弁証論治:

0011:4回にわたるIVF-ETの失敗の後、次の体外受精に向けての身体作り

..病因病理

40歳という自然の流れの中にあっても腎気が落ち気味になる時期に、ホルモン剤を多量に使った不妊治療により、かなり腎気を落とし、身体のだるさや尿切れの悪い感じ、疲れが残ることが時々あるなど腎気の不足を示す状態が明瞭になり、同時に肝鬱も高進し首肩の痛みとなっています。

この腎気の落ち方は、非常にきつく、全身の気虚さえも招いているようで、夜布団に入っても身の置き所のない感じで寝付けないという状態になってしまっています。気が裏に帰ろうとするとき、帰るべき腎陰も肝陰も不足しているため、納まり所がなくなっていることをしめしています。

もともと、冬になるとしもやけができたり、痔の悪化があるということより、腎の陽気不足を思わせる素体が、不妊治療の負荷のため、かなり腎虚が明瞭になり、本来腎気が必要とされる妊娠が遠くなり不妊状態がより深くなるという悪循環と、腎気の不足が招いた肝気の鬱滞による首肩の痛みという状態を引き起こしています。

不妊治療を成功させ、妊娠後も順調な胎児の成長をさせるためにまず腎気を充実させることが非常に大切です。腎気を充実させた上で、不妊治療の周期によっては、不必要な肝気の鬱滞を少し払うことで、妊娠を成立させ、ご出産に導きたいと考えます。

..弁証論治

気虚まで進んだ腎虚肝鬱
益気補腎 疏肝理気
腎気をたてることを中心とする
必要に応じて肝鬱を払う

..生活提言

妊娠には、腎気の充実がとても大切です。しかしながら、ホルモン剤の投与の多い高度生殖医療を含む不妊治療は腎気を落としてしまいがちであり、妊娠がなかなか成立しない場合、悪循環となってしまうことがあります。

一度は、IVF-ET(体外受精、胚移植)で妊娠が成立していますので、あせらず身体の土台となる腎気を養い、赤ちゃんの卵をしっかりと受け止められる身体をつくり、不妊治療に望んでください。

また、妊娠することがゴールではなく、健やかな赤ちゃんを出産することが目標です。そのためにもお母さんの身体作りはとても大切なのです。目先の妊娠のためだけではなく、妊婦となり、自身の子宮でしっかりと赤ちゃんをはぐくめるよう臍下丹田の力をつけるような身体の土台の力作りをしていきましょう。

具体的には、
1)睡眠をしっかりととる(お肌の綺麗になるといわれる午後10時から2時までの睡眠は特に大切です)
2)からだの力を落とさないため、間食は控えましょう
3)あまりストレスをためず、やれることをしたらあとは考えすぎずにのんびりすごしましょう。
4)毎日散歩をしましょう
5)ご自宅で毎日、お灸をしましょう(場所は、治療のときに指示します)

..治療経過

鍼灸治療をしながら、5回目のIVF-ETに挑戦し、妊娠。
妊娠中も週に1度の治療間隔で継続し、無事に自然分娩にて出産。