陰陽とは相対的な矛盾をはらんだ概念であるという事、そのために陰陽を語るときには、場を設定したうえでお話ししなければならないという事をこれまでのファイルで考えてきました。
さて、ここではそれらのことを基礎として、古人は設定された場の中、特に生命場、一連なりの生命である人体において、陰陽がどのように関係しあっていると考えたのかということについて述べていきたいと思います。
誕生から死まで
まず、生命場の時間的な変化について考えてみましょう。つまり精子と卵子が受精結合し、誕生し、成長し、成熟し、衰え、死んでいく、そのような場の変化に応じて、個々の年齢の中ではそれぞれの段階で陰陽が交流しているわけであり、生命としてのくくりをもっていると考えられます。誕生というはじまりから、死という終わりの時点まで、それぞれの段階で陰陽がそれぞれの密度をもって交流しているわけです。
よく、誕生するという事が陽であり、死ぬことが陰であるという考えをなさる方がいらっしゃいますが、これが誤解であることは、この説明でおわかりいただけるのではないでしょうか。時間軸にそった生命場のありかたは、陽から陰への変化ではなく、それぞれの段階における場の陰陽の交流密度の変化、大きさの変化であるとも言い換えることができると思います。
器の大小、敏感さ、密度
この、それぞれの段階における「場」の状態を私は、器の大小、敏感さ、密度といった概念を用いて考えています。
器が大きいということは、崩れにくく、安定度が高い、つまり健康を維持する能力が高いと考えられます。
器が敏感であるということは、外界に対する反応が早く、外界の状態の変化に気が付く能力が高いということです。
密度が高いという事は、生命力が充実し防衛能力が高く、内面的な求心力が強い状態であると考えられます。
この三者の組合せを考えていくことによって、今目の前にいる人の、場の状態が理解されていくと考えられます。
赤ちゃんでは
たとえば、生まれたばかりの状態の人は、器が小さく、敏感で、密度に関しては先天的な差が大きいと考えられます。ですから生まれたばかりの赤ちゃんは外界の変化を受けやすく、器の小ささ故にこの外界の変化を受け取りきることがそのままではできませんし、密度が低い赤ちゃんの場合は陰陽が別れ死に至りやすい状態にあるといえます。健康な赤ちゃんは密度が高く敏感であるので、成長の速度が速いということができます。
衰えの激しい人では
また、衰えの激しい人もやはり器が小さくなっており、その上鈍感です。密度も粗くなっています。ですから、風邪をひいても気が付かない人が多く、それでも見る人が見ると風邪を引いている人が非常に多く、外界に対する反応が基本的に鈍くなっています。鈍いために、身体を外界の状態によって変化させることが出来ない上に器が小さいのですから、ちょっとした風邪や骨折などでもう、自身を支えることができなくなり、陰陽が別れていくという死の状態を迎えるわけです。
成熟期にある人は
成熟期にある人は、これらに対して、その器は人生の中で最も充実しており、その養生の度合いに応じてですが、もっとも敏感で密度の高い肉体を持っていると考えられます。
この、それぞれの段階の場において、バランスを崩すことがあり、そのために「病む」ということがおこるわけです。