弁証論治:

0096:44歳、きつい子宮内膜症、逆子の弁証論治

症例集→生理を何度も止めた子宮内膜症後の自然妊娠(44歳出産)【case:0096】

・問診
44歳 女性 身長170センチ体重55キロ

主訴・・・①首の後ろの凝り、頭痛 ②妊娠したい

【主訴について】

 症状は徐々におこり、朝昼夕と常に辛い。クーラー、秋、冬、梅雨時に悪化
 以前は自分でマッサージなどでほぐれたが、今は改善しない。
 首の凝りは18歳からムチウチをきっかけに発症。常時おこる
 頭痛は24歳ぐらいから、眼精疲労からと自分では思う、
    月に1,2回、生理前やめがねを長時間かけたあとにおこる。
    首の後ろから始まり、脈打つように出現。だんだん出現する頻度があがっている
 主訴は枕があっていないかと自分では思う

・・ふだんの状態について

 春、秋、暖房で調子がよい
 夏、クーラー、冬、梅雨時、季節の変わり目、肉体疲労時、気を遣ったあと、
 睡眠不足、   旅行のあとは調子が悪い
 副鼻腔炎になりやすく、咳が長く残りやすい。風邪をひくと、頭の前後左右とも頭痛がする。肩こり、
 飲み過ぎ、便秘、下痢で調子が悪い。目の疲れから頭痛がおこりやすい。
 33歳頃から食欲が落ちている。空腹感はいつもある。胸焼け腹脹は時々。
 間食は毎日。33歳の出産後からあまり飲酒をしたくなくなった。

 便通は2日に1回、バナナ、コロコロ、付着することはない。
 急に水のような下痢がおこり、頭痛が治まることがある。
 小便は一日4,5回、夜間尿、尿切れの悪さなどない。
 寝付きはよい、眠りは浅い、寝起きは普通、疲れが残ることはよくある。

 初経は14歳、28日周期5日間
 生理前イライラ、生理初期にに腰下腹部の鈍痛
 頭痛は前後左右、小指大の塊、血液、出血量は異常に多い
 出産は2回 、出産後は生理はさらさらだったが、ここ2,3年は塊が増えた。
 産後母乳はよく出た
 生理二日前からイライラ、首の頭痛→生理で治まる
 生理から腰の重さが出る。

・時系列の問診

昔から手足が冷える
もともと生理痛がきつい

18歳 ムチウチになる。首の凝りが出現
23歳 内膜症で 生理を止めて治療
24歳 頭痛がおこりはじめる 
   眼精疲労からと自分では思う、
   月に1,2回、生理前やめがねを長時間かけたあとにおこる。

31歳 子宮内膜症のために生理をとめる
  3回リューブリンを使い生理をとめ、生理再開後2回で妊娠、出産

33歳 出産 1年半くらい生理がなかった
 出産後チョコレート膿腫がみあたらなくなる。
 出産後飲酒をしたくなくなった
 食欲が落ちた
 副鼻腔炎や咳がはじまる。

36歳 自然妊娠、出産 
 出産1年ぐらい生理がなかった。
38歳 出産後の生理はさらさらだったが塊が増え始める

42歳 妊娠希望するも子宮内膜症も悪化。
 リューブリンで6回生理をとめて生理再開、妊娠のために治療
 卵管通気はOK
 生理再開後、生理の度にだんだんと膀胱横の腫瘤(妊娠出産前からある)が大きくなり、生理の二日ぐらい前から張ってくる感じで生理中もずっと痛い。
 生理のたびに子宮内膜症が悪化、膀胱横に腫瘤(内膜症のため)。

・体表観察

記載漏れ

・五臓の弁別

・・肝
以前は自分のマッサージでほぐれたが今は改善しない
生理前、目が疲れたときにに頭痛が発症
生理前イライラ
首の後ろから始まり、脈打つように出現。だんだん出現する頻度があがっている
目の疲れから頭痛がおこりやすい。
生理の出血量が異常に多く、小指大の塊
昔から手足が冷え、もともと生理痛がきつい

・・心

なし

・・脾
梅雨時に悪化(首、肩)
33歳第一子出産後から食欲低下
急に水のような下痢がおこり頭痛が治まることがある

・・肺
33歳第一子出産後から、副鼻腔炎になりやす、咳が長く残りやすい。
風邪をひくと、頭の前後左右とも頭痛

・・腎
クーラー冬に悪化 (首肩)
以前は自分のマッサージでほぐれたが今は改善しない
生理前、目が疲れたときにに頭痛が発症
首の後ろから始まり、脈打つように出現。だんだん出現する頻度があがっている
目の疲れから頭痛がおこりやすい。
生理初期にに腰下腹部の鈍痛
出産後の生理はさらさらだったが、ここ23,年は塊が増えた
昔から手足が冷え、もともと生理痛がきつい
生理の度に膀胱横の子宮内膜症による腫瘤が大きくなる

・・経絡経筋病
首の凝りはムチウチをきっかけに発症

・・瘀血
生理の出血に小指大の塊、量が異常に多い
生理を止めて対処する婦人科疾患の既往が複数回ある(子宮内膜症)
第一子出産後チョコレート膿腫がみあたらなくなる
第二子出産後だんだん塊が増える
第二子出産後生理の度に、膀胱横の腫瘤が大きくなる

・病因病理

もともと手足末端の冷えがつよく、生理痛もきついというように、非常に強い肝鬱があったのではないかと思われる。また18歳の時のムチウチがきっかけで首の凝りが起こり始めた。強い肝鬱と気滞血瘀の状態が素体であると考えられる。

23歳の頃には、子宮内膜症の治療で生理を止める必要が生じる。
通常であれば生理がおこることによって、一定の瘀血が解消されるはずである。

しかしながら強い肝鬱があったために月経周期に伴う気血の大きな傾きを腎気が支えきることができず、肝鬱がより強くなり瘀血を生じやすくなったため、月経周期をとめ、気血の大きな傾きをとりさり腎気への負担をとることで、強い肝鬱が生じにくくなり、子宮内膜症の進行が抑えられたのではないかと思われる。

24歳の頃には生理前やめがねを長時間かけたときに頭痛が生じるようになった。 強い肝鬱と気滞血?の状態が継続しているため少しずつ腎気に負担がかかり、 生理の前やめがねを長時間かけたときなどの、腎気を踏み台にして肝気を高ぶらせた状態になると、腎気の支えが不足し肝鬱がより強くなり頭痛が生じたものと思われる。

31歳の時に、子宮内膜症のために再度生理をとめ、生理周期に伴う身体への負担を取り去り腎気を救い瘀血の進行をくいとめたのちに妊娠、33歳で第一子出産。これにより瘀血が少し改善されチョコレート膿腫がみあたらないほどとなり第二子の妊娠出産へとつながった。

しかしながら、第一子出産後から、腎気が一段とおち全身の気虚が進んだため、食欲が落ち、副鼻腔炎や咳が生じやすい状態になった。

第二子は無事に出産したものの、落とした生命力を回復するような状況ではなかったため、上焦における首肩の凝りは継続、時間を経るにつけ悪化。また特に下焦における瘀血の状態は、排卵周期にともなう腎気、肝気の傾きによってより進行し、42歳の時には、妊娠を希望するも生理前には膀胱横の腫瘤も大きくなり、生理を重ねる度にだんだん大きくなってしまっている。

・弁証論治

弁証:腎虚を中心とした気虚 瘀血

論治:補腎 疏肝理気 

・治療指針
腎気をたて全身の気虚を救う。
肝鬱は基本的にいじらない

・治療経過

初診後半年ほどで自然妊娠
2012、3月 30w-逆子
1)左胃兪、左三焦兪 腎兪 次?
2)右後谿 湧泉 ミニ灸 
  三陰交灸頭鍼ミニ灸 至陰ミニ灸2回
 翌週の検診で逆子なおる
2012 5月 無事に3300グラム弱の男児を出産
おめでとうございます(^^)!!