然妊娠は増えることがありますし体外受精においても良い結果とある場合もあります。男性側の問題も考えてみるのはよいと思います。

1-1)病院選びについて

 不妊治療のクリニックは、全力でその施設の一番治療成績が高い方法で治療を進めているはずです。特に体外受精の場合は施設選びはとても大切です。そしてひとつの病院で、採卵3回、移植5回をしてみて、結果が出なければ、やめる前に一度は病院を変えてみましょう。病院を変えるときのポイントは『いままでの病院と違う考え方の病院を選ぶ』ことです。薬を沢山使うクリニックにいっていたら、使わないクリニックへ。血液検査重視ならばエコー重視へ。移植についても今までと違う方法をを試してもらってもよいのかもしれません。またピルの種類、薬の種類でも変わることがあります。とにかく、考え方の違うところにしてみるというのは、転院のポイントかも知れません。

1-2)自分自身の身体について

 私はお身体を丸ごと一つの存在としてとらえ東洋医学の立場から拝見しております。そのときに、生命力そのものや、妊娠に対する生命力が不足しているケースを多々見ます。この問題があるときに、いくら高度生殖医療を重ねても結果がでません。西洋医学的な治療を急ぐだけで解決しないときに、案外、バックアップとなる生命力を高めるという方法のアシストが効くことがあります。また、生活そのものがあまりにもきつかったり、忙しかったりすると難しいこともあります。大きく発想の転換が必要な場合もありますが、この点も考えてみるべきポイントだと思います。シンプルな規則正しい生活と、豊かな食生活は当たり前ですけど大切です。